特定技能

ファクトリーラボ株式会社の代表

山本 陽平

公開日

September 29, 2022

更新日

January 23, 2024

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【特定技能人材の雇用】登録支援機関の役割や選び方のポイント5つを解説!

目次
表紙

中小企業や小規模事業者の人手不足は年々深刻化しています。

そこで2019年4月、人材確保が特に困難な12の産業分野で、即戦力として外国人労働者を受け入れる「特定技能制度」が創設されました。

受け入れ企業は、特定技能外国人が働く職場環境を整え、社会生活を支援していく義務が課されています。受け入れの際には、在留資格(ビザ)の申請書類や支援計画の作成など、多くの工数が発生してきます。

「自社でも外国人労働者を受け入れたい!」と、特定技能外国人の受け入れを検討しても、「難しいのでは?」と感じてしまいますよね。

ここで活用したいのが本記事のテーマである「登録支援機関」です。

本記事では、登録支援機関の役割や委託する際に失敗しないためのポイントなど、わかりやすく解説します。

登録支援機関とは?

出入国在留管理庁によると、特定技能外国人の受け入れ企業(特定技能所属機関)は、

特定技能外国人が「特定技能」の在留資格に基づく活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするための職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援を実施する義務がある

となっています。

あわせて、上記の支援計画を書面で作成し、この支援計画が基準に適合していることと特定技能所属機関が外国人支援計画の適正な実施が確保されているものとして、所要の基準に適合していることが求められています。

参考:出入国在留管理庁HP「特定技能外国人の受け入れに関する運用要領

登録支援機関とは、受け入れ企業から委託を受け、上記の支援計画の作成や特定技能外国人に対し、法令で義務付けられた支援を実施していく役割を担う機関のことを指します。

登録支援機関を利用せずに自社で外国人労働者へ支援することは可能ではありますが、必要な支援は実に多く、特定技能所属機関としての条件を満たす必要があるため、大半の会社は登録支援機関へ委託しているのが現状です。

登録支援機関の役割

特定技能外国人のイメージ画像

繰り返しにはなりますが、登録支援機関の役割は、外国人労働者が安心して働き、生活をしていくための体制整備や支援計画の作成、実施です。

特定技能には1号と2号があり、支援対象は、「特定技能1号」となります。

以下は、1号と2号の違いを表にしたものです。

特定技能1号と2号の比較表
参照:出入国在留管理庁「特定技能ガイドブック」

在留期間から家族の帯同まで、条件が違うことがわかりますね。

また、特定技能1号の受け入れ可能である分野は、以下の12分野です。

  • 介護
  • ビルクリーニング
  • 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
  • 建設業
  • 造船・舶用工業
  • 自動車整備業
  • 航空業
  • 宿泊業
  • 農業
  • 漁業
  • 飲食料品製造業
  • 外食業

登録支援機関は条件を満たした特定技能1号外国人と上記分野の企業の中間に立ち、法令で定められた支援を行っていきます。

では、具体的な支援内容はどのようなものなのでしょうか。

義務的支援・任意的支援とは?

登録支援機関が行う支援には、

  • 義務的支援
  • 任意的支援

の2つがあります。文字通り義務的支援とは、「必ず行わなければならない支援」です。以下に登録支援機関が行う10の義務的支援に絞って解説していきます。

義務的支援①|事前ガイダンス

雇用契約を締結したのち、在留資格認定証明書交付申請前または在留資格変更許可申請前に該当する特定技能外国人に対して事前ガイダンスを行う義務があります。

ガイダンスで説明する内容は、労働条件や活動内容、入国手続きの概要、保証金徴収の有無などです。

メール等で行うことはできず、対面またはテレビ電話など、相手の顔を見ながら話ができる体制で行う必要があります。

また、日本語でのガイダンスが難しい場合は、本人が理解できる言語(母国語)で実施します。

義務的支援②|出入国の際の送迎

一時帰国時を除き、特定技能外国人が出入国する際は空港まで送迎・同行します。

入国の際は、空港等から新しい入居先へ送り届け、出国する際は空港等に送り届けたのち、無事に帰国できるように保安検査場の前まで同行し、きちんと入場できたかまで確認することが求められています。

なお、空港と入居先間の交通費は特定技能外国人に負担させてはいけません。

義務的支援③|住居確保・生活に必要な契約支援

住居の確保や生活に必要な諸々の契約支援を実施します。

あくまで本人の希望次第ですが、必要に応じて住居探しを手伝い、連帯保証人になるケースもあります。また、水道やガス、電気などのライフラインは必須です。連絡手段として携帯等の通信機器も必要となるでしょう。

