コラム・取材

ファクトリーラボ株式会社の代表

山本 陽平

公開日

August 4, 2023

更新日

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【インタビュー】日本への憧れと課題:親日国インドネシアの日本語教育と人材採用で直面する挑戦ーー日本語塾経営者にインタビューしてみました!

目次

インドネシアは親日国のうちの1つです。出入国在留管理庁によると令和4年6月末 日本在住インドネシア人は83,169人と右肩上がりに増えています。

日本語学習者数も世界第2位と多く、他の東南アジア諸国と比べ日本語力が高い傾向があります。日本の文化やポップカルチャーにも親しみをもっている方も多いです。

インドネシア人はどのようなきっかけから日本に興味をもつのでしょうか。彼らにとって日本はどのように見えているのでしょうか。

今回はインドネシアで直営2校、フランチャイズ4校の日本語塾<IkuZo Japanese Education Center>を経営する福田健太郎さんにインドネシアの現状、日本語教育事情、インドネシア人と円滑にコミュニケーションを取る方法など色々な角度からインタビューをさせていただきました。

福田さんが経営している日本語塾

福田さんは2001年の学生時代、バックパッカーとして初めてインドネシアを訪れました。その際はジャカルタ、バンドン、ソロ、バリを旅行されたそうです。

インドネシア以外にも様々な国を旅行されましたが、インドネシア人の持つ「アグレッシブすぎないフレンドリーさ」に惹かれインドネシアでの就職を決意されました。

当時のゼミの教授からの勧めもあり、じゃかるた新聞社に就職した後独立し現在まで日本語塾の経営・運営をしています。

これからインドネシア人の受け入れを考えている企業様はぜひご一読ください。

インドネシアに対する印象について

――インドネシアで就職された当初と今ではインドネシアに対する印象は変わりましたか?

フレンドリーな方が多いということは大きく変わりません。ただ長く暮らしていくにつれ、この印象は民族によって差があることに気が付きました。インドネシアの人口は2億2,200万人ですが、約250もの民族集団から形成されています。

当初、私が感じたインドネシア人のイメージは国内最大の民族であるジャワ人に対するものでした。例えば、最初にコミュニケーションをとったのがバタック人であれば、最初に受ける印象は変わっていたかもしれません。

同じインドネシア人でも民族によって全く異なる言語や文化背景、慣習、宗教を持っている点は日本人からするとなかなか想像しにくい部分があるかもしれません。

 ただ、日本人がもつ「本音とたてまえ」の考え方はインドネシア人にも似ている部分があると感じます。にこやかに見える反面本音が分かりにくいこともあります。

 生活上の変化でお話すると、ここ20年間で国が非常に豊かになりました。どこにいても日本のコンテンツに触れることができますし、逆に困らなすぎると感じるぐらいです。

 一方で、インドネシアのローカル番組やコンテンツに触れるための時間が減ってまったなとも感じます。そうなると、近くの目に見えやすい社会(私の場合、華人コミュニティの方と接することが多いです)にしか触れなくなり、インドネシアの87%を占めるムスリムの方の生活環境や思考、感覚が理解しづらくなってしまいますのでバランスを取っていきたいところです。

――長年インドネシアで暮らしている福田さんですが、日本に一時帰国をした際どんなことにギャップを感じますか

日本は良くも悪くも何も変わらないなと思います。ほぼ何も変わっていないです(笑)

先程も話した通り、ここ20年間で目まぐるしく発展を遂げたジャカルタと比較すると、日本は90年代の社会をそのまま維持しているなと感じます。変化余地が少ないとも言えますね。

シンプルな点でいうと、インドネシアと比べて日本は町が静かで清潔に整えられています。

インドネシアで生活しているとモスクのスピーカーから大音量でお祈りの声が流れます。休日の昼間は子供たちが外で集まり、弾んだ声が聞こえてきます。

一方で日本では昼間お年寄りがゆっくり散歩をしている姿をよく見かけます。長閑ではありますが、この静かさは、活力のなさとイコールではないかと感じます。    

少し話がずれますが、とあるアニメで「文明は成熟しているが活力を失った国」と「技術力はあまりないけど活気がある国」が戦争するシーンがあります。昔は「文明は成熟しているのに活力を失う」という意味が理解できませんでしたが、昨今の日本をみてみるとこの概念が理解できる気がします。

日本語教育について

教室内の写真
福田さんが経営している日本語塾

――福田さんが運営する日本語塾にはどんな生徒が多いのでしょうか?

 主に中学生、高校生が放課後に学習しに来ています。日本語クラスと漫画クラスがありどちらも同じぐらい人気がありますね。日本語を学ぶきっかけはポップカルチャーがほとんどです。「好きな日本のアニメをオリジナルの言語で鑑賞したい」「日本のポップカルチャーを理解したい」など、趣味の延長として日本語を学んでいる生徒がほとんどです。ですので、日本語学習の理由が「日本で働いてお金を稼ぐ」ことなど、ビジネスのための日本語を学びたいという生徒はほぼいません。

――塾の生徒さん達は日本にどんな印象を持っているのでしょうか。

インドネシア人の若い層がイメージする日本は「車・バイク・漫画」といったところでしょうか。ただこのイメージもだんだん変わりつつあります。昔は日本の製品(車や家電等)はアジアで1番。という認識でしたが今は沢山ある外国の中で、変わったポップカルチャーを持つ国といった感じです。

――趣味で日本語を勉強しているとなると、生徒の中で日本語能力試験取得を目指している方はあまりいないのでしょうか?

