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MOLI

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January 28, 2025

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外国人材に日本の自動車免許を取得させるには?国際免許・外免切替・新規取得まで解説

目次

日本で生活する外国人にとって、自動車の運転が必要になる場面は少なくなく、通勤、通学、買い物、旅行など、車があれば生活の利便性は格段に向上します。

運送業・営業職といった「車を業務で使用する」職種に就くことも可能となり、2024年に解禁された自動車運送業分野の特定技能人材を確保したい企業、現場に車で直行直帰できる人材が欲しい建設業などでは、日本の自動車免許を取得した人材は貴重な存在になります。

しかし、母国の運転免許証が日本でそのまま使えるわけではないため、日本の公道を運転するためには適切な手続きが必要です。

この記事では、外国人材が日本で自動車免許を取得するための方法を、主に国際免許証、外免切替、新規取得の3つのパターンに分けて詳しく解説します。

外国人の自動車免許取得の現状

近年、日本で生活する外国人の数は増加傾向にあり、出入国在留管理庁の資料「令和5年末現在における在留外国人数について」によると、令和5年(2023年)末の在留外国人数は3,410,992人(前年末比335,779人:10.9%増)となっており、過去最高を記録しました。

また、警察庁が発表している「運転免許統計」によると、令和5年度の外国免許切替者数は合計で66,127人となっており、令和4年度の49,845人に比べて16,282人増加している状況です。

留学生、技能実習生、ビジネスパーソンなど、様々な目的で来日する外国人が増えており、それに伴い、自動車免許取得のニーズも高まっているものと考えられます。

特に地方では、公共交通機関が限られている地域も多く、自動車は実質的に生活必需品と言えるでしょう。

しかし、日本語の難しさ、制度の複雑さなどを理由に、日本の自動車免許取得を諦めてしまう外国人は、決して少なくありません。

そのような状況を鑑み、企業においても外国人社員の業務や生活のため、運転免許の取得サポートを検討するケースが増えてきています。

先述した通り、自動車運送業や建設業など、業務で自動車の運転が必要となる業種において、外国人社員の自動車免許取得は重要な課題の一つです。

日本政府も、外国人労働者の受け入れ拡大に伴い、運転免許取得の多言語対応を進めています。 

例えば、自動車運転免許の学科試験については、以下の言語に対応しています。

※出典元:警視庁|外国語により受験できる学科試験について

このように、国としても免許取得のハードルを下げるための取り組みが行われています。

将来的には、より多くの外国人が、よりスムーズに日本の運転免許を取得できる環境が整うものと考えられます。

外国人材が日本の自動車免許を取得する方法

外国人が日本で自動車を運転するためには、まず「日本の自動車免許」を取得しなければなりません。

以下、そのための3つの方法について、具体的な流れも含め解説します。

国際運転免許証で運転する

日本は、武力紛争時における人道的保護を目的とした国際条約「ジュネーブ条約」に加盟しており、ジュネーブ条約の加盟国で発行された国際運転免許証を持っていれば、外国人でも日本国内で自動車を運転できます。

おそらく、この方法はもっとも手軽な免許取得の方法であり、日本への短期滞在者・旅行者などが多く利用する方法です。

ただし、国際免許証の有効期限は「入国日から1年間」となっており、期間を過ぎても外国人が日本で運転したい場合は、後述する外免切替、または新規取得が必要になります。

また、国際運転免許証はあくまでも「免許証の翻訳」という扱いであることから、必ず母国の有効な運転免許証とセットで携帯しなければならず、国際免許証だけで運転すると「無免許運転」とみなされます。

よって、外国人材の自動車免許取得を企業がサポートする際は、その点もしっかり説明する必要があります。

国によっては、ジュネーブ条約に加盟していても日本で国際免許証が使用できない場合があるため、警視庁等のWebサイトや、各国の大使館・領事館などでも確認しておくことをおすすめします。

国際運転免許証は、母国で必要な手続きを行い取得すれば、日本に入国してからすぐに車を運転できます。

具体的な取得手続きは国によって異なるため、各国の大使館・領事館のWebサイト等を確認して、取得スケジュールを立てましょう。

外国免許の切替(外免切替)

次にご紹介する方法は、外国の運転免許証を、日本の運転免許証に切り替える制度「外免切替」を利用する方法です。

新規で免許を取得するよりも、時間的・費用的な負担が少なくて済むメリットがあるため、外国人材が諸条件を満たしている場合は、外免切替がもっとも現実的な選択肢となるでしょう。

