在留資格

ファクトリーラボ株式会社の代表

山本 陽平

公開日

January 11, 2023

更新日

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就労ビザと特定技能ビザの違い|在留期間・要件・業務内容など

目次

外国人が日本で働く際の就労ビザは、教授・介護・特定技能・技人国など様々な種類があります。

しかし、一般的に就労ビザについては「技術・人文知識・国際業務ビザ」と考えられています。

外国人の就労ビザに関する比較的最近のトピックとしては、2019年に特定技能ビザが新設されたことがあげられます。

そのため、特定技能ビザと就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)の違いがよく理解できず、外国人材の採用に踏み切れない企業も少なくありません。

この記事では、そんな就労ビザと特定技能ビザの違いについて、在留期間・要件・業務内容など複数の観点から違いを解説します。

就労ビザおよび特定技能ビザの概要

外国人が就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)・特定技能ビザを取得する際は、所定の条件を満たしていることが必要です。

以下、就労ビザと特定技能ビザの概要をご紹介します。

就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)

「技術・人文知識・国際業務」ビザは、事務職、専門職やエンジニアなど、いわゆるホワイトカラーの外国人が取得できるビザです。

具体的には、以下のような業務に従事する外国人を受入れるために設けられています。

① 理学・工学その他の自然科学の分野に属する技術が必要な業務(技術)
② 法律学・経済学・社会学その他の人文科学の分野に属する知識が必要な業務(人文知識)
③ 外国の文化に基盤を有する思考、もしくは感受性を必要とする業務(国際業務)

また、上記の業務例は、概ね以下の通りです。

技術・エンジニア(情報工学、建築等)
・各種機械等の設計、開発
・航空機の整備
・システム設計、解析
・自動車技術開発
・データベース構築
人文知識・輸出入や販売管理にかかわるマーケティング関連業務
・経理、人事、総務、法務などバックオフィス業務
・母国企業との業務取引にかかるコンサルティング
・営業も含まれる場合あり
国際業務・語学学校の講師
・翻訳や通訳
・商品開発や企画
・デザイナー
・貿易関連業務

技術・人文知識・国際業務について詳しく知りたい方はこちらもご覧ください

在留資格「技術・人文知識・国際業務」とは|要件や申請の流れ・注意点も解説

特定技能ビザ

特定技能ビザは、日本国内で人手不足が深刻な分野において、一定の専門性・技能を持つ即戦力外国人の受入れを認めているビザです。

特定技能の種類は1号と2号に分かれていて、それぞれ以下の分野が対象となります。

特定技能1号
・介護
・ビルクリーニング
・建設
・素形材、産業機械、電気電子情報関連製造業
・造船、舶用工業
・自動車整備
・航空
・宿泊
・農業
・漁業
・飲食料品製造業
・外食業
特定技能2号
・建設
・造船、舶用工業

出入国在留管理庁の資料によると、2022年6月時点で、特定技能2号在留外国人の数は1名となっています。

よって、特定技能ビザで日本に在留している外国人のほとんどは、基本的に特定技能1号と考えて差し支えないでしょう

特定技能の関連記事も併せて読みたい方は、ぜひ下記の記事をご覧ください。

特定技能外国人の受け入れ費用は?負担を抑える方法と注意点も解説

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その他の就労ビザ

参考情報として、技術・人文知識・国際業務ビザ以外の就労ビザについても、いくつかご紹介します。

ただし、就労ビザとしてはやや例外的な位置づけで考えて問題ありません。

就労ビザ
業務例
教授
大学教授、助教授、助手など
芸術
作詞作曲家、画家、彫刻家など
宗教
僧侶、司祭、宗教家など
報道
新聞記者、報道カメラマン、アナウンサーなど
経営・管理
経営者、役員など
法律・会計業務
日本の資格を有する弁護士、司法書士、税理士など
医療
日本の資格を有する医師、薬剤師、看護師など
研究
研究所等の研究員、調査員など
教育
小・中・高の教員など
介護
介護福祉士の資格を有する介護士など
興行
演奏家、俳優、ダンサーなど
技能
外国料理の調理師、パイロット、ソムリエなど

※参照元:外務省|ビザ 就労や長期滞在を目的とする場合

就労ビザと特定技能ビザの違いについて

就労ビザと特定技能ビザは、そもそもの成り立ちからして異なりますが、細かい部分でも違いが見られます。

以下、「技術・人文知識・国際業務」と「特定技能1号」にフォーカスして、様々な角度から違いについて解説します。

在留期間

就労ビザと特定技能ビザの大きな違いとして、在留期間があげられます。

以下の表の通り、在留できる期間の上限も、1度の申請で与えられる在留期間にも違いが見られます。

就労ビザ(技術・人文知識・国際業務) ・3ヶ月、1年、3年、5年のいずれかの期間で在留期間が与えられる
・期間更新については回数制限がなく、実質的に在留期間は無制限と言える
特定技能ビザ(1号) ・4ヶ月、6ヶ月、1年のいずれかの期間で在留期間が与えられる
・在留できる期間は最大で5年間

