コラム・取材

ファクトリーラボ株式会社の代表

山本 陽平

公開日

March 14, 2023

更新日

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【現地ルポ】タイ人エンジニアの採用・就職事情 〜現地大学のジョブフェアに潜入〜

目次

「タイ人のエンジニアを採用したい」「ベトナム人社員からタイ人社員への切り替えを検討しているがどうですか」といったお問合せが最近弊社に多く寄せられております。

弊社のグループ会社である佐竹製作所の山形工場では特定技能、就労ビザ合わせて50名以上のタイ人従業員の方に働いていただいており、現在もタイ現地から社員を呼び寄せており、

弊社でもお客様にタイ人の優秀なエンジニアや特定技能の方を日本国内やタイ現地から呼び寄せをして、採用いただいております。

今回はそんなタイ現地のバンコクに校舎を構える泰日工業大学にて、日本企業やタイの日系企業によるタイ人エンジニアのリクルート促進のためのジョブフェアが開催されるということで、実際に参加して出店している企業や参加している学生やエンジニアの方々にタイでの採用事情、そして就職事情について聞いてきました。

泰日工業大学の在校生、卒業生にはどのような人材がいるのか

泰日工業大学はタイの首都バンコクに校舎を構え、「学問を発展させ、産業の振興に寄与し、経済・社会に貢献する」を理念に2007年に開学されました。タイの日系企業のニーズに対応して日本的ものづくり思想のもと、主に自動車、電気・電子、ICT、生産技術の分野の教育と日本語および英語でのコミュニケーション能力の教育を行なっています。

卒業生の3割が製造業に就職し、内訳としては自動車、素材、電気・精密機器、機械の順の順です。

また、日系企業への就職は全体の38%で日系取引企業を含めると54%となります。

近年ではタイ国内の企業のみならず、日本にも約150人以上新卒者を輩出しております。

泰日工業大学卒業生の進路統計結果
泰日工業大学卒業生の進路統計結果

参加した日本企業に聞いた「どうしてタイ人エンジニアを現地から採用するのか」

今回のジョブフェアにはタイ現地の日系企業の他に、日本の企業の採用担当者がタイを訪れて採用活動をしているという企業も多数ありました。

そうした日本から今回タイのジョブフェアに参加した企業の採用担当者たちに話を聞いてみました。

・「もともとタイから技能実習生を受けいれており、タイ人従業員がすでに多く会社にいるためエンジニアも検討していたが、タイ人のエンジニアは日本国内にはまだまだ少なく、現地でのジョブフェアなどを活用して優秀な方を採用できるよう毎年参加している」 

・「将来的にタイに現地法人を設立することを予定しており、その際に現地での幹部候補となってくれる人材をまずは日本本社で採用するため参加している」

・「東南アジアで日本のモノづくりや日本語教育に特化した工業系の大学が少ない中で、それに特化した専門性や言語を学んだ学生を採用できることは、研修にかかるコストが少なくて済むため、今回参加に至った」
 ...など

参加した日本の企業の多くは、タイ現地に工場などの拠点があり将来的にそこで幹部候補となってもらう人材を日本の本社で研修し、数年間の就労の後タイ現地拠点戻って働いてもらうことを目的としているパターンや、

優秀な新卒エンジニアを採用したい日本企業で、東南アジアの国々で大学教育に日本企業、日系企業向けの高等教育を行なっている大学が少ないため、この泰日工業大学から毎年採用しているという企業がありました。

ジョブフェア当日の風景
ジョブフェア当日の風景

現地タイ人エンジニアの就職事情

今回のジョブフェアに参加したタイ人の就職活動中のエンジニアたちに、就職事情についてきいてみました。

参加者の大半はタイの日系企業もしくは、日本に行って働くことを第一志望としていますが、まずタイの日系企業はタイのローカル企業に比べ給与水準が高いこともあり、人気で倍率が高く、またその中でも良い条件で働くためには、通訳ができるレベル語学力があるなど特殊なスキルがあるか、日本やタイの日系企業での就業経験が必要になります。

そのため多くのエンジニアは自身のキャリアアップのため日本に渡って働くことを希望しますが、実際にタイに住むエンジニアたちが日本の求人情報を十分に得るためことは難しく、

多額の手数料を送り出し機関や、現地のリクルート会社などのブローカーに支払うことで仕事を紹介してもらう方も多くいます。

エンジニアの多くは多額の手数料を敬遠して、なんとか自分たちで日本の求人情報をキャッチアップしようとしていますが、多くの方がうまく行っていないことが現状です。

(最近ブローカーに多額の手数料を払って日本の会社への就職を斡旋してもらっても、結局ビザが降りず返金もなかったというトラブルがタイのニュースで報道されております)

私たちファクトリーラボは佐竹グループのタイ現地法人と協力を図りながらそうした、タイのエンジニアの方達に向けて情報発信を拡大することで、一人でも多くの優秀なエンジニアの方が日本で働くチャンスを掴むためのサポートを実施しております。

当社のブース
弊社のブース

まとめ

今回、泰日工業大学が開催するジョブフェアに参加して、日本で働くことを希望する優秀なエンジニアがこんなに多くいるということに驚きました。こうした大学で日本のモノづくりをしっかりと学んだ優秀な学生を自社に採用するため、わざわざタイからエンジニアを呼び寄せている会社が多くあります。

一方で彼らが日本の求人情報をキャッチアップすることに苦労しているのかを感じさせられ、そうした困難さにつけこんで、現地のブローカーの多くは多額の手数料をとって彼らに仕事を斡旋している現状があります。

このような情報少なさによって、チャンスを得られない優秀なタイ人エンジニアを減らすとともに、日本の製造業に語学力と技術力を持った優秀な人材を多く紹介することで、日本のものづくりを活性化できるようファクトリーラボは日々情報発信を継続してまいります。

ファクトリーラボ株式会社の代表

代表取締役社長

山本 陽平

1990年東京生まれ。2013年上智大学総合人間科学部卒業後、東証1部上場の資産運用会社に入社しコーポレート部門に配属。2017年、外国人採用支援及び技能実習生の推進をしているスタートアップに参画。事業部長として特定技能、技能実習、技術・人文知識・国際業務の人材紹介や派遣事業の展開及び支援を取り仕切る。人的な課題、採用や定着に大きなペインを抱えた製造業に着目し、一貫したソリューションを提供することを目的として2022年にファクトリーラボを設立し代表に就任。