特定技能

ファクトリーラボ株式会社の代表

山本 陽平

公開日

January 30, 2024

更新日

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特定技能2号評価試験の新たな動きについて|製造業分野の状況も解説

目次

特定技能人材のニーズが国内で高まる中、政府は令和5年6月9日の閣議決定により、特定技能2号の対象分野を11分野に拡大すると決定しました。

その後、各分野で試験実施に向けた準備が進んでいますが、製造業分野では2023年10月から特定技能2号評価試験の申込受付を開始し、11月には国内全10会場で試験が行われました。

 この記事では、次第に具体的な動きを見せ始めた特定技能2号評価試験について、主に製造業分野にフォーカスしつつ解説します。

各分野における特定技能2号の取得要件

特定技能2号の取得に必要な業務・技能水準に関しては、どの分野でも一定のプロフェッショナル・マネジメント人材であることが求められるものと考えてよいでしょう。

ただし、分野によって詳細は異なるため、以下に大まかな「各分野における特定技能2号の取得要件」をまとめました。

分野
取得要件・留意点など
建設分野
<試験>
●建設分野特定技能2号評価試験
●技能検定1級 または 技能検定単一等級
 
<実務経験>
●建設現場で複数の建設技能者を指導しつつ作業に従事し、工程を管理する経験を積んでいること(班長経験)
●就業日数(職長+班長)が3年(勤務日数645日)以上であること
※(技能によって必要な日数に違いがあるため注意)
造船・舶用工業分野
<試験>
●ビルクリーニング分野特定技能2号評価試験
●技能検定1級
 
<実務経験>
●建築物における衛生的環境の確保に関する法律(昭和45年法律第20号)第2条第1項に規定する特定建築物の建築物内部の清掃
●同法第12条の2第1項第1号に規定する建築物清掃業若しくは同項第8号に規定する建築物環境衛生総合管理業の登録を受けた営業所が行う建築物(住宅を除く。)内部の清掃
上記について複数の作業員を指導しながら従事し、現場を管理する者としての実務経験が2年以上あること
ビルクリーニング
<試験>
●ビルクリーニング分野特定技能2号評価試験
●技能検定1級
 
<実務経験>
●建築物における衛生的環境の確保に関する法律(昭和45年法律第20号)第2条第1項に規定する特定建築物の建築物内部の清掃
●同法第12条の2第1項第1号に規定する建築物清掃業若しくは同項第8号に規定する建築物環境衛生総合管理業の登録を受けた営業所が行う建築物(住宅を除く。)内部の清掃
上記について複数の作業員を指導しながら従事し、現場を管理する者としての実務経験が2年以上あること
素形材・産業機械・
電気電子情報関連製造業
<試験>
【ルート1】
●ビジネス・キャリア検定3級
※(生産管理プランニング区分・生産管理オペレーション区分のいずれか)
●製造分野特定技能2号評価試験
※(機械金属加工区分・電気電子機器組立て区分・金属表面処理区分のいずれか)
上記両方に合格すること
【ルート2】
●技能検定1級
※(鋳造など18職種のいずれか)
 
<実務経験>
日本全国に拠点を持つ企業の、製造業の現場における3年以上の実務経験があること
自動車整備
<試験>
●自動車整備分野特定技能2号評価試験
●自動車整備士技能検定試験2級
上記いずれの試験に合格したかによって、実務経験の有無が変わる
 
<実務経験>
●自動車整備分野特定技能2号評価試験の合格者
道路運送車両法第 78 条第1項に基づく地方運輸局長の認証を受けた事業場で、3年以上の実務経験があること
●自動車整備士技能検定試験2級の合格者
実務経験は求められない
航空
<試験>
業務によって合格が必要な試験が異なる
●空港グランドハンドリング業務の場合
→航空分野特定技能2号評価試験
●航空機整備業務
→航空分野特定技能2号評価試験
→航空従事者技能証明
 
<実務経験>
●空港グランドハンドリング業務
→現場で技能者を指導しながら作業に従事した実務経験
●航空機整備業務
→航空機整備の現場において、専門的な知識・技量を要する作業を実施した3年以上の実務経験
宿泊
<試験>
宿泊分野特定技能2号評価試験
 
<実務経験>
宿泊施設において複数の従業員を指導しながら、フロント、企画広報、接客、レストランサービスなどの業務に2年以上従事していること
農業
<試験>
2号農業技能測定試験
※(耕種農業全般/畜産農業全般)
 
<実務経験>
●耕種・畜産農業の現場で複数の従業員を指導しながら作業に従事していること
●工程管理経験2年以上、現場での実務経験3年以上
漁業
<試験>
●2号漁業技能測定試験
※(漁業/養殖業)
●日本語能力試験
※(N3以上)
 
