外国人支援

ファクトリーラボ株式会社の代表

山本 陽平

公開日

March 24, 2023

更新日

October 30, 2023

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外国人材が生活する上で困ること|意外なポイントについても解説

目次

世界的に見て、日本は特殊な国の一つであり、外国人が来日後に戸惑うことは珍しくありません。日本人にとって当たり前のことが、海外で暮らす人々にとって新鮮に感じられる部分は多いと思いますが、一方で日本独特のルールに困ってしまうケースも散見されます。

自社で外国人材を受け入れていくためには、そういった「外国人が生活する上で困ること」を事前に把握して、適切なサポートを講じられるよう準備しておきたいところです。

この記事では、外国人労働者が日本に来てから困ることが多いポイントについて、主なものをいくつかご紹介します。

外国人が日常生活で困ること

日本で暮らす外国人にとって、日常生活の段階で何らかの障害があると、相当のストレスになります。私たち日本人も、外国で暮らすことを想像すると、きっといろいろ悩んでしまいますよね。

自社で外国人を雇用する場合、できるだけ外国人に寄り添えるよう、外国人にとって「あるある」の悩みを知っておくとアドバイスしやすいでしょう。

以下、企業担当者がサポートを行う観点から、外国人が抱える主な日常生活での悩みについてご紹介します。

生活上のルールが分からない

日本人もそうですが、外国人のすべてが、日本の法律を熟知しているわけではありません。事前に母国で勉強するなどして、日本の法律に外国人が精通している状況は、なかなか想像しにくいですよね。

例えば、各種税金や社会保険、医療保険制度の仕組みなどは、日本人でも分かりにくい部分があります。日本で暮らしたばかりの外国人にとっては、なおさらチンプンカンプンのはずです。

国によっては、会社が給料から税金を差し引いて納める「源泉徴収」の概念がない場合もあります。この点について、採用前後にしっかり外国人労働者に説明しておかないと、いわゆるピンハネを疑われてしまうおそれもあるので注意しましょう。

健康保険や年金のルールに関しても同様で、何のために支払う必要があって、将来的にどういったメリットがあるのか、しっかり説明しなければなりません。きちんと支払いをしていないと、在留資格の変更が認められないなどのリスクが発生するため、自社で末永く外国人材に働いてもらいたい場合は丁寧に説明しましょう。

特に、特定技能人材を雇用する際に、「事前ガイダンス」を行わなければなりません。その中、報酬の額を説明する義務があり、徴収される税金や社会保険を試算して詳しく説明しましょう。

特定技能人材の支援に関しては、こちらの記事をご参考してください。

【特定技能人材の雇用】登録支援機関の役割や選び方のポイント5つを解説!

日本語が分からない

海外の言語を勉強することは、どの国の人でも大変なことですが、とりわけ日本語は世界でも難易度の高い言語の一つなので、外国人は苦労することが予想されます。日本語は、ひらがな・カタカナ・漢字・アルファベットの4つの文字を使い分ける必要があり、文法的には述語が最後に来るため結論が分かりにくいという特徴もあります。

また、話し言葉では主語を省略するケースが多いため、主語を明確にして話す言語を使う国の人にとっては、理解が追い付かない場面に遭遇することも珍しくありません。そして、日本で暮らす日本人の多くが、英語をはじめとする外国語に苦手意識を持っているので、日本語以外でのコミュニケーションをとることが難しい傾向にあります。

まずは、「やさしい日本語」を意識して外国人とコミュニケーションをとりましょう。「やさしい日本語」について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

製造業で必要な「やさしい日本語」力|外国人材のための英語公用語化は必要ない?

日本を旅行中で言葉が通じない場合はともかく、これから日本で暮らすことになると、日本語が分からない状況はあらゆる場面で不便です。例えば、病気になった際に病院を訪れても、日本語が分からないことで適切な治療を受けられないかもしれません。参考として、厚生労働省が提供している《外国人向け多言語説明資料≫は役に立つでしょう。

市区町村の役所で行う各種手続きに関しては、難解な言葉が用いられているケースも多いため、日本に慣れていない外国人にとっては面倒に感じるはずです。「公的手続きへの同行」は登録支援機関の義務的な支援の一つです。必要に応じ、社会保障や税金、役所などでの各種手続き同行し、手続き及び書類作成の補助を行います。

もちろん、外国人労働者のプライベートにズカズカと踏み込むのは避けるべきですが、外国人労働者がサポートを求めてきた際にアドバイスできる企業担当者はいた方が安心です。可能であれば、自社で日本語学習のための支援体制を整えるのが望ましいでしょう。

