ベトナム出身の技能実習生を雇用したいと考えている経営者は多いでしょう。
3年間活躍してくれたベトナム人技能実習生を引き続き雇用したいというケースもあるでしょう。
そのような希望に応える形で、令和元年7月よりベトナム人の特定技能に関するルールが整備されました。一方で、ベトナム人の特定技能に該当するかわからないという疑問の声も多いのが実情です。そこでこの記事では、ベトナム人を特定技能で雇用する際の費用や手続き、注意点などを解説します。
日本国内におけるベトナム特定技能生の現状
現状として、日本国内で特定技能を希望するベトナム人は年々増加しています。令和4年6月末の時点では、在留ベトナム人の数は約47万人で、日本にいる外国人全体の16.1%を占めています。
日本で働きたいベトナム人が多いのには、ベトナムが親日国であることが理由の一つです。バイク社会であるベトナムでは、使用されているバイクのほとんどが日本製です。また、ODAなどの日本からベトナムへの国際援助も多く、日本に対して友好的な印象があります。
新卒月収に関しても、日本は18〜25万円なのに対し、ベトナムは3万円前後です。日本では企業が従業員を健康保険に加入させることは一般的ですが、ベトナムでは健康保険への加入は容易ではありません。労働環境や生活環境がベトナムより優れているため、魅力を感じているともいえるでしょう。
特定技能でベトナム人を雇用するメリット
ベトナム人を特定技能で雇用するメリットは、大きくわけて3つあります。
- 他在留資格に比べて就労しやすい
- 宗教による影響が少ない
- 学校教育に日本語が取り入れられている
それぞれ詳しく解説していきましょう。
他在留資格に比べて就労しやすい
特定技能は他の在留資格と比べて就労しやすいことがメリットです。
ベトナム人は「母国のためにお金を稼ぎたい」「豊かな生活をしたい」という気持ちが強く、勤勉な性格が日本企業と相性が良いといわれています。
ベトナム人の技能実習生を受け入れて良好な関係性を築いたものの、期限の関係で帰国せざるを得なかったというケースもありました。その点、特定技能は即戦力としての雇用ができるため、雇用側と就労側の双方にメリットがあります。また、人材不足を解消する可能性を秘めています。
宗教による影響が少ない
ベトナム人の多くは、大乗仏教を信仰しているのが特徴です。信仰における習慣や文化が日本と似ていると言われています。そのため、「決められた時間にお祈りが必要」「宗教上の制約により、特定の行動ができない」など、業務に支障が出ることはほとんどありません。
学校教育に日本語が取り入れられている
ベトナムでは、小学校教育から日本語教育が取り入れられています。2016年にベトナム政府は、第二言語として英語の他に日本語を採用すると決定しました。
日本語教育だけでなく、マナーの習得や道徳心などの「日本式教育」も積極的に行っています。
ベトナム人の雇用にかかる費用
ここでは、特定技能のベトナム人を雇用する際に必要な費用について解説します。
・登録支援機関への委託費用
登録支援機関への委託費用は、毎月2〜3万円程度になります。詳しい金額については、登録支援機関に問い合わせるのが確実です。
特定技能の資格を持つベトナム人を雇用するには、登録支援機関に委託費用を支払わなければなりません。登録支援機関とは、受け入れ機関から委託を受け、特定技能の資格を持つ外国人が仕事や日常生活、社会生活を円滑に行えるように支援する機関です。
参考記事:登録支援機関に支払う費用|特定技能外国人を雇うなら押さえておこう!
