在留資格

ファクトリーラボ株式会社の代表

山本 陽平

公開日

April 6, 2023

更新日

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在留資格オンライン申請が開始!企業のメリットや注意点を解説

目次

令和4年(2022年)3月から、マイナンバーカードがある外国人は、本人による在留資格オンライン申請ができるようになりました。

外国人本人が、自宅からオンラインによる在留資格の申請ができるようになると、企業・弁護士・行政書士が申請を行う手間が省けます。

もちろん、外国人材にとっては申請が楽になるわけですが、企業側にどのような利点があるのか、具体的にイメージできない企業担当者の方も多いのではないでしょうか。

この記事では、在留資格オンライン申請について、企業のメリット・注意点にスポットを当てて解説します。

在留資格オンライン申請とは

在留資格の申請につき、オンラインで行うことを、在留資格オンライン申請といいます。

ただ、誰でも自由に申請ができるわけではありませんから、まずは概要や基本的なルールについて理解を深めていきましょう。

「在留資格の取得許可申請」に関する基本的なルール

以下の条件に該当する外国人が「60日以上」日本で暮らす場合、在留資格の取得許可申請が必要です。

○日本国籍を離脱または喪失した人
○日本で生まれた外国人の赤ちゃん
○その他の事由によって、上陸の手続きなく日本に在留する外国人

原則、在留資格の手続きは、在留資格を申請する本人がすべて行うのが基本です。

しかし、例外として「代理人」・「取次者」に関しては、手続きの代行またはサポートが可能です。

代理人になれる人は、厳密に言うと在留資格によって異なりますが、大まかには以下のような人が対象です。

○配偶者
○親族
○当該外国人を雇用しようとしている企業・団体の職員
○当該外国人が活動するため所属しようとしている団体の職員

代理人が行った行為は、当該外国人本人が行った行為になるため、対象者となれる人に制限があるものと考えると分かりやすいでしょう。

次に取次者についてですが、こちらは「申請取次の資格」を取得した人が対象となります。

代表的な例としては、弁護士・行政書士に加えて、地方出入国在留管理局長へ申請等取次の申出を行い適当と認められた「受入機関等」・「旅行業者」・「公益法人」の職員が該当します。

なお、取次者は代理人ではありませんから、権限は限定されています。

基本的には、各種書類・資料の作成・提出・提示・受領といった仕事しか認められておらず、申請書類を作成した場合は本人または代理人から署名をもらわなければなりません。

もし、申請書類に誤りが見つかった場合でも、取次者はその場で訂正できません

このような制限があることから、書面での申請を行う場合、申請手続きの代行者にとって少なからず負担が生じます。

在留資格オンライン申請の概要

外国人の日本在留に関する手続きは、2022年3月以前もオンラインで申請することができる状況でした。

しかし、在留申請オンラインシステムの利用者は、外国人を適正に雇用している所属機関の職員等に限定されていたことから、所属機関のない外国人本人はオンライン申請の対象外だったのです。

そのような事情もあり、利便性の向上・窓口の混雑緩和といった観点から、オンラインシステムを利用できる対象者が拡大しました。

具体的には、これまで認められていた利用者も含め、以下の人が利用できます。

①     申請人から依頼を受けた所属機関の職員
②     弁護士・行政書士
③     公益法人の職員および登録支援機関の職員
④     外国人本人
⑤     法定代理人
⑥     親族(配偶者、子、父または母)

オンライン申請の対象となる在留資格は、2022年3月から新たに「日本人の配偶者等」・「永住者の配偶者等」・「定住者」が追加されたことにより、「外交」・「短期滞在」を除くすべての在留資格が対象となっています。

また、対象となる手続きは、以下の7つです。

① 在留資格認定証明書交付申請
② 在留資格変更許可申請
③ 在留期間更新許可申請
④ 在留資格取得許可申請
⑤ 就労資格証明書交付申請
⑥ 再入国許可申請
⑦ 資格外活動許可申請

※(上記のうち、⑥・⑦に関しては、②~④と同時に行う場合に限られる)