ネット上、無料の日本語教材がたくさんあり、文化庁の日本語学習サイトは現在の17言語を提供し、日本国内の在留外国人の約9割の言語をカバーしています。

趣味や遊びを楽しむ時間・場所がない

外国人にとって、建前と本音があり、空気を読むのが当然という、日本の文化に馴染むことは難しいところです。日本人同士でも、腹を割って話すことがそもそも難しいので、外国人はよりコミュニケーションの厳しさを感じるはずです。

また、総じて日本人は「日本人かそうでないか」といったフィルターをかけて人を見る傾向にありますから、外国人の外見だけで怖がってしまう人もいます。その結果、集団で騒いだり遊んだりする機会が減り、より孤独を感じやすくなってしまうのです。

特定技能外国人への支援の一つは「日本人との交流促進」です。特に地方に配属される場合、日本人との交流促進も地域に馴染み、暮らしていくために大切です。

自治会や地域住民と交流できる場やお祭りなどのイベントを案内し、参加を希望する場合は、申込など参加に関する支援をします。

文化の違いから、外国人はどうしても八方ふさがりの状況に追い込まれがちなので、企業側も何らかの形でバックアップを進めるようにしたいところです。レクリエーションの機会を設け、誰かと一緒に身体を動かすだけでも、外国人材にとって良い刺激になるはずです。

近隣住民とのトラブル

日本人は、必ずしも遵法精神が強い国民性とは言えませんが、公共の場のマナーには厳しい傾向にあります。マンションの騒音に関しては、生活音がうるさいというだけで、クレームに発展することも珍しくありません。

また、ごみの捨て方はマンション・地域によってルールが異なり、曜日によって捨てられるゴミが決まっていたりします。さほどゴミ出しのルールが厳しくなかった国で暮らしてきた人にとっては、ゴミ出しのルールを守る意識そのものが薄いこともあるので、無作法が近隣住民の逆鱗に触れる可能性は高いでしょう。

その他、自転車や自動車などを持っている場合は、駐車・駐輪に関するルールを守らずトラブルに発展することも想定されます。家の前などに駐車していると、住んでいる人が警察を呼ぶ事態にまで発展することがあるので、そこから職場に連絡がいく可能性は十分考えられます。

弊社の親会社佐竹製作所に勤めている特定技能人材は、社宅に入居する前に、ゴミ出しのルールや部屋の扱い方など、動画で説明するようにしています。

アパートルールを説明する動画のスクショです
タイ語・ベトナム語併記の動画

食事に関すること

日本は比較的「食」に寛容な国で、各国の料理を食べられるレストランが多く見られます。しかし、海外では宗教上の理由・信条などから、特定の食べ物を食べない人もいます。

イスラム教徒が豚肉を食べないことはよく知られていますが、単純に肉だけがNGというわけではなく、ラードや豚骨スープなどもNGです。飽食の日本において、豚肉を避けて生活することは、難易度の高い生活と言えるでしょう。

ベジタリアンやヴィーガンのように、特定の信条や嗜好によって食べるものを制限する例も増えてきています。特にヴィーガンは、卵・乳製品・はちみつなどの食材を口にせず、動物由来の服や生活用品も使いません。

自分が食べられるもの・着られるものはどこで見つけられるのか、よく分からない外国人材も多いはずです。サポートする企業の側でも、できる限り相談を受け付けて、一緒に調べるような体制を整えておくと親切です。

弊社の顧客事例として、インドネシア人材を雇入れ時、事前に近くのハラル食材店を調べ、マップを作成し渡しました。小さな配慮でも、外国人材にとっては大変助かることです。

外国人が日本でのビジネスシーンで困ること

一般的な生活をする上で困ることはもちろん、仕事上のやり取りでも、外国人が戸惑うことは多いでしょう。

具体的な困り事としては、以下のようなものがあげられます。

社内ルールの理解

日系企業で働く外国人は、それぞれの企業独自のルール、いわゆる「社内ルール」を理解した上で仕事を進めなければなりません。

例えば、有給休暇を申請する際、一部の方は母国への帰国のために休暇を利用することを望むかもしれません。しかし、長期の休暇が業務に大きな影響を及ぼすことがあるため、あらかじめ計画を共有し、特定の期間を避けるように説明することが重要です。

また、一般的なケースとして、住所の変更が挙げられます。海外では、引っ越しても会社に住所の変更を報告する必要があることを知らない人が多いです。

しかし、住所の変更を報告しないと年金に関する重要なお知らせが本人に届かなくなり、年金の手続きに遅れが生じたり、従業員に不都合が生じたりする可能性があります。この点を外国人材にしっかりと説明して、理解してもらうことは重要です。

