外国人は、日本で生活するにあたり、何らかの在留資格を取得しなければなりません。
そして、在留目的が当初のものと変わってしまった場合、新しい在留資格への変更申請を行う必要があります。
変更を予定している在留資格によって、使用する申請書様式が異なるため、企業・外国人本人それぞれが注意したいところです。
この記事では、企業向けに「在留資格変更許可申請書」の書き方・注意点などを解説します。
在留資格変更許可申請書とは
まずは、在留資格変更許可申請書によって、どのような手続きができるのかお伝えします。
数ある入管手続きの中でも、取り扱うことが多い書類なので、大まかな手続きのイメージをつかんでおきましょう。
在留資格変更許可申請について
在留資格変更許可申請書を提出する理由は、在留資格の変更許可申請を行うためです。
日本で暮らす外国人が、日本での活動内容に変化が生じたなどの理由から、現在の在留資格から新しい在留資格に変更するタイミングで申請書が必要になります。
もともと日本で暮らす外国人は、不法な手段で入国しているなどの場合を除き、すでに何らかの在留資格を得ているはずです。
在留資格は、各区分にもとづく範囲に限り国内での活動が認められているものなので、在留資格とは異なる活動をする場合は新たな在留資格を取得しなければなりません。
分かりやすい例としては、日本の大学・専門学校に「留学」の在留資格で留学している学生が、企業から内定をもらって「技術・人文知識・国際業務」など就労系の在留資格に変更するケースなどがあげられます。
申請を行い、無事許可が下りて新しい在留カードが発行されることで、晴れて在留資格が変更されるわけですね。
申請時の大まかな手順
先の例のように、留学の在留資格から就労系の在留資格に変更する場合は、当然ながら申請書の提出だけで受理されるわけではありません。
申請を行うにあたり、所定の手順を踏んでから申請書を提出しないと、許可が得られない可能性もあるので注意しましょう。
1. 外国人の専攻分野・キャリアと関連する業務かどうか確認
技術・人文知識・国際業務などの就労系ビザに変更する場合、外国人材がこれまで学んできたこと・経験してきた業務内容と関連する業務に就くことが求められます。
在留資格の要件を満たしていない職場・職種への転職は認められないので、留学生から働く立場になるケースや、他の企業へ転職するケースにおいて、事前に業務内容とのマッチングをチェックしておきたいところです。
例えば、経済学部を卒業している外国人材は、弁当の具材詰めのような、単純作業の仕事に従事できない可能性が高くなります。
就労ビザの申請が認められないケースについて、より詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
技人国人材の就労ビザが不許可になる理由|事例や対処法・企業の注意点も解説
2. 必要書類を集める
在留資格の変更許可申請にあたり、申請書と合わせて添付すべき必要書類は、在留資格によって異なります。
仮に、在留資格「法律・会計業務」への変更許可を申請する場合、用意すべき書類は以下の通りそれほど多くありません。
しかし、在留資格「技術・人文知識・国際業務」への変更許可を申請する場合、必要書類の種類は非常に多くなります。
申請書や写真のほか、所属機関(職場)の4カテゴリーに応じて、必要な書類が変わってきます。
よって、変更予定の在留資格の申請を行うにあたり、どんな書類を用意すべきなのか、あらかじめ把握しておくことが大切です。
技術・人文知識・国際業務の申請について、より詳しく知りたい方は、以下の記事もお読みください。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」とは|要件や申請の流れ・注意点も解説
3. 入管に申請書を提出
必要書類を集めたら、提出するための在留資格変更許可申請書を作成・提出します。
申請が不許可になると、不許可になってしまった理由を確認したり、再申請を検討したりすることになって手間がかかるので、不備のないように手続きを進めましょう。
無事許可が得られた場合は、新たな在留カードの交付を受けられます。
一概には言えないものの、準備から許可までの期間については、概ね1~3ヶ月を想定しておくとよいでしょう。