<実務経験>
●漁業
→漁船法(昭和 25 年法律第 178号)上の登録を受けた漁船において、操業の指揮監督者を補佐する者、または作業員を指導しながら作業に従事し作業工程を管理する者として、実務経験を2年以上積んでいること
●養殖業
→漁業法(昭和 24 年法律第 267号)及び内水面漁業の振興に関する法律(平成 26 年法律第 103 号)に基づき行われる養殖業の現場において、養殖の管理者を補佐する者、または作業員を指導しながら作業に従事し作業工程を管理する者として、実務経験を2年以上積んでいること
飲食料品製造業
<試験>
飲食料品製造業特定技能2号技能測定試験
 
<実務経験>
飲食料品製造業分野において、複数の従業員を指導しながら作業に従事し工程を管理する者として、2年以上の実務経験を要する
外食費
<試験>
●外食業特定技能2号技能測定試験
●日本語能力試験(N3以上)
 
<実務経験>
食品衛生法(昭和 22 年法律第 233号)の営業許可を受けた飲食店において、複数のアルバイト従業員や特定技能外国人等を指導・監督しながら接客を含む作業に従事し、店舗管理を補助する者(副店長、サブマネージャー等)として実務経験を2年間積んでいること

なお、介護分野の特定技能2号に関しては、在留資格「介護」の取得によって長期就労が可能となっているため、拡大分野に含まれておりません。

その他、特定技能人材の無期限雇用について幅広く知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

参考記事:特定技能人材は無期限で雇用できる?現状と将来について考察

製造分野特定技能2号評価試験の概要

先述した各分野の取得要件の中で、分野拡大前から特定技能2号試験が設けられていた建設、造船・舶用工業の2分野を除き、比較的早い動きを見せたのが製造業分野です。

2023年11月から全国10ヶ所で試験を実施しており、業界全体として「外国人材の早期かつ末永い活躍」を期待していることが見て取れます。

以下、特定技能人材の受験について詳しい情報を知りたい方向けに、実施要項や試験に関する疑問点などを解説します。

試験概要

製造分野特定技能2号評価試験の試験区分は、以下の全3区分となっています。

機械金属加工区分鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、金属プレス加工、鉄工、工場板金、仕上げ、プラスチック成形、機械検査、機械保全、電気機器組立て、塗装、溶接、工業包装
電気電子機器組立て区分機械加工、仕上げ、プラスチック成形、プリント配線板製造、電子機器組立
て、電気機器組立て、機械検査、機械保全、工業包装
金属表面処理区分めっき、アルミニウム陽極酸化処理

試験の水準は、上級技能者向け試験である「技能検定1級」の合格水準と同等の基準です。

試験は実技問題20問がペーパー試験で出題され、60分以内に回答しなければなりません。なお、正答率は60%以上で合格となり、受験回数にも制限はありません。

ビジネス・キャリア検定3級の概要

製造業分野で特定技能2号を取得するために、製造分野特定技能2号評価試験の取得を目指すのであれば、ビジネス・キャリア検定3級にも合格しなければなりません。3級は「実務経験3年程度(係長・リーダー相当職を目指す想定)」の難易度であり、生産管理プランニング・生産管理オペレーションのいずれかに合格する必要があります。

試験は4肢択一・40問、試験時間110分で行われ、出題数の概ね60%以上の正答で合格となります。試験範囲が幅広いため、標準テキストと過去問題解説集を使った自学自習を基本としつつ、日本人従業員が勉強をサポートする体制を整えるのがよいでしょう。

別ルートである「技能検定1級」とは

特定技能2号取得にあたっては、製造分野特定技能2号評価試験に合格するほか、各技能の技能検定1級を取得する選択肢も選べます。

その場合は、ビジネス・キャリア検定3級に合格する必要がありません。

日本語能力の要件について

製造業分野では、受験生が一定の日本語能力を有している・将来的にリーダーとして働ける人材であるという想定で試験が設けられています。

よって、特定技能2号を取得するにあたり、製造業分野では日本語試験の受験は不要となっています。

製造業の特定技能2号取得における疑問点

特定技能2号取得に関する試験の概要について確認できても、現場に照らし合わせて考えると、色々な疑問が湧いてくる企業担当者の方は多いのではないでしょうか。

そこで、特定技能2号取得について、多くの人材・担当者が疑問を抱くであろう点と、それに対する回答をまとめました。

質問①:特定技能1号から2号へ移行する際の転職について

特定技能1号は、機械金属加工・電気電子機器組立て・金属表面処理の3区分内の技能であれば、同じ区分に限り試験不要で転職が可能です。また、特定技能1号における業務区分・技能にかかわらず、特定技能2号評価試験の合格をもって、資格取得した技能による就労が認められます。

例えば、特定技能1号で「電気電子機器組立て」区分の機械保全に携わっていた人材が、特定技能2号試験で「機械金属加工」の工場板金に合格すれば、その技能で就労できます。ただし、受入れ事業者は実務に関連する研修・OJTに取り組み、労働災害リスクの回避に努めなければなりません。