ただし、特定技能2号に関しては、ビザを更新する限り、期間の上限なく日本に在留できるのが特徴です。

将来的には、特定技能1号から2号へのビザ変更ニーズが高まるものと予想されます。

業務内容および現場労働の有無

業務内容・現場労働の有無に関しても、それぞれのビザで違いが見られます。

日本人労働者と比較すると、外国人材に多種多様な仕事を経験してもらうような、いわゆる「ゼネラリスト」的な配置は難しいでしょう。

就労ビザ(技術・人文知識・国際業務) ・就労先は、大学、専門学校等で学んだ専門的な技術、知識、実務経験などを活かせる職場に限られる
・これまでのキャリアにマッチしない職場での就労は、ビザ取得に支障が出る可能性がある
・ブルーカラー的な現場作業、単純作業については認められない
特定技能ビザ(1号) ・各分野、業務区分で定められている業務にのみ就ける
・同じ就労場所で働く日本人が従事する業務につき、付随的に従事することは認められる
※(漁業に従事する外国人材が、自家生産物の運搬・陳列・販売に携わるケースなど)

いずれのビザも、就労するジャンルは細かく定められていますが、特定技能の方が業務内容にやや柔軟性が見られます。

一方で、就労ビザの方が、認められる職種そのものの幅は広いものと推察されます。

例えば、バックオフィス部門で働くにあたり、母国で幅広い経験を積んでいる人材なら、キャリアに応じて経理・総務・労務など複数の選択肢が選べる可能性があります。

もちろん、あまりにも畑違いのジャンルで働くことは難しいでしょうし、単純労働は認められないので、配置に関しては注意したいところです。

試験の有無

特定技能ビザは、全分野共通の日本語試験と、各分野で定められている技能試験をクリアしなければ取得できません。

日本語に関しては、日常的に用いられる基本的な日本語が理解できれば合格できるレベルとされますが、介護分野は介護日本語評価試験に合格する必要もあり、決してかんたんな話ではありません。

これに対して就労ビザは、試験を受ける必要はないものの、これまで培ってきた実務経験や学歴等で要件を満たせるかどうかが決まってきます。

具体的には、以下のように要件が明確化されています。

技術・人文知識 ・従事しようとする業務につき、必要な技術または知識に関連する科目を専攻して、大学を卒業していること
※(日本・海外を問わず、同等以上の教育を受けた場合も含む)
 
・従事しようとする業務につき、必要な技術または知識に関連する科目を専攻して、日本の専修学校の専門課程を修了していること
※(専門士、または高度専門士の称号が付与された人のみ)
 
・10年以上の実務経験があること
※(大学等において関連科目を専攻した期間も含まれる)
※(「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に10年従事したことを求めるわけではなく、関連する業務に従事した期間も実務経験に含まれる)
国際業務
・翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝または海外取引業務、服飾もしくは室内装飾にかかるデザイン、商品開発、その他これらに類似する業務に従事すること
 
・従事しようとする業務につき、3年以上の実務経験があること
※(必ずしも同じ業務の実務経験である必要はないが、関連する業務でなければならない)
※(大学を卒業した人が、翻訳、通訳、語学の指導に従事する場合は実務経験不要)

まとめると、特定技能ビザは試験によって取得でき、就労ビザはこれまでの学歴・キャリアが評価されることによって取得できるビザと言えるでしょう。

ちなみに、各分野・業務区分に対応する技能実習2号を良好に終了した外国人に関しては、特定技能の技能試験が免除されます。

家族と一緒に暮らせるかどうか

家族帯同に関しても、就労ビザと特定技能ではルールが異なります。

大まかにまとめると、以下のような違いが見られます。

就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)
・家族帯同は基本的に可能
 
・以下の条件を満たしている「配偶者」と「子」が対象
① 扶養する側に扶養の意思があり、扶養能力を有していること
② 扶養を受ける側の配偶者、子供が扶養を受ける必要がある、または扶養を受けていること
 
・養子や成人も対象となるが、内縁関係、同性婚は認められない
特定技能ビザ(1号)
・原則として家族帯同は不可
 
・特定技能1号の在留資格に変更する前から、すでに身分関係が成立している配偶者や子は認められる
※(当人および配偶者・子がすでに中長期滞在者として在留している)
→配偶者・子:「特定活動」ビザになる
 