オンラインによる申請も視野に入れておこう
2022年3月から、外国人本人や親族などによるオンライン申請ができるようになりました。
これまでも、外国人の所属機関である企業や、弁護士・行政書士によるオンライン申請は認められていましたが、さらに対象者の範囲が広がったことになります。
必要書類を省略することはできませんが、24時間365日、外国人材の好きなタイミングで手続きができるのは嬉しいところです。
ただし、オンラインならではの注意点もありますから、以下の記事もご覧ください。
在留資格変更許可申請書の書き方
一口に在留資格変更許可申請書といっても、様々な種類の申請書があるため、一口に書き方をまとめることはできません。
そこで、特に申請が多いケースに絞って、申請書の書き方をご紹介します。
留学生が在留資格を変更するケース
留学生が学校を卒業後、日本に継続して滞在する場合、在留資格の変更が必要になります。
学んだ専門分野によって在留資格は変わりますが、概ね以下の2ケースが想定されます。
なお、技能実習から特定技能へ変更手続きを進める場合は、留学から特定技能へ移行するケースと大差ないため、この記事では割愛します。
留学から特定技能へ移行するケース
留学から特定技能へ移行する場合、申請者・所属機関ともに、書かなければならない書類が多くなります。
申請者側が作成する書類は3通、所属機関側が作成する書類は4通と多めなので、一つひとつポイントを押さえていくことが大切です。
・「申請人等作成用1」のポイント
申請人等作成用1の書類に関しては、基本的にすべての欄(1~16)を埋めなければなりません。
仮に、記載事項がない場合は、その旨を「なし」と記載します。
① “3.氏名”と“9.住居地”に関しては、在留カードに記載されている情報をそのまま記載しましょう。引っ越しをして住所が変わっている場合は、市区町村の役所で在留カードに裏書をしてもらい、その後で申請します。
② “8.本国における居住地”は、申請人が来日前に居住していた住所を記載します。番地等の詳細は必要なく、都市名・州名・省名の記載までで構いません。例えばホーチミンなら「HO CHI MINH VIETNAM」となるし、青島市なら「中国山東省青島市」となります。
③ “13.希望する在留資格”に関しては、いきなり特定技能2号にステップアップできるわけではないので、基本的に「特定技能1号」と書くことになるでしょう。
④ “14.変更の理由”に関しては、あまり細かいことは書かず、勤務先の会社名を記載して「株式会社○○勤務のため」などと書いておけばOKです。
⑤ “16.在日親族”の欄に記載する情報としては、父・母・配偶者・子・兄弟姉妹の情報が該当します。また、同居者(同僚・友人)がいる場合にも、記入が必要になるため注意しましょう。
・「申請人等作成用2」のポイント
申請人等作成用2に関しては、“18.技能水準”と“19.日本語能力”の記入に注意が必要です。
それぞれ、合格した試験名を正式名称で記入することになるため、正しい名称を確認しておきましょう。日本語能力を証明する試験は、例えば日本語能力試験なら(N3・N4)といったように、認定されたレベルも記載します。
ちなみに、技能実習2号修了者の場合は「技能実習2号を良好に修了」の項目にチェックを入れればOKです。
“21.申請時における特定技能1号での通算在留期間”は、留学生から初めて特定技能で在留するケースを想定した場合、年月の欄は「0年0月」という記載になります。
・「申請人等作成用3」のポイント
申請人用作成用3に関しては、“28.職歴”における、勤務先名称・入社月・退社月の記入を誤らないようにします。過去の申請内容と比べて違いがある場合、それが原因で指摘を受けることになるからです。
“29.代理人”欄は、法定代理人による申請以外では、基本的に記載しません。
署名欄に関しては、シャープペン・消せるタイプのボールペン以外で、外国人本人が署名します。
・「所属機関等作成用1」のポイント
所属機関等作成用1の作成に関しては、雇用条件書と同じ内容を書きます。よって、従事すべき業務の内容・所定労働時間・月額報酬などの項目に関しては、雇用条件書を見ながら書いていく形になるでしょう。
特定産業分野、業務区分に関しては、運用要綱にもとづいて記載していきます。
