特定技能人材のニーズは高まっており、令和3年12月末時点では50,000人弱だった特定技能在留外国人数が、翌年の令和4年12月末時点では130,915人にまで増加しています。
今後も、特定技能人材を雇用する企業は増えるものと推察され、同時に登録支援機関のニーズも高まることが予想されます。
しかし、一口に登録支援機関といってもたくさんの機関があり、サポート体制や対応言語も異なりますから、経営者の方・人事責任者の方にとっては選ぶのが大変ですよね。
この記事では、自社に合った登録支援機関を探すための一覧「登録支援機関登録簿」のチェック方法や、製造業が登録支援機関選びで注目すべきポイントについて解説します。
登録支援機関の一覧とは
2023年6月23日現在、出入国在留管理庁が公表している登録支援機関の数は8,404件です。
これら登録支援機関の情報は「登録支援機関登録簿」というExcelに一覧でまとめられており、誰でも出入国在留管理庁のサイトからダウンロードできます。
ただ、8,000件以上の情報の中から、自社に合った登録支援機関を自力で探すのは現実的ではありません。
まずは、登録支援機関登録簿の中から、自社が注目すべきポイントを押さえておきましょう。
登録支援機関登録簿に掲載されている情報
登録支援機関登録簿には、登録支援機関に関する以下の情報が記載されています。
これらの情報の中で、登録支援機関に依頼する上で確認しておきたいのは、
上記の4点です。
以下、詳細を解説していきます。
支援を行う事務所
「支援を行う事務所」の欄には、登録支援機関の名称・郵便番号・所在地が記載されています。
そして、登録支援機関を選ぶのであれば、極力自社に近い場所に所在地を構える機関を選んだ方がよいでしょう。
特定技能外国人に対する支援の中には、当人に直接会って行うタイプの支援内容があります。
例えば、各種保険や税金、住所変更に関する手続きなどが該当します。
定期面談の機会を設ける際は、やはり直接会っての対応となるため、登録支援機関がオフィスや工場などから遠いと、その分交通費等が発生してしまいます。
遠方の機関の場合、何らかの突発的な事情が発生し、急な対応が求められたケースについて、入管側から「どのように支援を行うのか」について確認される可能性もあります。
もちろん、距離に関係なく、適切な対応が可能な体制を整えている登録支援機関を探すのも一手です。
オンライン対応や人員の多さなど、それぞれの登録支援機関で対応策は用意されているはずなので、その点について詳しく確認して納得できれば問題はないでしょう。
しかし、スピーディーかつスムーズな対応を登録支援機関に求めるのであれば、やはり比較的近所にある登録支援機関を頼った方が賢明です。
その上で、支援方法に関しては、登録支援機関と自社との地理的な距離に関係なく、具体的な流れについて契約前にリサーチしておきたいところです。
支援業務の内容及びその実施方法
登録支援機関の主なミッションは、支援計画にもとづいて特定技能外国人への支援を実施することです。
支援業務の内訳は、大きく「義務的支援」・「任意的支援」に分かれており、当然ながら義務的支援はどの登録支援機関も行わなければなりません。
ただ、任意的支援に関しては義務ではないので、あくまでも「行うことが望ましい」支援という位置づけです。
そのため、登録支援機関によっては、任意的支援を行う旨をアピールしていないところもあります。
登録支援機関登録簿の中では「支援業務の内容及びその実施方法」の欄を確認することで、それぞれの登録支援機関がどこまで踏み込んで支援してくれるのか把握できます。
任意的支援は、義務的支援と比べて極端に支援内容に差があるとは限りません。
どちらかというと、義務的支援をより円滑に進めるための支援内容と言えるでしょう。
生活に必要な契約に係る支援の義務的支援・任意的支援を例にとると、以下のような違いが見られます。
任意的支援が可能な登録支援機関に委託することで、より特定技能外国人の立場に立ったサポートが期待できます。
特定技能外国人を重要な戦力として考えているなら、サポート体制が手厚い方を選ぶべきでしょう。
義務的支援について、より詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
▶【特定技能人材の雇用】登録支援機関の役割や選び方のポイント5つを解説!