なお、新しく転職してきた特定技能外国人の研修実績につき、協議会等に報告する必要はありません。

質問②:実務経験について

特定技能2号は、試験合格だけでは在留資格を取得できず、実務経験も必要となります。

具体的には「日本国内に拠点を持つ企業の製造業の現場」において、3年以上の実務経験を積んでいる人材でなければ、受験資格を満たすことができません。

この点の解釈について、企業側が疑問に思う点を以下にまとめました。

質問回答
外資系企業や海外の日本法人の勤務実績はどう判断するか
<外資系企業の場合>
人材が日本国内の事業所で勤務しており、その上で他の2号要件を満たしていれば可
 
<海外の日本法人>
人材が現地で勤務しており、その上で他の2号要件を満たしていれば可
「製造業」とは、どこまでが含まれるのか
日本標準産業分類に掲げる産業のうち、「大分類E-製造業」に掲げるものを行っている事業所で、製造品の加工等に従事した経験が対象
ただし、以下のものは除く
●中分類09-食料品製造業
●中分類10-飲料・たばこ・飼料製造業
実務経験をどのようにカウントすればよいのか
<OKと判断されるケース>
●勤務した事務所は違うが、同じ技能で通算3年以上
●技能は異なるが、通算で3年以上製造業での実務経験がある
●休職・帰国期間をはさんでいるが、通算の実務経験が3年以上
 
<NGケース>
●「大分類E-製造業」に当てはまらない“事業所”での実務経験
●同じ企業に在籍していている期間が通算3年
※(実務経験は3年未満)

製造分野特定技能2号評価試験の申込みについて

製造分野特定技能2号評価試験の受験にあたっては、一定の受験資格を必要とするため、申込みの際は所定の手順を踏んで手続きを進める必要があります。

以下、申込みの大まかな流れや必要書類などについて解説します。

受験申込みから合格証明書が発行されるまで

試験を受験するにあたり、申込みは「特定技能外国人材制度(素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野)ポータルサイト」から行います。受験者本人以外の受付もできますが、団体での受付は行っておらず、電話・郵送・メールでの受付は行っていない点に注意しましょう。

試験日の1週間前になると、マイページで受験票のダウンロードが可能です。受験後3ヶ月以内に、マイページにて試験結果が通知され、合格した受験者は専用の申請ページから合格証明書の発行申請ができます。

受験時は「実務経験証明書」の提出が必要

製造分野特定技能2号評価試験を受験する際は、受験者の実務経験を証明するため「実務経験証明書」を提出する必要があります。

受験者が必要事項を記入する際は、日本人従業員が記載漏れなどを確認できるよう、サポート体制を整えることが重要です。

以下、記載時に気を付けたいポイントをまとめました。

【1 申請人】の欄について

上記の欄には、申請人(受験者)の氏名・生年月日・国籍を記載します。

記載時は、申請者のパスポートまたは在留カードの記載に合わせるようにしましょう。

【2 実務経験】の欄について

実務経験について記載する際は、以下の情報を埋める際に注意しましょう。

(2)就業期間・就業場所

【作成日】と【作成責任者(署名)】の欄について

実務経験証明書の下部には、証明書の作成日と、作成責任者の署名を要する箇所があります。

作成日に日付を記入する際は、申込時点で所属する事業者にて「合計就労期間が3年以上」という条件を満たしていることを確認してから、各種必要事項を記載した後で記入するようにしましょう。

また、作成責任者(署名)の欄は、受験者名を記載しないよう注意しましょう。こちらの欄に記載が必要なのは、申込時点で所属する事業者における、証明書の作成責任者です。

ちなみに、署名は必ず手書きで記載します。

実務経験証明書に関するその他の疑問点

以下、実務経験証明書の作成にあたり、企業担当者が悩みやすいその他の疑問点をまとめました。

疑問 回答
申請人が就業中でない場合
直近に就業していた事業者、または3年以上就業していた事業者に記載を依頼する
企業が退職者から実務経験証明書の記載を求められた場合
出入国在留管理庁の告示(第三条第四項)により、企業には書面交付の対応が求められる
実務経験証明書の有効期限
制限は特に定められていない
※(過去の就業期間を証明する書類のため)

まとめ

特定技能2号の取得にあたっては、特定技能1号からの移行がメインルートです。人材を受入れている企業としては、将来にわたり有用な人材に働いてもらうべく、限られたチャンスをものにできるよう、受験対策をしっかりサポートすることが大切です。

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特定技能人材の受入れを真剣に検討しており、各種費用について知りたい方は、以下の記事もおすすめです。

参考記事:特定技能外国人の受け入れ費用は?負担を抑える方法と注意点も解説(2023.11更新)

ファクトリーラボ株式会社の代表

代表取締役社長

山本 陽平

1990年東京生まれ。2013年上智大学総合人間科学部卒業後、東証1部上場の資産運用会社に入社しコーポレート部門に配属。2017年、外国人採用支援及び技能実習生の推進をしているスタートアップに参画。事業部長として特定技能、技能実習、技術・人文知識・国際業務の人材紹介や派遣事業の展開及び支援を取り仕切る。人的な課題、採用や定着に大きなペインを抱えた製造業に着目し、一貫したソリューションを提供することを目的として2022年にファクトリーラボを設立し代表に就任。