人材不足等の理由から、外国人を採用する方針を固めたものの、面接で具体的に何を聞くべきなのかイメージが浮かばない担当者の方は多いのではないでしょうか。
しかし、採用の運びとなれば「自社で一緒に働く仲間」になるわけですから、聞くべきことは遠慮なくしっかり聞いておいた方が、ミスマッチのリスクを減らせます。
外国人のケースでのみ留意すべき点さえ押さえておけば、面接をスムーズに進めることができます。
この記事では、自社で初めて外国人を採用する経営者・採用担当者向けに、外国人と面接する際の確認事項や質問例など、面接時の注意点について解説します。
外国人と面接する前の確認事項
日本人の場合も同じですが、書類選考を進め面接の段階に進む前に、自社で働けそうな人材かどうか事前に確認しておくことが重要です。
外国人の場合、就労ビザや国籍などを詳細にチェックする必要がありますから、その点を踏まえつつ以下のポイントを押さえておきましょう。
在留資格・在留期間の確認
外国人が日本で就労する場合、在留資格によって諸々の条件が異なります。
永住者や日本人の配偶者等のように、就労活動に制限がない在留資格もありますが、多くの在留資格は定められた範囲でしか就労が認められません。
企業が外国人を雇用するにあたり、よく知られている就労OKの在留資格としては、以下のようなものがあげられます。
その他の在留資格としては、原則としては非就労資格となっていますが、一定の条件下では就労が可能な留学などがあげられるでしょう。
また、それぞれの在留資格には在留期間が定められており、外国人材が日本国内で働ける期間が限られるケースもあります。
よって、どんな人材に、どのくらいの期間働いてほしいのかを考えた上で、欲しい人材を見定めて採用を検討したいところです。
勤務時間の確認
先ほどご紹介した「留学」の在留資格に関しては、日本人大学生と同じような感覚で働いてもらうのは難しいのが現実です。
というのも、留学生は労働時間について制限が設けられているのです。
入管から「資格外活動」の許可を受けることで、留学生は働けるようになります。
しかし、労働時間は週28時間以内と定められており、大学等が定めた長期休暇中(夏休みなど)であっても、週40時間が上限となっています。
そのため、外国人材によっては、アルバイトを掛け持ちしていたり、申告せずにアルバイトをしていたりするケースもあります。
本人に悪いという自覚がなくても、労働時間の上限を超えて働いている留学生は、資格外活動許可違反を理由にビザの更新が不許可になってしまうでしょう。
オーバーワークを理由に帰国した外国人は、その後再来日することが難しくなる可能性もあります。
留学生に働いてもらう際は、面接に進む前にアルバイト状況を確認しておきましょう。
経歴の確認
日本では、在留資格ごとに国内でできる活動を詳細に定めているので、一つの在留資格で複数の活動が同時に認められるとは限りません。
これまで日本で働いたことがある外国人材に関しては、自社とのマッチングに問題がないかどうか、経歴の確認も忘れずに行いましょう。
国籍の確認(兵役)
韓国など、兵役が国民に義務付けられている国から来た外国人材に関しては、すでに兵役を終えているかどうか確認しておきます。
国によっては、大学等に在籍している間に兵役を終えるパターンも考えられますが、期限を迎えるギリギリのタイミングまで兵役を延期する外国人もいます。
万一、入社後に兵役のため長期休養をとることになった場合、企業としては大きな痛手を被ることになるでしょう。
また、男女問わず徴兵が行われる国もあることから、事前に外国人材の出身国におけるルールをチェックしておくことをおすすめします。
外国人と面接する際の注意点
外国人との面接に臨む際は、日本人とは異なる点に注意して面接を進めていきたいところです。
以下、外国人と面接する際の注意点についてご紹介します。
日本人との違いを把握する
日本人は、総じて真面目な国民性と言われています。
実際、企業と応募者との間で日程を決めれば、十中八九の確率で応募者は面接にやって来るでしょう。
しかし、外国人求職者の場合、応募企業に対して特段連絡を入れることなく、面接をすっぽかす例も少なくないことから、ある程度キャンセルの可能性を想定して面接候補者をリストアップしておいた方が賢明です。
同時に、応募者への対応を丁寧に行ったり、リマインドを行ったりして、できるだけ面接に足を運んでもらえる工夫が必要です。
面接のスピードを効率化するのであれば、集団面接という形で候補者を選別するのも一手です。
面接をキャンセルするような応募者は、自社にとって不要な人材と割り切って、選考時間を節約しましょう。
履歴書のチェック時も注意が必要で、例えば大学等の一般的な在籍日数は、日本と海外で異なる場合があります。
母国の慣習を理由に、職務経歴書に記載されていないキャリアがあることも珍しくないので、応募書類を見ながら一つひとつ口頭で確認しておくと誤解を防げるでしょう。
技人国/特定技能の違いを把握する
就労ビザの種類によって、面接で何を確認するのかが変わってきます。
というのも、技術・人文知識・国際業務と特定技能では、そもそも働ける年数自体が違うのです。
特定技能人材は、日本で働ける期間の上限が5年であることから、人間性を知る上では以下のような質問がベターでしょう。
また、特定技能人材に任せる仕事は、基本的に単純作業が中心になります。
よって、仕事上のスキルよりも、人間性・忍耐力・コミュニケーション能力を重視して採用するのが理想です。
逆に、技術・人文知識・国際業務人材は、特定技能人材と比較してハイレベルなスキルを持つ人材が多い傾向にあります。
よって、仕事に対するスタンス・モチベーションに関する以下のような質問をして、当人の意欲を確認するとよいでしょう。
