外国人支援

ファクトリーラボ株式会社の代表

山本 陽平

公開日

February 24, 2023

更新日

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外国人が失踪するならどこ?技能実習生など人材をつなぎとめる方法

目次

日本で働く技能実習生など、外国人が何らかの事情を抱えて失踪してしまうトラブルは、残念ながら日本で一定数発生しています。

外国人の中には、帰国もできず働くこともままらなない状況となり、絶望して失踪するケースも見られます。

雇用する企業の側では、どうして外国人が失踪してしまうのかを把握した上で、自社では同じような問題が発生しないよう取り組むことが大切です。

この記事では、主に技能実習生のケースについて、外国人が失踪した際に潜伏先として考えられる場所や、失踪防止に向けた対策、外国人雇用における「技能実習以外の選択肢」について解説します。

技能実習生の失踪者数は増加傾向にある

法務省の統計「技能実習生の失踪者数の推移(平成25年~令和4年上半期)」によると、技能実習生の失踪者数は年々増加していることが分かっています。

平成25年は3,566人だった失踪者数は、令和3年には7,167人となっており、倍近い人数となっています。

国別の失踪者数を見てみると、平成25年は中国がトップの失踪者数を記録していましたが、平成28年にはベトナムがトップとなり、その後はベトナム人の失踪者数がもっとも多い状況です。

中国の失踪者数は減少傾向にあるものの2位で、次いでカンボジア・ミャンマー・インドネシアなどの失踪者が多く見られます。

実際、一般的な日本人は、ベトナム人が失踪してしまうイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。

もちろん、一概にベトナム人だけが失踪リスクの高い国と言えるわけではありませんが、このような傾向が見られることを頭に入れておくと、外国人採用の方向性を定めやすいでしょう。

外国人が失踪する理由

そもそも、日本に入国後、外国人はどうして失踪してしまうのでしょうか。

以下、主に技能実習生のケースに触れつつ解説します。

企業側に問題があるケース

技能実習法において、企業は技能実習生を不当な待遇で働かせることを禁じていますが、残念ながら違反に至る企業は存在しています。

例えば、賃金の未払いが常態化していたり、労働環境が劣悪だったりして、身の危険を感じて失踪する技能実習生も少なくありません。

過去には、日本のみならず世界で名前を知られている大企業も、技能実習計画の認定が取り消されています。

技能実習計画とは、技能実習生を受け入れるための計画のことで、計画と異なる業務に従事させたり、違法な時間外労働をさせたりすると認定取り消しとなります。

一度認定が取り消されてしまうと、取り消しから5年間、新たに技能実習生を受け入れることはできません。

企業にとってもプラスに働くことはない問題なので、自社で技能実習生を雇用している場合は、あらためて労働基準法に即した働き方を徹底させる必要があるでしょう。

職場に問題があるケース

企業全体というよりは、外国人材が働いている職場のモラルや教養面で問題があるケースもあります。

国籍・宗教・肌の色などで同僚が差別を行うなど、いわゆる人権侵害に該当するような問題は、その職場全体で「外国人を受け入れる」という意識が生じていないことから起こります。

特に、常識に欠ける経営者や従業員は、加減を知らずに不当な扱いをすることがあります。

不当な解雇だけでなく、ときには暴力によって、外国人材の将来を奪うことも十分考えられます。

その他、日本人従業員と比べて、寮の広さや清潔さが十分でないことも問題となります。

そういったトラブルや不満が積み重なって、同僚に危害を加えるところまで追い詰められた技能実習生も少なくありません。

経済的な問題が背景にあることも

日本人にはあまり知られていないことかもしれないが、技能実習生の中には借金をしてまで日本にやって来る人もいます。

自国の送り出し機関に対して、日本語講習の料金・量の費用などを支払うためです。

中には、100万円以上のお金を支払って、日本での暮らしに賭けている人もいます。

ベトナムの平均月収がおよそ3万円ほどであることを考えると、実に2年半分以上の月収をつぎ込んでいることになります。

それでも、日本で働けるようになれば、その分の賃金を貯めて借金を返済する選択肢も選べます。

しかし、収入が思わしくなかったり、職場で働き続けることに問題があったりすると、将来を悲観してしまうのは致し方ないところです。

その結果、借金返済・母国への仕送りを目的に、失踪して不法就労に従事するケースも増えています。

中には、SNSなどで知り合ったブローカーに騙され、さらに窮地に追い込まれる人もいます。

お国柄の違いが影響することも

外国人が労働条件等を理由に失踪するのは、母国のお国柄の問題もあります。

先に説明した「借金」の問題が頭をよぎり、そのせいで思うような働き方ができない人もいますし、日本と比べてモラルの水準に違いがあるケースも見られます。

実際、少し冷静になって考えてみると、本当に「借金をしてまで日本で働くメリット」があるのでしょうか。

日本人の感覚だと、メリットは少ないように感じられますから、その点を深く考えられない人材を雇用することは、やはり企業にとってリスクと言わざるを得ません。

ちょっとした就労条件の違いだけでも魅力を感じて、甘い言葉に乗せられてしまう外国人材は、残念ながら存在しています。

自社で外国人を雇用する場合、外国人の母国の事情を理解した上で採用を検討するのが、賢明な判断と言えるでしょう。

失踪した外国人を見つけるのは難しい?