ただし、この7つの手続きに関しては、先にあげた「利用できる人」がすべてを行えるわけではありません。

利用者ごとに申請可能な手続きが決まっており、手続きができる人でも所定の条件を満たしていなければならないケースもあるため、十分注意してください。

 以下、イレギュラーケースについて、主なものをご紹介します。

 外国人本人のイレギュラーケース

外国人本人が、オンライン申請を行うにあたり注意しておきたいのは、本人が「マイナンバーカード」を所持していなければならない点です。

具体的には、

○在留資格認定証明書交付申請
○在留資格取得許可申請

上記申請のためマイナンバーカードを用意することとなり、申請する前に入管への問い合わせも必要です。

親族(法定代理人を除く)のイレギュラーケース

配偶者・子・父または母といった親族は、以下の手続きにつき、オンライン申請ができません。

○就労資格証明書交付申請
○資格外活動許可申請

 次に、在留資格認定証明書交付申請に関しては、一部制限が設けられています。

具体的には、以下の在留資格を希望する人の配偶者・子・父または母が、日本に居住している場合に限り申請ができます。 

利用可能な申請種別および在留資格まとめ表
※参照元:出入国在留管理庁|利用可能な申請種別および在留資格(対象範囲)

最後に、

○在留資格変更許可申請
○在留期間更新許可申請
○在留資格取得許可申請
○再入国許可申請

上記の手続きに関しては、手続きの対象者が、

○16歳未満の場合
○疾病その他の事由により自ら申請できない場合

 に限り、申請できることも押さえておきましょう。

在留資格オンライン申請を行うメリットについて

在留資格オンライン申請は、外国人本人はもちろんのこと、本人に代わって手続きを行う人・企業担当者にとってもメリットがあります。

以下、詳細について解説します。

外国人本人にとってのメリット

在留資格の申請を窓口から行う場合、申請・受取というタイミングで2回入管を訪れる必要があり、これまで多忙な人にとっては大きな負担となっていました。

しかし、在留資格オンライン申請ができるようになったことで、これまで入管の窓口まで足を運ばなければならなかった手間が省けます。

オンライン申請を利用すれば、一度も入管に行くことなく手続きが完了します。

また、在留カードは郵送という形で受け取れるため、受取時に備えて時間を設ける必要もありません。

在留申請オンラインシステムの利用には料金がかからないため、誰でも安心して利用できます。

また、オンラインなら時間を気にすることなく、24時間いつでも自分のタイミングで申請作業を進められるでしょう。

わざわざ平日を狙って入管に行かなくても、土日祝も含めた休日に手続きができるのは、とても便利な仕組みと言えます。

企業側のメリットやその変化

外国人本人によるオンライン申請が認められていなかったとき、外国人労働者を雇用している企業側(所属機関)が本人に代わってオンライン申請を行う場合、企業担当者にもメリットがありました。

オフィスなどの環境から、当該外国人のためにオンライン申請ができますから、時間的な拘束を受けずに手続きを進められるのです。

ただし、職員は取次者としての承認を受けている、または承認要件を満たしている必要がありました

承認を受けようとする職員は、以下の条件をすべて満たしていなければならないのです。

① 過去に入管法に違反する行為を行っておらず、その他外国人の入国・在留管理上申請等の取次を承認する上で問題となる行為に手を染めていないこと
② 承認を受けようとする職員が所属する機関も、同じく信用できる機関であること
③ 出入国在留管理行政に関する研修会等に参加した経歴があるなど、外国人の入国・在留手続きに関する知識を有していること
④ 旅行業者の職員に関しては、所属する企業が外国旅行にかかる旅行業務につき取扱可能であること

この点につき、2022年3月からは外国人本人による申請が可能になりますから、外国人本人に申請方法をレクチャーすることで、担当職員の手間が大幅に削減できるでしょう。

所定のマニュアル等を自社で作成することにより、外国人材の申請をサポートする体制を整えられれば、職員による申請作業の手間が省けるはずです。

弁護士・行政書士とのやり取りはどうなる?