・送り出し機関への手数料
送り出し機関への手数料は、20~60万円が相場です。
特定技能制度でベトナム人を雇用するには、送り出し機関を経由しなければなりません。
そのため、送り出し機関への紹介手数料や、日本語・ビジネスマナー講習に必要な教育費がかかります。
・在留資格認定や入管申請の書類作成費用
在留資格認定や変更手続きなどの入管申請には、10~20万円程度の費用がかかります。必要書類が多いため、外部の行政書士などに委託するのがほとんどです。また、特定技能への在留資格変更許可申請の申請代行手数料なども含まれます。
詳しい金額については、担当の行政書士などに確認するのが確実です。
・出入国在留管理局への収入印紙代
出入国在留管理局への収入印紙代は4,000円です。
在留資格変更許可申請と在留期間行進許可申請ともに金額は変わりません。収入印紙は、郵便局またはコンビニで購入できます。
・JACへの受入負担金、加入費(建設分野のみ)
建設業で特定技能のベトナム人を雇用する場合は、JAC(建設技能人材機構)への加入義務があります。
特定技能外国人一人につき、所定の受け入れ負担金がかかります。
金額については以下の通りです。
・雇用するベトナム人に支払う費用
雇用するベトナム人に支払う費用には、大きくわけて3つあります。
一つ目はベトナムから日本への渡航費で、約3~6万円です。
二つ目は特定技能雇用契約で取り決めした給与です。
受け入れ先企業や業種によっても賃金相場は異なりますが、約20~30万円になります。
三つ目は健康診断の費用です。受け入れ先企業が負担することがほとんどで、約1~2万円がかかります。
日本に在留するベトナム人を雇用する場合の手続き
ここからは、日本に在留するベトナム人を雇用する際の手続きについて解説します。
1:「特定技能」在留資格変更許可申請
特定技能の資格を持つベトナム人を採用する際の手順は、以下の通りです。
- ベトナム人と雇用契約の締結をする
- 推薦者表(特定技能外国人表)の発行申請をする
- 在留資格変更許可申請を行う
- 就労が開始される
それでは、順番に詳しく見ていきましょう。
2:雇用契約の締結
特定技能のベトナム人を雇用する際は、以下の条件にクリアしていなければなりません。
- 国内に在留していること
- 技能実習2号または3号を良好に終了していること、または特定技能評価試験に合格していること
上記をクリアしているベトナム人と面接を行い、双方に問題がなければ雇用契約を締結します。
3:推薦者表(特定技能外国人表)の発行申請
受け入れ企業は、雇用契約の締結後に駐日ベトナム大使館に対し、推薦者表(特定技能外国人表)の発行申請を行います。
申請手続きは受け入れ企業だけでなく、雇用されるベトナム人や人材紹介会社、登録支援機関の担当者も手続きが可能です。
推薦者表の提出が必要なケースについては、以下を参考にしてください。
【必要書類】在留資格「技能実習」の場合:
- 旅券写し
- 住民票写し(3か月以内に発行されたもの)
- 技能実習2号又は3号修了証明書の写し又は修了を証明する書類(随時3級の試験の合格証書等)
- 特定技能外国人表交付申請書
- 特定技能外国人表
- 返信用封筒
【郵送先】
在日ベトナム大使館労働管理部
〒151-0062
東京都渋谷区元代々木町10-4 WACT代々木上原ビル2F
Tel: 03-3466-4324
4:在留資格変更許可申請
雇用されるベトナム人は、地方出入国在留管理庁で「在留資格変更許可申請」が必要です。
申請する際には、所定の必要書類と併せて「推薦者表」も提出します。
また、在留資格変更許可申請は、特定技能の在留資格で転職する場合にも手続きが必要です。
5:就労開始
地方出入国在留管理庁から在留資格変更許可が下りれば、無事に就業開始になります。
在留資格変更許可申請は、審査によりますが、2ヶ月程度が必要です。
ベトナムから日本に受け入れる場合の手続き
ここからは、ベトナムから日本に受け入れる場合の手続きについて解説します。
1:受入機関と送出機関との労働者提供契約の締結
はじめに、受け入れ機関と送り出し機関との間で、労働者提供契約を結びます。