企業としては、外国人材が円滑に仕事を進められるよう、社内ルールを説明できる環境を整えておきたいところです。

支援をする担当者が手取り足取り説明するだけでなく、必要に応じて情報を確認できるような仕組みがあるのが望ましいでしょう。

ビジネスマナーの違い

日本で当然とされているビジネスマナーは、もちろん日本特有のものであり、すべての国で共通するものではありません。

例えば、日本人の時間に関する感覚は、国際的な基準から見ると非常に厳格で、たとえ1分遅れた場合でも遅刻とみなされることがあるため、多くの人が予定の時間よりも早く行動する傾向があります。

また、日本には「報・連・相」という文化が根付いており、結果だけでなく、進捗状況も継続的に報告する習慣が存在します。

外国人が自力でマナーを学ぶのには限界がありますから、基本的には仕事の中で覚えていくしかありません。日本人によるサポートなしでは、なかなかマナーに熟達するのは難しいでしょう。

言語表現とニュアンス

日本語が分からないことにもつながってくる問題ですが、日本人の言語表現は、あまり直接的ではありません。

しかし、外国から入社した労働者に対して曖昧な表現を用いると、労災のリスクが高まる可能性があります。具体的な指示を与えて、常に理解しているか確認することが肝要です。

交通手段

日本は公共交通機関が発達している国の一つであり、多くの地域で電車・地下鉄網などが充実しています。路線・鉄道会社の数も多く、車・バイクを持たずとも、いろいろな場所に移動できるので便利です。

しかし、路線は入り組んでいるため、東京・大阪などの大都市の路線図を理解して、必要な切符を買うのは外国人にとって難関です。

乗り換えも複雑ですから、どの路線からどの路線に移動すれば目的地にたどり着けるのか、分かりにくい部分があります。

個別に会社からの支援を受けることが難しいかもしれませんが、例えば「Googleマップ」や「乗り換え案内」といったアプリを紹介することで、特に問題はないでしょう。

また、地方はどうかと言えば、車社会ということでさらに交通手段が限られてしまいますので、自転車を支給したり、送迎バスを手配したりして対策を講じている企業様もあります。

自社で外国人材を雇用する場合は、交通手段を安心して使えるよう、何らかの手を打つことが求められます。

手続き関連

外国人が一から日本で暮らすためには、国内での手続きは避けて通れません。一つひとつの手続きが複雑になりがちで、それぞれに関連性があることから、外国人には厳しい環境と言えます。

もし、外国人が誰の助けも借りず、一人で手続きを進めようとした場合、以下の悪循環に巻き込まれてしまいます。

○携帯電話が欲しい場合は「住所」が必要
○住所(家)を見つけて借りるには「携帯電話」などの通信手段が必要
○銀行口座を持つには「住所」が必要

※必要な手続きを済ませるには、別の手続きを済ませていなければならない

おそらく、多くの外国人にとって、まるでブラックジョークのように理不尽に感じられる話でしょう。

それゆえに、企業側のサポートはとても重要です。

例えば、特定技能人材を雇用する際は、生活上で必要な銀行口座・携帯電話などを提供するという「義務的支援」を行う必要があり、自社での対応が難しい場合は登録支援機関へ委託することになります。

在留資格に関すること

日本で在留資格を取得するハードルは、決して低いものではありません。

いわゆる「就労ビザ」の種類は多いものの、種類によって取得条件は厳しく、基本的には高度な教育を受けた人材・実務経験豊富な人材にしか門戸が開かれないからです。

入管側の審査の厳しさが一因ではあるものの、そもそも審査の詳細が分かりにくいため、対策を立てるのが難しい点も難易度を上げている理由に数えられます。

在留資格を取得した後も、次回も同様に在留資格を取得できるか不安になりながら日々を過ごすことになるため、外国人材への定期的なサポートは不可欠でしょう。

自社で在留資格についてのノーハウがない場合、行政書士に依頼するか登録支援機関に相談しましょう。

まとめ

日本で外国人を取り巻く環境は複雑で、外国人が日本独自のルールに慣れるのもかんたんではありません。

そこで、雇用する企業の側では、ビジネス・プライベートの両面にフォーカスして、適切なサポートを行うことが求められます。

総じて、日本人が不便に感じることは、外国人にとってはもっと不便に感じられるはずです。

自社の支援が難しい場合、登録支援機関に任せるのも選択肢の一つです。

ファクトリーラボ株式会社の代表

代表取締役社長

山本 陽平

1990年東京生まれ。2013年上智大学総合人間科学部卒業後、東証1部上場の資産運用会社に入社しコーポレート部門に配属。2017年、外国人採用支援及び技能実習生の推進をしているスタートアップに参画。事業部長として特定技能、技能実習、技術・人文知識・国際業務の人材紹介や派遣事業の展開及び支援を取り仕切る。人的な課題、採用や定着に大きなペインを抱えた製造業に着目し、一貫したソリューションを提供することを目的として2022年にファクトリーラボを設立し代表に就任。