自社の職員が手続きを行わず、弁護士や行政書士に代行をお願いしていた場合、今後のやり取りはどうすべきなのでしょうか。

この点に関しては、企業および外国人本人の意識によって、選択肢が変わってきます。

これまで通り、外注した方が本人・企業ともに手間が省けると判断したのであれば、引き続き手続きを代行してもらった方が効率的でしょう。

しかし、本人が滞りなく手続きできる状況なら、あえて弁護士・行政書士に依頼するコストを節約した方が経営上有利かもしれません。

また、詳しくは後述しますが、外国人本人によるオンライン申請には、諸々の準備が必要になってきます。

準備にかかる負担と、自宅で申請できるメリットをしっかり説明した上で、外国人本人に納得してもらう必要があります。

最終的に、どのような形で申請の体制を整えるのかについては、外国人材を雇用する企業それぞれで話し合うべきトピックとなるでしょう。

かんたんに解決しようとせず、長い目で見て外国人材の負担にならない方法を検討したいところです。

在留資格オンライン申請を行う上での注意点

外国人本人が、在留資格オンライン申請を進める前には、あらかじめ準備すべきことがあります。

以下、申請にあたっての注意点をいくつかご紹介します。

必要書類は省略できない

在留資格オンライン申請においては、申請書類の記入の必要はありません。

そのため、申請時の必要事項は、画面上で直接入力することになります。

ただし、必要書類に関しては、これまでと同じように集めておかなければなりません。

集めた書類はPDF化してアップロードすることになるため、必要書類そのものを省略できるわけではない点に注意しましょう。

また、証明写真に関しては、以下の通りオンライン申請にあたり規格が決まっています。

○ファイルサイズ50キロバイト以下
○拡張子は「Jpeg」または「jpg」
○申請人本人だけが写っている
○帽子をかぶらず正面を向いている
○背景がない
○影がなく鮮明である
○申請の日の前から3か月以内に撮影されている

 ※参照元:出入国在留管理庁|オンラインでの申請手続に関するQ&A

その他、窓口に提出する写真の規格に準じていることが求められます。

常識的にありえない話ではありますが、例えばプリクラのような加工写真での申請や、画像処理による美白処理などを施した写真は使えませんから、念のため外国人本人にも伝えておきましょう。

ID取得のためにはマイナンバーカードが必要

オンラインで申請を進めるためには、まず「在留管理オンラインシステム」にアクセスして、利用者登録を行う必要があります。

そのためには、外国人本人が自分のマイナンバーカードを取得しなければならないので、企業が外国人労働者に申請のサポートを行えるようにしたいところです。

日本で住民票が作成されてから2~3週間が経過すると、申請書が届きますから、基本的にはその申請書を使ってマイナンバーカードの申請をすることになります。

交付申請書にはQRコードが記載されているので、それをスマホで読み取って申請ページを開き、手続きを進めていきます。

申請ページで要求される事項を入力後、顔写真登録が必要になるので、あらかじめスマホで顔写真を取っておくとスムーズです。

その他、パソコンや郵送・一部の証明写真機による申請などができますから、企業は外国人材が取り組みやすい方法についてアドバイスできるとベターです。

申請後、交付通知書というハガキが自宅に届いたら、そのハガキを持って市区町村の窓口でカードを受け取ります。

各種備品の用意も必要になりますから、マイナンバーカード発行と並行して、企業は準備のサポートに回りましょう。

オンライン申請における備品等の準備

在留資格オンライン申請にあたっては、マイナンバーカードに加えて、次の備品等を準備する必要があります。

○在留カード
○パソコン
○ICカードリーダライタ
○JPKIクライアントソフト

申請はスマホではできないため、パソコンを使います。

ICカードリーダライタは、マイナンバーに対応しているものであれば、所定のモデルはないので自由に選べます。

JPKIクライアントソフトとは、公的個人認証サービスを利用した電子申請を行う際、マイナンバーカードに搭載された電子証明書を使用して署名を付与するのに用いるソフトウェアのことです。

ダウンロード自体は無料なので、公的個人認証サービスのポータルサイトからダウンロードしましょう。

まとめ

在留資格オンライン申請ができる人が増え、外国人本人でも申請が可能になったことで、企業・外国人労働者ともに窓口対応の負担が軽減されました。

しかし、申請に必要な準備・外国人材への説明など、やるべきことをきちんとやらないと、かえって手間が増えてしまうことも予想されます。

これまで弁護士・行政書士に手続きを依頼していた企業にとっては、必ずしも外国人本人の申請に切り替えることが最適解とは限りません。

外国人本人での申請を急がず、自社の置かれた状況に応じて、少しずつ準備を進めていくことをおすすめします。

ファクトリーラボ株式会社の代表

代表取締役社長

山本 陽平

1990年東京生まれ。2013年上智大学総合人間科学部卒業後、東証1部上場の資産運用会社に入社しコーポレート部門に配属。2017年、外国人採用支援及び技能実習生の推進をしているスタートアップに参画。事業部長として特定技能、技能実習、技術・人文知識・国際業務の人材紹介や派遣事業の展開及び支援を取り仕切る。人的な課題、採用や定着に大きなペインを抱えた製造業に着目し、一貫したソリューションを提供することを目的として2022年にファクトリーラボを設立し代表に就任。