技術・人文知識・国際業務は、ビザの更新回数に上限が設けられていないため、長期的な視点でキャリアパスのイメージを伝えることも、自社で長く働いてもらうことにつながります。
昇進を望むのか、あるいは昇給を望むのかなど、人材によって希望するものが異なることも考慮しつつ、自社でどのように活躍できる可能性があるのかを伝えましょう。
その他の注意点
面接の場では、可能な限り、人材を受け入れる現場の役職者(上司)が同席するようにしましょう。
外国人材に対して「自分たちのセクションで人材を受け入れる」という意思表示になるだけでなく、役職者自身が人材を見極めた上で判断することにより、ミスマッチのリスクを軽減できます。
応募者から給与・勤務条件・待遇について質問された場合は、邪険にすることなく、誠実に・納得してもらえるまで説明することが大切です。
長期休暇時に帰国を検討している人材も多いので、帰国のタイミングをすり合わせておくことも忘れずに行いましょう。
特定技能の場合、可能であれば、日本語のほか、外国人材の母国語も使いながら面接を進めたいところです。
応募者の緊張をやわらげる効果があり、自社に対する信頼度も高まるはずです。
外国人と面接する際に役立つ質問例
実際に、面接官として外国人とコミュニケーションをとる場合、あらかじめ質問内容をまとめておくとやり取りがスムーズになるでしょう。
以下、面接の際に役立つ質問例をいくつかご紹介します。
日本のイメージについて
アイスブレイクの感覚で、緊張をほぐすために振る質問としては、日本という国のイメージについてたずねるのが無難です。
日本の良い点だけでなく、悪い点にも触れられる人材は、職場環境の改善という観点からも魅力的な人材になり得ます。
抽象的な回答にとどまった場合は、最近ニュースを見て気になったことなどを聞いてみるのもよいでしょう。
来日して困ったことをたずねると、自社の職場環境の改善材料を集めるのにも役立ちます。
具体的な質問フレーズとしては、以下のようなものが考えられます。
来日の理由について
母国を離れ、遠い異国の地で仕事をしようと思い立った外国人の多くは、やはり相応の理由があって来日を決断しています。
観光目的であれば、例えば「日本のアニメや文化が好き」という理由で来日してもまったく問題ありませんが、就労となると正直ちょっと頼りない印象を受けます。
母国が貧しいので、日本で働くことで高収入を得て、家族に仕送りしたいというケースもありますが、それだけでは「自社で働くこと」の動機としては弱いと判断されます。
しかし、これが「将来的には家族と一緒に日本で暮らしたいので、外国人材を長年にわたり多数雇用している御社に興味を持った」という理由に発展すると、途端に強い意欲が感じられるようになるでしょう。
日本でなければならず、自社でなければならない理由を同時に成立させる理由を伝える人材は、意欲十分と判断できるはずです。
なお、具体的な質問フレーズとしては、以下のようなものがあげられます。
学歴や職歴等について
履歴書・職務経歴書に書かれている内容を把握するにあたり、外国人材に質問する際は、素行の面で怪しいところがないかどうかをチェックします。
現在日本に滞在している外国人に関しては、例えば在留資格外の活動に従事している可能性も想定して、アルバイト経験などを詳しく聞いておきましょう。
仕事中・プライベートを問わず、問題に直面した際にどう対応したのか確認することも、人間性を判断する上で役立ちます。
なお、具体的な質問フレーズとしては、以下のようなものが使えます。
志望動機等について
志望動機は、単純に日本で働くことを決断した理由だけでなく、数多ある企業の中から自社を選んだ動機の妥当性を判断する上でも重要です。
会社概要などは多くの人材がチェックするはずですが、そこから踏み込んで職務内容を詳しく把握しているかどうか、応募者自身のライフプランの中で自社がどのような位置にあるのかなど、できるだけ詳細な動機を確認しておきましょう。
本気で働きたい人材なら、例えば希望する勤務地や転勤の可否など、ある程度条件が固まっているはずです。
日本で働くことが第一の目標であって、働けるなら企業はどこでもいいと考えているようなら、企業とのミスマッチが起きやすいでしょう。
実際に質問する際は、以下のフレーズが応用できます。
強みについて(自己PR)
外国人材が、日本企業に対して自分の強みをPRする場合、やはり日本語能力の有無は重要なファクターになります。
応募書類等で語学力について触れている場合は、その点を具体的に確認してみるとよいでしょう。
職種ごとの専門分野に関しては、自社の方針や採用予定後の業務内容と照らし合わせて、早い段階で即戦力になってもらえそうかどうか判断します。
会計を例にとると、日商簿記2級取得者と1級取得者との間には大きな差があるので、任せられる仕事の範囲も変わってくるはずです。
自己PRの観点から外国人材に質問する際は、例えば以下のフレーズが考えられます。
キャリアについて
一概には言えませんが、外国人材は日本に出稼ぎに来ている側面もあり、長期的に自社で働くビジョンを持っていないケースも考えられます。
キャリアプランや将来のビジョンに関する質問によって、長期就労の意思を確認することが大切です。
キャリアプラン等を確認する際は、以下の質問フレーズが考えられます。
まとめ
外国人材を雇用する際は、面接の進め方が日本人とは違う点に注意しなければなりません。
また、自社で働く将来を見据えているかどうか確認する必要があります。
聞きたいことを聞き漏らさないためには、事前にどれだけヒアリングのポイントをまとめておけるかが重要です。
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