日本人が失踪した場合に比べて、外国人の失踪は意図的なものが多いことから、なかなか探し出すのは難しいとされます。

以下、失踪した外国人を見つけるのが難しい理由について、主なものをご紹介します。

コミュニケーションの難しさ

日本人スタッフが、外国人材の生活にまで踏み込みサポートを行うことは、決してかんたんなことではありません。

日本語自体の難易度も高いため、外国人自身がしっかり日本語を話せるようになりたいと思っていても、企業の側で仕組みを作っていかないと難しいでしょう。

同郷の人間であれば、何かあったら相談しやすいでしょうし、協力を要請することも難しくありません。

異国の地で孤独な時間を過ごす中、待遇面でも不満が残る状況となれば、現在の職場を離れようと考えるのは無理もないことです。

かといって、昼夜を問わず外国人材を監視することも、人権保護の観点から現実的ではありませんし、外国人側から批判の声が出ることでしょう。

適度な距離間を意識したサポートが、外国人の信頼感を醸成することにつながるものの、それを日本人スタッフの側で実践するのは大変なのです。

失踪の案内をする者がいる

外国人が職場から失踪する場合、一人で電車やバスの時間などを調べて失踪することは、あまり現実的な選択肢ではありません。

日本人と同様のレベルで日本語を理解していないのに、停留所の時刻表や路線案内をチェックするのは難しいはずですし、土地勘がなければ失踪先を決めることもできないからです。

それでは、どうやって外国人が失踪を試みるのかというと、失踪の案内(手引き)を行っている人間がいるのです。

報酬を受け取って失踪を手伝うプロもいれば、過去に失踪を成功させている同郷の仲間が手助けしているケースも見られます。

単独での失踪ではない分、失踪者の捜索は困難になります。

手がかりになる情報を消して失踪したり、失踪者とは別の名義の家やスマホなどを借りたりするなど、逃げ続けるための選択肢が増えることで、時間が経つにつれて探すのが難しくなっていきます。

捜索のスピードが遅れてしまうことも問題

外国人材が職場の同僚と昼夜問わず連絡を取り合っていたとしても、その間に場所を移動しているかもしれません。

仮に、昨夜普段通りのやり取りをしていた場合でも、次の日の朝になって出勤していないことが明らかにならないと、当人が消息を絶ったと分からないことも多いでしょう。

土日をはさんだ場合、休みの間に遠い所へ離れてしまうことも十分考えられるため、探す側が気に留めていない状況だと、初動が大幅に遅れることになります。

総じて「探し始め」が早いほど見つかりやすい傾向にあるため、普段から不審な部分・気になる部分を放置せず、こまめに外国人材と接触を試みることが大切です。

外国人が失踪した場合の潜伏先とは

自社で働いている外国人は、もし失踪してしまった場合、どこに潜伏するのでしょうか。

以下、失踪した場合の潜伏先の可能性について、いくつか具体例をご紹介します。

友達の家など

失踪早期に対応した場合、遠くへ逃げるための準備として、友人・知人・あるいは交際相手などの家に潜伏するケースが見られます。

概ね、失踪してから数週間程度の間は、近しいネットワークをたどることで、失踪者に出会える可能性があります。

しかし、失踪後に外国人を積極的に探そうとしなかった場合、やがて失踪者は失踪の準備を終え、友人等の家を離れるでしょう。

よって、外国人材のネットワークをある程度把握しておくことが、早期発見につながります。

車上生活

自動車を何らかの形で手に入れた失踪者は、道の駅などの駐車場で寝泊まり生活をしていることがあります。

盗難車などを用いておらず、捜索願も出ていない状況の場合、失踪者が長期的に失踪生活を続ける可能性があります。

別会社の寮など

失踪生活を続けながら他の場所で働くと、失踪がバレやすくなります。

それを逆手にとって、あえて寮を完備している勤務先で働き、堂々と潜伏する方法を考える失踪者もいます。

レアケースにはなりますが、別人になりすまして名札を掲げて働いていたところを発見された失踪者もいるようです。

失踪したからといって、誰もが遠くに逃げることを考えるわけではない点を理解しておくと、発見が早くなるかもしれません。

NPO法人の保護を受けている可能性も

日本のNPO法人の中には、技能実習生や留学生などの保護を行っているところもあります。

劣悪な環境に置かれていたり、仕事が得られず悩んでいたりする中でNPO法人の存在を知り、駆け込んだ人材もいる可能性があるため、近隣のNPO法人に連絡を入れてみるのも一手です。