外免切替の流れ・要件

外免切替は、大まかには次のような流れで進みます。

流れ準備するもの・要件等
①外国免許の状況を確認する●すでに有効期限が切れている運転免許証では外免切替の申請ができない 
●外免切替の予約から審査まで、1~3ヶ月の期間を要することもあるため、
 運転免許証の有効期限は最低でも1ヶ月以上の余裕が必要
②必要書類を準備する<必須のもの>
●外国の運転免許証(有効であること) →日本語による翻訳文も必要 
●運転免許証の初回取得日を証明する書類 
●住民票 
●パスポートなど、運転免許証を取得した国や地域に、
 運転免許証取得後に通算“3ヶ月”以上滞在したことが確認できる書類等 
<持っている人は用意するもの> 
●日本の運転免許証(過去に持っていた場合でも用意する) 
●国際運転免許証 
<審査当日に持参するもの> 
●在留カード、または特別永住者証明書等(外国籍の場合) 
●証明写真(1枚、縦3cm×横2.4cm) 
●現金(外免切替の手数料支払いのため) 
●眼鏡・コンタクトレンズ・補聴器(使わなければ運転できない場合) 
<その他> 
●通訳(必要な場合)
③審査予約→審査●管轄の免許センターに電話連絡して流れを確認し、審査予約を済ませる 
●審査では、書類の提出や確認のほか、外国における運転免許証を取得した際の状況についてもヒアリングが予想される
④適正審査それぞれの免許につき、合格基準となる視力や視野、聴力などを満たしているかどうか審査される
⑤知識・技能確認<知識確認>
●10問中7問での正解となる 
●○×問題で記述なし 
●各種外国語での受験も可能 <技能確認> 
●左側通行・右ハンドルに慣れない場合は、外国人材にとって難しく感じられる可能性が高く、合格率は30%程度と低め 
●100点を満点とする減点方式で、70点以上残っていれば合格 
●予約状況も2~4ヶ月待つ可能性があり、ゆとりをもってスケジュールを立てることが重要
⑥免許証交付一部の国(州)では、技能確認、または知識・技能確認が免除となる

必要書類が一通りそろっていれば、原則として申請から免許証交付まで早期に手続きが完了しますが、技能確認が必要な国の場合は時間を要するため注意しましょう。

また、車種に応じた受講手数料、交付手数料のほか、翻訳文や住民票、写真などを合わせると、10,000円以上の金額がかかることが想定されるため、審査当日に持参する金額は20,000円以上準備しておくと安心です。

知識確認の多言語化について

これまでは日本語のみで実施されていた学科試験も、現在は多くの都道府県で多言語対応が進んでいます。

具体的には、英語、中国語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語など、様々な言語で受験できるようになっています。

ただし、対応言語は試験場によって異なるため、事前に申請する免許センター等で詳細を確認しておくと確実です。

外免切替時の知識確認と技能確認が免除される国

一部の国は、外免切替時の知識確認・技能確認が免除されます。

警視庁のWebサイトによると、以下の国等が知識確認・技能確認、または技能確認のみが免除されます。

<知識確認・技能確認が免除される国等>

アイスランドアイルランドアメリカ合衆国(※)イギリスイタリアオーストラリア
オーストリアオランダカナダ韓国ギリシャスイス
スウェーデンスペインスロベニアチェコデンマークドイツ
ニュージーランドノルウェーハンガリーフィンランドフランスベルギー
ポーランドポルトガルモナコルクセンブルク台湾-

※アメリカ合衆国は、オハイオ州、オレゴン州、コロラド州、バージニア州、ハワイ州、メリーランド州及びワシントン州に限る

<技能確認が免除される国等>

アメリカ合衆国

※(インディアナ州に限る)

日本国内で新規取得する

外国人材が国際免許証を所持しておらず、外免切替も難しい場合は、日本人と同じように運転免許試験場へ行き、新規で運転免許証を取得します。

具体的な方法は、やはり日本人と同様で、教習所に通って新規取得するか、直接運転試験場・免許センターまで足を運び学科・実技両方の試験に合格する(一発試験)かの2通りがあります。