・特定技能外国人同士の間に生まれた子も帯同が認められる
→配偶者・子:「特定活動」ビザの取得ができる

 なお、特定技能2号に関しては、家族帯同が認められます。

また、就労ビザ取得者の家族が、家族滞在ビザで日本に在留している間は、資格外活動許可を取得することにより、週28時間以内のアルバイトに従事可能です。

永住の可能性

日本で働く外国人材が、将来的に継続して日本で暮らしたいと考える場合、永住ビザの申請を視野に入れることになるでしょう。

よって、永住したい場合は法律上の要件を満たす必要があり、具体的な要件は以下の通りです。

① 素行が善良であること
・法律を順守している
・社会的に非難されるような生活を営んでいない 

② 独立して生計を立てられる資産、技能があること
・将来的に安定して生活できると見込まれる
・公共の負担とならない 

③ 永住が日本の利益になると認められる人材であること
・原則として引き続き「10年以上」日本に在留していること
※(上記期間のうち、就労資格または居住資格を持って、引き続き5年以上在留していること)
※(「技能実習」・「特定技能1号」はノーカウント)
・刑罰に服しておらず、医療保険等の支払い漏れなどがないこと  など

就労ビザと特定技能ビザは、長ければ数年間日本に滞在できるビザではあるものの、永住の可能性に関しては以下のような差が見られます。

就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)
・就労ビザで10年以上の在留をしていれば、永住ビザの申請が可能
特定技能ビザ(1号)
・永住の対象となる就労資格としてカウントされない
・技能実習と合わせて10年間日本に在留していたとしても、永住の対象とはならない

技能実習と特定技能に関しては、残念ながら永住の対象となる就労資格には含まれていません。

よって、将来的に永住を目指すのであれば、特定技能1号は不利と言わざるを得ないのが実情です。

ただし、まったくルートがないわけではなく、特定技能2号に移行すれば永住の可能性が見えてきます。

また、介護分野の特定技能1号に関しては、介護の仕事を3年以上続けた後で介護福祉士の資格を取得することにより、在留資格「介護」への移行ができます。

その他の選択肢としては、特定技能1号で在留中に通信制の大学等へ進学したり、日本語能力試験で高いスコアを出して技能実習生等への通訳業務の経験を積んだりする方法が考えられます。

最終的に、十分なキャリアを積むことができれば、就労ビザへの切り替えが認められる可能性があります。

就労ビザと特定技能ビザに共通していること

就労ビザと特定技能ビザは、何かと違いが多いビザですが、それぞれに共通している部分もあります。

以下、共通点をいくつかご紹介します。

転職の可否

就労ビザも特定技能ビザも、基本的に転職が認められる在留資格です。

この点は、企業が採用を検討する上で重要な部分なので、まず押さえておきたい共通点と言えます。

特定技能1号に関しては、介護を除いて日本語能力の要件が共通しているため、転職先の分野・業務区分における技能面での要件を満たしていれば、その範囲内で転職が可能です。

ただし、転職する度に在留資格の変更が必要です

就労ビザに関しては、所属機関の変更の届出を行うだけで問題なく、ビザそのものの切り替えを都度必要としません。

しかし、転職先の業務内容が、就労ビザの要件に合致しないと審査で判断された場合、ビザの更新が認められないおそれがあります。

給与の水準

就労ビザ・特定技能ビザは、日本人と同等以上の給与水準で雇用契約を結ぶことが求められます。

いわゆる低賃金労働者としての雇用は検討できず、その点において2種類のビザに違いはありません。

基本的には、同じ職場で同様の業務に従事する日本人の報酬が基準となりますが、他の企業の賃金も参考情報として判断されます。

よって、業界全体の平均賃金よりも低い水準であれば、ビザが取得できない可能性があります。

まとめ

外国人労働者を自社で採用する際は、就労ビザと特定技能ビザの違いに注目しつつ、採用計画を立てる必要があります。

それぞれの違いを把握した上で、自社のニーズに合う人材を見つけるのは、決してかんたんなことではありません。

外国人の採用に悩む経営者様・企業担当者様は、ノウハウ豊富なFactory labの人材紹介サービスがお役に立ちます。

お急ぎの場合はお電話でもご相談を承りますので、お気軽にお問い合わせください。

ファクトリーラボ株式会社の代表

代表取締役社長

山本 陽平

1990年東京生まれ。2013年上智大学総合人間科学部卒業後、東証1部上場の資産運用会社に入社しコーポレート部門に配属。2017年、外国人採用支援及び技能実習生の推進をしているスタートアップに参画。事業部長として特定技能、技能実習、技術・人文知識・国際業務の人材紹介や派遣事業の展開及び支援を取り仕切る。人的な課題、採用や定着に大きなペインを抱えた製造業に着目し、一貫したソリューションを提供することを目的として2022年にファクトリーラボを設立し代表に就任。