外国人が失踪した際の、企業のリスクと対応法

ある日、職場に外国人材が現れず、そこから連絡がつかない状況となってしまっていたら、その外国人材は失踪した可能性が高いでしょう。

以下、技能実習生のケースを例に、企業側の対応やリスクについて解説します。

監理団体への連絡と捜索

技能実習生が失踪したことが把握できた段階で、まずは監理団体への連絡を行う必要があります。

監理団体とは、技能実習生を受け入れ、その活動や受入企業へのサポートを行う非営利団体のことです。

その後、受入企業と監理団体で技能実習生を探すことになりますが、同僚や近隣の技能実習生にも聞き込みを行いましょう。

最後に話をしたのはいつか、何か普段と違う雰囲気を感じなかったか等、気になる点をヒアリングしながら足取りを追っていきます。

次に、暮らしていた部屋に入って荷物を確認します。

というのも、技能実習生が自発的に失踪したとは限らず、何らかの事件に巻き込まれた可能性も否定できないからです。

荷物・貴重品・パスポートなどが見つからない場合は、失踪の可能性が高いでしょう。

いずれにせよ、事件性が疑われる場合は警察に捜索願を出し、母国の家族とも連絡をとることが必要です。

各種手続きを進める

監理団体は、外国人技能実習機構へ「技能実習実施困難時届出」を提出します。

この届出は、失踪先が判明している場合でも必要です。

技能実習実施困難時届出には、受け入れを行っている企業の情報、技能実習生の氏名、技能実習を行わせることが困難になった事由などを書いて提出します。

その後、受入企業の側は、外国人技能実習機構などの指示を受けて行動することになります。

退職に関する手続きも必要になるので、失踪前日までの給与計算・支払手続きを進めます。

同時に、雇用保険・社会保険・厚生年金の資格喪失手続きなども行います。

企業にとってのリスク

技能実習生の失踪が多いことは、当然ながら受入企業にとってもペナルティとなります。

具体的には「優秀な実習実施者」の基準を満たせなくなり、人材を受け入れる観点から不利な状況に置かれるリスクが生じます。

優秀な実習実施者になれるかどうかは、獲得したポイントで決まり、150点満点中6割以上の点数という条件があります。

そして、失踪に関するポイント算出の基準は以下の通りです。

○過去3年以内の改善命令の実績、失踪の割合
○過去3年以内に実習実施者に責めのある失踪の有無

例えば、直近3年以内に失踪がゼロの場合、失踪者の割合に応じて点数がマイナスされますが、マイナス分は低めに抑えられています。

しかし、実習実施者が直近3年以内に問題を起こして実習生の失踪につながった場合は、大幅に減点されます。

「責めによる失踪」は個別判断で、給与未払い・劣悪な環境での労働を指示するなどが該当するものと考えてよいでしょう。

もちろん、技能実習生だけでなく、いかなる在留資格で働いている外国人も不当に扱ってはなりません。

まとめ

外国人が失踪してしまった場合、初動をいかに早くするかが、発見のチャンスを増やすことにつながります。

失踪後に行き場をなくした外国人は、深刻な犯罪に加担したり、何らかの被害を受けたり可能性があるので、できる限り早期に発見できるようにしたいところです。

技能実習生を雇用するリスクを減らすのであれば、今後長期的に働ける外国人材として期待されている「特定技能人材」の採用を検討することをおすすめします。

Factory labでは、製造業を中心に、日本の事情に精通した特定技能人材をご紹介いたします。

ファクトリーラボ株式会社の代表

代表取締役社長

山本 陽平

1990年東京生まれ。2013年上智大学総合人間科学部卒業後、東証1部上場の資産運用会社に入社しコーポレート部門に配属。2017年、外国人採用支援及び技能実習生の推進をしているスタートアップに参画。事業部長として特定技能、技能実習、技術・人文知識・国際業務の人材紹介や派遣事業の展開及び支援を取り仕切る。人的な課題、採用や定着に大きなペインを抱えた製造業に着目し、一貫したソリューションを提供することを目的として2022年にファクトリーラボを設立し代表に就任。