こういった、日本で生活する上で必要となる契約関係手続きがスムーズに行えるように支援します。

▶参考記事:1号特定技能外国人の住居確保は企業の責任!支援の種類や注意点を解説

義務的支援④|生活オリエンテーションの実施

国によって各種マナーやルールはもちろん違いますよね。生活オリエンテーションでは、外国人労働者に日本での暮らしに必要となるルールなどの情報を伝えます。

具体的には、病院や銀行など、各種機関の利用方法や災害時の対応、交通ルールなど、日本での生活に困らないようにできるだけ細かく伝えることが求められています。

事前ガイダンス同様、本人が理解できる言語で実施する必要があります。一方、実施タイミングは事前ガイダンスと異なり、在留資格申請前ではなく、実際に企業へ入社後に特定技能外国人としての活動を開始してから行います。

義務的支援⑤|公的手続きへの同行

必要に応じ、社会保障や税金、役所などでの各種手続き同行し、手続き及び書類作成の補助を行います。

義務的支援⑥|日本語学習機会の提供

生活や仕事上で困らないためにも、日本語を学ぶことは必要です。

そのため、地域の日本語教室等の入学案内や学習教材の情報提供も義務となります。ただし、実際に日本語教室に参加したり、教材を購入することまでは求められていません。

▶参考記事:外国人労働者の日本語教育は大変?企業は現実を知って対策を練ろう

▶参考記事:製造業で必要な「やさしい日本語」力|外国人材のための英語公用語化は必要ない?

義務的支援⑦|相談又は苦情への対応

特定技能外国人からの相談や苦情の受付窓口として機能します。

慣れない日本での仕事に悩みを抱えることもあるでしょう。

相談・苦情内容を聞き取り、どうすればよいのか助言し、場合によっては適切な機関に案内します。そして、同行したうえで必要な手続きの支援を行います。

義務的支援⑧|日本人との交流促進

日本人との交流促進も地域に馴染み、暮らしていくために大切です。

自治会や地域住民と交流できる場やお祭りなどのイベントを案内し、参加を希望する場合は、申込など参加に関する支援をします。こちらも、日本語学習機会の提供と同じく、あくまで情報提供のみで問題ありません。

義務的支援⑨|非自発的転職の支援

受け入れ側の都合により雇用契約を解除される場合、新しい受け入れ先が見つかるまで転職支援を行います。

具体的な支援内容は、新たな就職先を探す手伝いや推薦状の作成です。

また、転職活動を行うための有給休暇の付与、ハローワーク等、行政機関への手続きの支援を実施します。

義務的支援⑩|定期的な面談の実施、行政機関への通報

3ヶ月に1回以上、支援責任者等が特定技能外国人とその上司等と面談をします。

労働基準法をはじめとする各種法令の違反や問題がないか確認し、違反が認められた場合、各種行政機関へ通報しなければいけません。

なお、特定技能外国人との面談に関しては、本人が理解できる言語で行う必要があります。

任意的支援とは?

任意的支援は、「加えて行うとよい」とされる支援で、必ずしも行う必要はありません。(支援計画に任意的支援を記載した場合は、実施義務が発生します。)

たとえば、入国の際に日本の季節や気温に沿った服装や持ち物のアドバイスです。服装や持ち物のアドバイスは義務的支援には入っていませんが、あらかじめ情報を受けとっておいた方が助かりますよね。

また、日本語学習の際の費用補助や、自社の職員で日本語学習の機会を設けることなども任意的支援に含まれます。

登録支援機関を利用するメリットは?

企業が登録支援機関を利用するメリットは以下の通りです。

受け入れ企業側(特定技能所属機関)の負担が激減

特定技能外国人を受け入れる際、冒頭にお伝えした通り、受け入れ企業側にもさまざまな工数が発生してきます。

日常の通常業務と並行しての対応はとても大変なことです。

登録支援機関に委託することで、支援計画の作成・実施を行ってくれるため、受け入れ企業側の負担を大幅に削減することができるでしょう。

特定技能外国人が会社へ定着しやすい

特定技能外国人が会社へ定着しやすいのもメリットの一つと言えます。

登録支援機関は、いわば特定技能外国人支援のプロです。経験や知識により手厚いサポートが実施できるため、特定技能外国人も安心して仕事に専念できるでしょう。

うまく会社に定着してくれると、戦力となり活躍が期待できるため生産性も向上します。特定技能外国人・受け入れ企業双方にメリットがあるわけです。

▶参考記事:外国人の定着率向上について|技能実習生など人材ごとのポイントも解説

トラブル防止・早期解決

仕事上で悩みを抱えてしまった場合、気軽に相談できる登録支援機関があると、特定技能外国人も心の負担が軽減しますよね。

どうすればよいのか解決策を提示してくれることもあり、特定技能外国人と受け入れ企業側の直接的なトラブルを避けつつ、問題が起きても早期解決へと導いてくれる可能性が高まります。

特定技能外国人と受け入れ企業の間に登録支援機関が入ることで、適度な距離感を保ちつつ良好な関係づくりができるのは、大きなメリットと言えるでしょう。

登録支援機関に委託するデメリットはある?