なお、月額報酬の「報酬の額が日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であることの有無」については、有を選ばないと申請は通らないものと考えておきましょう。
・「所属機関等作成用2・3」のポイント
所属機関等作成用2に関しては、番号の記載が必要な箇所があるため、必要な資料を見ながら項目を埋めていきます。
例えば3-(3)の「雇用保険適用事業所番号」に関しては、適用事業所台帳、または雇用保険被保険者資格取得届等確認通知書の確認が必要です。労働保険番号の記載に関しては、労働保険料等納付証明書の番号を見ながら記入します。
また、特定技能人材の勤務先が、本社や本店などと異なる場合は、勤務先の住所を記入しなければなりません。
次に、所属機関等作成用2~3にまたがる項目ですが、基本的に(11)~(26)の質問事項は「無」を選ばないと申請は通らないものと考えておきましょう。これらの項目は、過去に何らかの問題を起こしていないかどうかを確認している項目なので、1つでも「有」があれば実質NGとなるのです。
・「所属機関等作成用4」のポイント
所属機関等作成用4に関しては、登録支援機関に関する項目に注意します。
支援を委託している場合は、登録支援機関に問い合わせて内容を記入していく必要がありますから、(12)の対応可能言語に関しては「特定技能人材の母国語」が含まれているかどうか確認しておきましょう。
最後に、所属機関の会社名・代表者名・年月日を記入します。
留学から技術・人文知識・国際業務へ移行するケース
次に、留学から技術・人文知識・国際業務へ移行するケースについてご説明します。
特定技能のケースに比べると、記載すべき書類の枚数が少なくなりますが、やはりこちらも正しい内容を書かなければ許可が得られない可能性があるので注意してください。
・「申請人等作成用1・2」のポイント
申請人等作成用1に関しては、特定技能のケースに準じて記載しましょう。
注意すべきポイントも、技術・人文知識・国際業務で変更はないので、必要事項を確実に記入していきます。
申請人等作成用2に関しては、最終学歴の欄の記載に注意が必要です。最終学歴が日本(本邦)なのか、それとも外国なのか、チェックを入れ忘れないようにしましょう。現段階で申請人が学校を卒業していない場合は、卒業見込み年月日を記載します。
また、“20.情報処理技術者資格または試験合格の有無”の欄に関しては、外国人材が情報処理に関する業務に従事する場合に記入します。
特定技能のケースでも同様ですが、職歴の記入は間違えやすいので注意してください。前回申請時の内容と比べて相違があれば、その点につき指摘を受けるおそれがあります。
・「所属機関等作成用1・2」のポイント
所属機関等作成用1に関しては、特定技能のケースと同様に「雇用保険適用事業所番号」の記入が必要です。よって、適用事業所台帳、または雇用保険被保険者資格取得届等確認通知書を確認しましょう。
「主たる業種欄」には、別紙の業種一覧の中から、該当する番号を記入します。
書類の一番下にある「活動内容詳細」については、職種に沿う活動内容を記載することになりますが、申請人がその業務に従事する正当性を立証できることが条件です。
所属機関等作成用2に関しては、会社名・代表者の氏名・年月日をもれなく記入します。例えば「株式会社○○ 代表取締役 ▲▲ ▲▲」といったように続けて記入した後、申請書の作成年月日を記入するイメージです。
オンラインの手続きはどう進める?
在留申請オンラインシステムを使って手続きを進める場合、基本的には画面上の項目に従って情報を入力していけば問題ないでしょう。
ただし、申請前に必要な備品等を用意しておかなければならないので、最初は少し手間がかかるものと考えた方が賢明です。
準備について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
まとめ
在留資格の変更にあたっては、日本在留の目的が変わった時点で、速やかに手続きを進めなければなりません。
申請者は外国人本人が原則ですが、企業の側で用意すべき資料も多いため、企業担当者はできるだけ外国人材に協力できる体制を整えておきたいところです。