支援業務を開始する予定年月日
登録支援機関登録簿に情報が載っている登録支援機関は、そのすべてが現時点で支援を行っているとは限りません。
登録だけは済ませているものの、実際に支援業務を行っていない機関も多いのです。
当然、支援を受けるなら実績が豊富な機関を選びたいところです。
そこで、登録簿の一覧の中から「支援業務を開始する予定年月日」に注目することで、実際に支援を行っている機関かどうか確認する方法があります。
支援業務を開始する予定年月日の欄には、各登録支援機関の開始機関が、例えば「2022年10月1日」のように記されています。
記されている年月日が、登録支援機関登録簿の更新日よりも前であれば、過去に特定技能外国人のサポートを経験している可能性があります。
しかし、中には「登録簿の更新日より後の日付」が、支援業務を開始する予定年月日として記されている例も見られます。
こういった登録支援機関は、登録だけが完了していて、支援そのものは行っていないものと推察されます。
相談に応じる体制の概要(対応可能言語)
登録支援機関には、それぞれ得意分野があり、業種や職種・特定の国の人材に特化しているケースは珍しくありません。
対応可能言語もその一つで、例えば英語だけに対応していれば問題ないわけではなく、状況によっては複数の国の言語に対応できる機関の方が頼りになるでしょう。
特に、中韓・東南アジア諸国の言語に精通している登録支援機関を選ぶことは、幅広い人材を自社に呼び寄せる上で重要です。
タイ語・フィリピン語・ベトナム語・インドネシア語など、様々な言語で実績がある機関の方が、そうでない機関に比べて頼りやすいはずです。
逆に、これから雇用しようと考えている人材の出身国・母国語にフォーカスして、登録支援機関を選ぶ選択肢もあります。
いずれにせよ、特定技能外国人が理解できる言語に対応している登録支援機関を選ばなければ、外国人の支援に十分な対応ができないものと判断されるおそれがあるため、対応可能言語はしっかり確認しておきましょう。
登録支援機関の一覧確認後にチェックしたいこと
自社にふさわしい登録支援機関を絞り込む上で、登録支援機関登録簿の情報は役に立つはずです。
しかし、一覧の中に選考に必要な情報のすべてが記されているわけではないので、あくまでも住所や対応可能言語などが把握できるに過ぎません。
マッチする登録支援機関を選ぶためには、そこからもう少し掘り下げて考えることが大切です。
以下、検討事項をいくつかご紹介します。
協議会加入義務の確認
特定技能の分野は多岐にわたり、登録支援機関が対応できる分野もまた異なります。
そして、分野によっては「協議会」への参加が義務付けられている場合があり、義務がある分野の登録支援機関は、それぞれの分野に応じて協議会に加入していなければなりません。
一例として、飲食料品製造業分野・外食業分野は「食品産業特定技能協議会」に加入しなければなりません。
よって、登録支援機関を探す場合は、当たりをつけた機関の担当者に協議会加入の有無を事前に確認しておくことが大切です。
製造業の協議会について、より詳しい情報を知りたい方は、以下の記事もおすすめです。
▶【特定技能】製造業(製造3分野)の協議会とは|概要・入会手続き等を解説
費用感
登録支援機関にサポートを委託する場合、支援委託手数料を支払わなければなりません。
具体的な金額は機関によって異なり、月額制なのかスポット払いなのかもプラン次第です。
相場観は少しずつ形成されているものの、特定技能自体が比較的新しく登場した在留資格ということもあって、はっきりとした価格帯は存在しません。
登録支援機関に支払う費用以外にも、給与・福利厚生などのランニングコストは発生するため、自社にとって無理のない出費で委託できる機関を選びたいところです。
ただし、安価であればよいという話ではなく、金額の安さだけで登録支援機関を選ぶのも問題です。
コストが少ないということは、それだけ支援の内容も限定されるおそれがあるため、何をしたらどれだけ料金がかかるのか、事前に確認を入れましょう。
万一、義務的支援が不十分だった場合、特定技能外国人の受入れを停止せざるを得ない状況に追い込まれる可能性もあります。
費用だけに目を向けるのではなく、自社のニーズにマッチしている機関を頼りましょう。
登録支援機関に支払う費用について、より詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
▶ 登録支援機関に支払う費用|特定技能外国人を雇うなら押さえておこう!
担当者
実際に担当者として一緒に汗をかいてくれる人の存在も、登録支援機関を選ぶ上で重要なポイントです。
多くの登録支援機関には、支援責任者と支援担当者がいて、特定技能外国人の雇用をサポートしてくれます。
支援責任者・支援担当者は、必ずしも正規雇用者でなければならない決まりはありませんが、対応力を求めるのであれば正規雇用の人材を選びましょう。
仮に、アルバイト人材が担当者になった場合、休みの日に連絡がつくケースはまず考えにくいからです。
また、正規雇用者であったとしても、やり取りを進める上での相性が問題になることは十分考えられます。
組織全体の考え方・方向性・理念など、自社が共感できる考え方の機関を選ぶことで、ミスマッチのリスクを減らすことにつながるでしょう。
登録支援機関の一覧から見極めたい「3つのタイプ」
登録支援機関登録簿に記載されている情報の一覧・組織の名称について、ただ眺めているだけでは、なかなかお目当ての機関に注目するのは難しいかもしれません。
そこで、大ざっぱに登録支援機関を3タイプに分けて把握するようにすると、自社に合った登録支援機関を見つけやすいでしょう。
監理団体(技能実習)
一部分野を除き、技能実習2号を良好に修了した人材は、無試験での特定技能移行が可能です。
監理団体が登録支援機関としても実績がある場合、技能実習生からの移行という形で、安定した人材の確保が期待できます。
実績十分であり、実習生・受入企業とのコミュニケーションも円滑である監理団体なら、登録支援機関としても安心度は高いでしょう。
これまで自社で外国人材を受入れたことがなく、企業側の意向を反映したサポートを求めているのであれば、監理団体としての活動実績がある登録支援機関を選ぶメリットは大きいはずです。
行政書士事務所等
行政書士・社会保険労務士といった士業の事務所や、個人のキャリアコンサルタント、NPO法人なども、登録支援機関になることが可能です。
コンプライアンスの観点から、安心できるサポートを望んでいる企業は、行政書士事務所等に依頼するのも一手でしょう。
人材紹介会社
特定技能人材に限らず、様々な外国人材を紹介している人材紹介会社は、登録支援機関としても強みを持ちます。
優秀な人材を集めるノウハウを持っているため、クライアントの事情を把握した上で、必ずしも特定技能人材に偏らない提案が可能です。
もちろん、特定技能人材のメリットを最大限生かした提案も期待できるため、企業側としては心強いところです。
まとめ
登録支援機関を選ぶにあたり、登録支援機関登録簿の情報一覧を見てみると、選択肢は数多く存在することが分かります。
しかし、その中から自社と相性が良い機関を選ぶためには、自社が求める条件を正確に把握する必要があるでしょう。
登録支援機関登録簿に記載されている内容を確認するだけでも、大まかに当たりをつけることはできます。
登録支援機関の実績や特徴・コストなど、複数の観点から情報を見極めましょう。