登録支援機関に委託するにあたって、メリットが多数あることをご紹介しましたが、一方で注意点もあります。

ポイントとしては、

  • コスト面
  • 適切な登録支援機関かどうか見極める

の2点です。

登録支援機関に支援を委託する際、もちろん費用がかかります。特定技能外国人1人につき、毎月約15,000円から40,000円の間で支援委託費用が設定されているケースが多いです。あくまでも目安なので、予算に応じて複数の登録支援機関に話をきく方が良いでしょう。

また、登録支援機関ごとに、費用やサービス提供範囲が異なります。サービスの質や担当者と折り合いが合わないケースも考えられるのです。

せっかくお金を払うなら、安心できる登録支援期間に委託したいですよね。繰り返しになりますが、自社にあった適切な登録支援機関を選ぶことが重要なのです。

適切な登録支援機関を選ぶ5つのポイント

登録支援機関担当者のイメージ画像

適切な登録支援機関を選ぶためには、5つのポイントがあります。

① 対応言語

自社で雇用する外国人の言語に対応できる登録支援機関を選びましょう。

円滑にコミュニケーションをとるためにも、言葉の問題をクリアすることは大切です。

② 委託費用

前述したように、委託費用の相場は月額15,000円から40,000円の範囲で設定されていることが多いです。

登録支援機関によって値段は異なり、中には相場よりも高めに設定している場合もあります。複数社に対して見積もりを取り、比較検討するようにしましょう。

▶参考記事:特定技能外国人の受け入れ費用は?負担を抑える方法と注意点も解説(2023.11更新)

③ 支援担当者の数

支援担当者の数があまりにも少ない場合は、当然のことながら、対応が遅れることも考えられます。

一定数の支援者が在籍する登録支援機関を選ぶのがおすすめです。

④ 自社からの距離

自社からの距離があまりに遠すぎると、何かあった時でも迅速に対応してもらえないことがあります。

オンラインで対応している場合もありますが、直接支援担当者と会いやすい環境の方が特定技能外国人も安心できると言えるでしょう。

エリアを絞って登録支援機関を探すこともポイントの一つと言えるでしょう。

⑤実績や信頼性

実績や信頼性は、登録支援機関を選ぶうえで重要な項目です。

しっかりとした実績があると、その分安心して支援を任せられますよね。

また、委託している登録支援機関が廃業または登録抹消になった場合、企業側も要件を満たさないと判断されてしまうことがあります。

その場合は支援体制を再度整えるまで、継続して特定技能外国人を雇用できなくなる可能性があるので、注意点として覚えておきましょう。

外部委託か内製化どちらがいいのか?

特定技能外国人を雇用するにあたって、以下2つの方法を選べます。

  • 登録支援機関に委託する
  • 支援を自社で内製化する

これまでお伝えしてきましたが、登録支援機関に委託せずに、特定技能所属機関である受け入れ企業側で内製化することも可能です。

ただし、そのためには条件を満たし、適切な支援体制があると出入国在留管理庁から認められる必要があります。

  • 支援責任者及び担当者の選任
  • 中長期在留外国人の受け入れ実績
  • 支援計画書の作成や実施、保管
  • 外国人が理解できる言語での支援体制
  • 5年以内に出入国又は労働に関する法令に関して著しく不正を行っていないこと
  • 法令違反による罰則を受けていないこと

上記にあげたような、細かな条件がありますので、自社で内製化が可能かは事前に確認する必要があるでしょう。

特定技能外国人を複数人雇用する場合、コスト面から自社での内製化を検討されるかもしれません。

一方で、その分他の社員への負担が増え、通常の業務に支障がでることも考えられますので、自社の社員数や各社員の工数面においても内製化が可能かどうかは検討する余地があるでしょう。

弊社は内製化のコンサルティング事業を行っており、年間100万円以上の固定費用を削減する実績を有しており、お気軽にお問い合わせください。

まとめ

今回は、特定技能外国人の雇用を検討する際に、深い関わりのある登録支援機関について解説しました。

登録支援機関を利用することによる、メリット・デメリットを解説してきましたが、もし登録支援機関を活用するのであれば、大切になってくるのは「自社に合った適切な登録支援機関を選ぶこと」と言えます。

弊社Lab One運営企業であるファクトリーラボでは、製造業に特化した特定技能外国人を紹介しています。自社でも金属加工の工場を運営し、複数の特定技能外国人を雇用してきた経験から、メーカーによるメーカーのためのきめ細かいサービスを提供できると自負しております。

ぜひ特定技能外国人の雇用をご検討されている製造業の企業様は、弊社までお問い合わせください。

ファクトリーラボ株式会社の代表

代表取締役社長

山本 陽平

1990年東京生まれ。2013年上智大学総合人間科学部卒業後、東証1部上場の資産運用会社に入社しコーポレート部門に配属。2017年、外国人採用支援及び技能実習生の推進をしているスタートアップに参画。事業部長として特定技能、技能実習、技術・人文知識・国際業務の人材紹介や派遣事業の展開及び支援を取り仕切る。人的な課題、採用や定着に大きなペインを抱えた製造業に着目し、一貫したソリューションを提供することを目的として2022年にファクトリーラボを設立し代表に就任。