次に、送り出し機関からDOLAB(労働・傷病兵・社会問題省の海外労働管理局)に対し、労働者提供契約の申請を行います。DOLABの承認が出るまでは、雇用契約は結べません。
DOLABの詳細については、後半の注意点で詳しく解説します。
2:雇用契約の締結
労働者提供契約の承認後に、送り出し機関からベトナム人を紹介されます。
ここで紹介されるベトナム人は以下の通りです。
- 技能実習2号または3号を良好に修了した後に帰国した者
- 特定技能評価試験に合格した者
受け入れ企業はベトナム人と面接を行い、双方に問題がなければ雇用契約を締結します。
3:推薦者表(特定技能外国人表)の発行申請
雇用契約が締結した後は、送り出し機関がDOLABに対して推薦者表(特定技能外国人表)を申請します。
推薦者表は、ベトナム国籍の人が海外での就労についてベトナム側の手続きが完了したことを証明する書類です。
推薦者表は、在留資格認定証明書の交付申請で必要になるため、DOLABに送付してもらうように依頼しましょう。
4:在留資格認定証明書の交付申請
受け入れ機関は、地方出入国在留管理官署に対して、在留資格認定証明書の交付申請を行います。
送り出し機関から送付された推薦者表も併せて提出します。在留資格認定証明書が交付されたら、該当のベトナム人に送付しましょう。
5:ビザの申請
該当のベトナム人は、届いた在留資格認定証明書を在ベトナム日本国大使館に提示し、ビザ(査証)の申請を行います。
在留資格認定証明書には有効期限が決められているため、交付後は余裕をもって来日してもらうようにしましょう。
6:入国・就労開始
ビザが発行されたら入国、就労開始となります。
特定技能でベトナム人を雇用する注意点
ベトナム人を採用する場合、いくつかの注意点があります。
ベトナムの法律で定められている事項もあるため、重要なポイントを押さえておきましょう。
ベトナムから採用する場合、DOLAB認定の送り出し機関を通す必要がある
実際の流れは下記になります。
ベトナムから日本企業に受け入れを行う場合、DOLAB認定の送り出し機関を通す必要があります。
まずは受け入れ機関と送り出し機関との間で、労働者提供契約を結ばなければなりません。特定技能を持つベトナム人は、DOLAB認定の送り出し機関で求人を探します。よって、新たにベトナム人を受け入れたいと考えている企業は、送り出し機関を経由して人材を探すようにしましょう。
駐日ベトナム大使館またはDOLABの「推薦者表交付申請」が必要になる
日本では、ベトナム政府が承認した推薦者表(特定技能外国人表)に名前が載っている人だけを受け入れると定めています。
これはMOC(特定技能を有する外国人に係る制度の適正な運用のための基本的枠組みに関する協力覚書)と呼ばれている協定です。
新規でベトナム人を採用する場合はDOLAB、日本に在留資格を持つベトナム人の場合はベトナム大使館に対して推薦者表の交付申請が必要です。
労働時間の制限がある
ベトナム人に限らず、外国人雇用では、在留資格の種類によって労働時間に制限が定められている場合があるため注意が必要です。
上記のように、労働時間に制限があるため必ず事前の確認が必要です。
ただし、特定技能での外国人雇用では、労働時間制限は定められていません。特定技能の資格を取得すると、正社員として雇用できるようになります。
基本的にはフルタイム勤務が可能ですが、日本人と同様の規則厳守が必要です。フルタイムの場合の労働時間は、原則として1日8時間、週40時間以内です。
休憩時間は6時間以上の勤務の場合は最低45分、8時間以上では最低1時間与えなければなりません。休日は毎週最低1回は付与するなどの条件があります。
まとめ
ベトナム人は勤勉で真面目なうえ、手先が器用な人が多いといわれています。ほとんどのベトナム人が日本に対して友好的であり、日本の習慣や文化に馴染みやすいのが特徴です。
令和元年7月よりベトナム人の特定技能に関するルールが整備されたこともあり、ベトナム人を採用したいと考えている企業にとっては追い風になっています。
この記事を参考に、人材紹介や登録支援機関を活用し、活躍が期待できる人材を見つけていきましょう。