指標として試験を受験している方もいます。目標の1つとして取得を目指すのは良いことですが、合格した級と運用能力は比例していないということを理解する必要があります。

例えば、技能実習生の場合検定は持っていなくてもスムーズにコミュニケーションが取れる方が多くいます。彼らは日本語を文法として勉強していないので、試験で点数を取ることは難しいのです。また、テストで点が高くてもコミュニケーションが苦手な方もいますので、日本語能力試験の結果だけですべての日本語能力を計ろうとするのは難しいと思います。

――インドネシアは日本語学習者が中国に次ぎ2位と多いですが、日本への留学者や就職者の割合は低いです。この背景にはどんなことがあると考えますか?

そもそも2位になっている理由が、全体の学習者数をカウントしているからだと思います。インドネシアでは高校で選択科目として日本語を選ぶことができます。彼らの数が含まれているので日本語学習者は多くみえますが、本気で日本語勉強したい(=留学/就職)したいという方はそこまで多くないのが現状です。

インドネシア人とのコミュニケーションについて

ヒジャブを被っている女の子が絵を描いている
絵を描いている塾生

――インドネシア人人材と日本語でコミュニケーションを取る際、気を付けるべきことを教えてください。

またアニメの話になってしまいますが…とあるアニメで日本人のキャラクターが外国人のキャラクターに「施錠してください」という場面があります。それを見たとき「施錠」は外国人に伝わりにくい日本語だな。と感じたことを覚えています。

だからと言って「やさしい日本語(※1)」であればすぐにコミュニケーションが取れる訳ではありません。

なぜなら、日本人が考えるやさしい日本語と、日本語学習者の考える優しい日本語に大きな差があるからです。

例えば日本人の幼稚園児向け絵本に「へびにょろにょろ~」と書いてあったとします。これは日本人にとってはやさしい日本語ですが、外国人にとってのやさしい日本語とは全く異なります。

「やさしい日本語」に関する概念を学ぶことは外国人とコミュニケーションを取るうえで一つの方法ではありますが、まず取り組みやすい内容としては

  • ゆっくり話す
  • 漢語ではなく和語を使う
  • 主語述語を省略しない
  • ですます調で話す

 が挙げられると思います。

(※1)やさしい日本語

引用:日本に住む外国人が災害発生時に適切な行動をとれるように考え出された。災害時のみならず、行政情報や生活情報、毎日のニュース発信など、全国的に様々な分野で取組が広がっている。

――インドネシア人の方を面接する時気を付けることはありますか?

日本人と比べインドネシア人は面接を受ける経験が少ないです。日本流の面接で、長所や短所を聞いてもそもそもインドネシアでそういった面接をしたことがないので、似通った回答をしてしまいます。

私の場合、長期間働くのに支障はないかの確認をメインにするようにしています。例えば、家族の反対はないか、体調面に不安はないかなどの質問をします。高邁な質問はせず、一般常識がある、あえて「普通の方」を採用するよう意識しています。特別に優れた人材である必要はなく、未経験でも良いと思っています。

――インドネシア人の方一緒に働くために気を付ける点があれば教えてください。

 日本人に対する接し方と特別変化を付ける必要はないと思います。

強いて言えば、あまり親しまれすぎない(同じ目線になって趣味のはなしをしたりしすぎない)ことでしょうか。あまりフレンドリーすぎると、日本に存在するピラミッド型――先輩、後輩、上司、部下の関係性が築かれないことが懸念されるからです。

 基本的な社会人スキルが身についていない方には注意をしますが、他のスタッフがいる前で追撃はしないようにしています。あくまで個別で話をします。ただ、最初に話した通り基本的には日本人に対する関わり方と基本的には変わりません。

――インドネシア人の方が働きやすい環境はどのようなものですか。

日本語研修の機会や日本語能力に応じたインセンティブを設定すると良いかもしれません。

また、宗教的なイベント日(インドネシアでいう祝日)に差し入れしたり、気遣いをしたりすと喜ばれます。

まとめ

今回はインドネシアで日本語塾を経営する福田さんにインタビューを行いました。インドネシアからみた日本のイメージを知ることができたのではないでしょうか。

今後、特定技能や技術・人文知識・国際業務ビザでインドネシア人採用を考えている企業様は是非、今回のインタビュー内容を参考にインドネシア人の採用や働きやすい環境を検討いただけますと幸いです。

Factorylabではインドネシア人人材紹介の実績もございますので、雇用をお考えの企業様や既に雇用をされていて、人材の定着に課題を感じられている企業様は是非、お気軽にご相談ください。

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ファクトリーラボ株式会社の代表

代表取締役社長

山本 陽平

1990年東京生まれ。2013年上智大学総合人間科学部卒業後、東証1部上場の資産運用会社に入社しコーポレート部門に配属。2017年、外国人採用支援及び技能実習生の推進をしているスタートアップに参画。事業部長として特定技能、技能実習、技術・人文知識・国際業務の人材紹介や派遣事業の展開及び支援を取り仕切る。人的な課題、採用や定着に大きなペインを抱えた製造業に着目し、一貫したソリューションを提供することを目的として2022年にファクトリーラボを設立し代表に就任。