以下、それぞれの新規取得の方法について解説します。

教習所に通って免許取得

日本の運転免許証の新規取得にあたり、外国人材が安心して免許を取得するなら、教習所に通う選択肢を選んだ方が安心です。

日本の教習所は、学科教習及び技能教習を体系的に学ぶことができるカリキュラムが組まれており、運転初心者でも安心して免許を取得できるからです。

さらに、教習所を卒業すると技能試験が免除され、ほとんどの場合は学科試験に合格するだけで免許を取得できます。

ただし、費用は20万円~30万円程度かかり、取得までに数ヶ月の期間を要する点につき、自社がサポートをどこまで許容できるかどうかが問題となるでしょう。

ちなみに、さらに学習期間を短縮する場合、教習所の寮または教習所指定の宿泊施設に泊まりながら教習を受ける「合宿免許」を利用する方法もあります。

こちらを選んだ場合、2週間程度でカリキュラムが終わり、その後は1年以内に免許センターで本免学科試験に通れば運転免許証が取得できます。

一発試験にチャレンジする

教習所に通わず、直接運転免許試験場などで学科試験と技能試験を受ける方法は、一発試験と呼ばれます。

一発試験にチャレンジして、見事一発合格を勝ち取れた場合、費用は教習所に通うよりも安く抑えられます。

また、受験回数に制限はないため、何度も受験して合格を勝ち取ること自体は可能です。

しかし、試験の難易度の高さから合格者は少ない傾向にあるため、外国人材に確実に自動車免許を取得して欲しい場合は、教習所を活用した方が安心できるでしょう。

実際に公道を運転した経験がなければ合格が難しいともいわれており、日本の交通ルールを正しく・深く理解していなければ、合格まで数十回受験しなければならないケースも十分考えられます。

外国人材が日本の自動車免許を取得する際のハードル

ここまでお伝えしてきたいずれかの方法で、外国人材が日本の自動車免許を取得する状況を想定した場合、考えられるハードルとしては次のようなものが考えられます。

日本語の難しさ

日本で運転免許証を取得する場合、試験の受験に関しては母国語で受けられるチャンスもあるものの、教習所の講習内容はほとんど日本語で実施されます。

そのため、一定の日本語レベルがなければ講習の内容が理解できず、交通ルールに関する専門用語・試験官の指示を正しく理解するためには、前提条件として一定レベル以上の日本語能力が問われます。

大陸と真逆の操作・交通ルールの難解さ

日本は左側通行ですが、大陸の多くの国は右側通行で、車も真逆の操作が求められます。

また、日本は海外諸国に比べて歩行者を優先するスタンスの国であることから、交通ルールが母国より難解に感じられるケースも十分考えられます。

運転免許証取得にかかるコスト

教習所に通うと、普通自動車第一種免許の取得であっても、1人あたり30万円前後の出費となります。

この負担に加えて、大型車両の運転も視野に入れる場合、さらに人材に対して投資しなければなりません。

外国人材の活躍にどれだけ期待するのかによって、運転免許証取得にかかるコストをどう捉えるかが変わってきます。

自社で外国人材をサポートするつもりなら、この点についてしっかり検討する必要があります。

各種書類の準備

主に外免切替にいえることですが、各種書類の準備に手間取ると、それだけ免許取得に時間がかかります。

また、書類に何らかの不備があると申請されないため、外国免許証の日本語翻訳文の手配の時間も含め、スケジュールを管理しながら確実に準備を進めましょう。  

外国人材が日本で車を運転する際の注意点

外国人材を企業がサポートする場合、普段の運転における注意点をまとめた上で、人材側にしっかり説明する心配りが大切です。

ともすれば日本人でも十分に守れていないケースが考えられるため、最低限以下のルール・マナーは説明しておきましょう。

基本ルールの把握と説明一方通行や交差点の右左折、車線変更など、右側通行の国との違いについて、
実際に運転免許保有者が運転してルールを説明するなどしておきたい
「止まれ」の意識歩行者の安全を目的とした一時停止の概念は、日本の交通ルールの特徴的な
ものの一つであるため、運転中は常に歩行者を守る意識を持つよう説明する
譲り合いの精神日本では道路が狭い地域も多く、対向車や路肩の車に配慮しながら、
ときには自分が道を譲る意識を持たないと事故につながる点を説明する
飲んだら乗るな、飲むなら乗るな飲酒運転の罰則が厳しい日本では、お酒を飲んで運転しただけで人生を
棒に振るリスクがあるため、外国人材に「飲んだら乗るな、飲むなら乗るな」と説明する
自転車の動き自転車は車道の左端を走るため、衝突しないよう十分に距離を取って運転するよう伝える
クラクション外国の中には、クラクションを多用する文化の国もあるが、日本では
めったに鳴らさないため、鳴らし過ぎるとトラブルを招くおそれがあることを伝える

その他、業務上の理由から高速道路を利用する場合は、ETCに関すること、スムーズな合流の方法についても説明しておくとよいでしょう。

まとめ

外国人が日本で自動車免許を取得する方法は、基本的に国際免許証、外免切替、新規取得の3つと考えておきましょう。

特定技能等の在留資格で、トラック等の運転を想定している場合は、免許取得に加えて在留資格取得の要件も満たす必要があります。

企業としては、自国内で試験を受けさせるコストを支払うよりも、すでに日本または他国で一定の実務経験がある人材を雇用できた方が、業務をスムーズに進められるでしょう。

国内外の特定技能人材の採用、内定後の在留資格等の申請、入社後の支援業務といった一通りのサポートをご希望の企業担当者様は、Factory labにご相談ください。

ファクトリーラボ株式会社の代表

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