在留資格

ファクトリーラボ株式会社の代表

山本 陽平

公開日

January 12, 2023

更新日

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外国人の人材派遣|技術・人文知識・国際業務人材を派遣で雇用する際の注意点を解説

目次

企業が外国人材を採用するにあたり、一定の期間を区切って雇用できる人材派遣は、メリットが大きい選択肢の一つです。

しかし、どのようなビザでも派遣が認められるわけではありません。

また、派遣が認められるビザであっても、一定の制限が設けられていることがありますから、その点には注意が必要です。

この記事では、外国人の人材派遣について、主に技術・人文知識・国際業務人材を雇用するケースにフォーカスして解説します。

外国人の人材派遣が可能なビザの主な種類について

大前提として、外国人材の人材派遣そのものは、日本国内でNGとなっているわけではありません。

以下、人材派遣が可能なビザの種類について、主なものをいくつかご紹介します。

永住者・日本人の配偶者など

永住者や日本人の配偶者など、身分につながる在留資格に関しては、基本的にすべての仕事に従事することが可能です。

他の在留資格の場合、パチンコ店のような、いわゆる風営法が適用される事業所での就労は認められませんが、永住者等はOKという点で大きな違いがあります。

永住許可を受けた外国人は、永住者の在留資格によって日本に在留することになります。

在留活動、在留期間のいずれも制限されないという点で,他の在留資格と比べて大幅に条件が緩和されています。

技術・人文知識・国際業務

技術・人文知識・国際業務の在留資格に関しては、本邦の公私の機関との契約に基づき、所定の要件を満たした労働環境であれば、派遣契約による労働も認められます

技術・人文知識・国際業務ビザは、いわゆるホワイトカラー職のイメージがマッチしますし、派遣という雇用形態とも比較的なじみやすい傾向にあります。

実際のところ、技術・人文知識・国際業務の在留資格で働く外国人材の側も、転職をステップアップとしてとらえるケースは少なくありませんから、派遣社員として働くことは決して悪い選択肢ではありません。

企業・人材ともに、派遣という雇用形態は、プラスに働く可能性が十分あります。

特定技能

特定技能の在留資格については、業種が12業種と細かく分かれていますが、原則として派遣労働は認められないルールとなっています。

しかし、農業・漁業に関しては、派遣労働が認められる場合があります。

農業・漁業の分野は、年間を通して繁忙期と閑散期があり、収穫時期や漁法等の都合から繁忙期のピークにずれが生じることもあります。

そのような現場のニーズに対応すべく、労働者に安定的に仕事を与える意味合いで派遣が認められています。

特定技能の派遣についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、よかったら参考にしてみてください。

特定技能人材は派遣できる?原則と例外について解説

留学

留学の在留資格は、風営法が適用される事業所以外であれば、基本的にすべての業種で派遣労働が認められます。

ただし、1週につき28時間が労働時間の上限となっているので、自社の労働力として期待できる範囲は限られるものと考えてよいでしょう。

人材派遣で技術・人文知識・国際業務のビザを申請する際のポイント

人材派遣という形で、技術・人文知識・国際業務のビザ申請を行う場合、本人に関する書類だけでなく、派遣元や派遣先で用意しなければならないものがあります。

また、実際に雇用する場合、注意点も少なくないため、ポイントを押さえた申請を心がけましょう。

申請時の必要書類

技術・人文知識・国際業務人材のビザ申請は、所属機関のカテゴリーによって、必要とする提出書類が異なります。

まずは、一般的に以下の書類が必要であることを押さえておきましょう。

<本人に関する書類>
○在留資格申請書(申請人作成用)
○パスポート(原本提示)
○在留カード(原本提示)
○証明写真(4×3cm)
○転職の場合→直近年度の住民税納税証明書、住民税課税証明書
<派遣元が用意する書類>
○在留資格申請書(所属機関作成用および派遣先情報の欄)
○登記事項証明書(履歴事項全部証明書もしくは現在事項証明書)
○雇用契約書もしくは労働条件通知書
○前年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(税務署受付印があるもの)
○会社案内
○職務内容に関する詳細説明書
○派遣先企業との派遣業務契約書(申請人に関するもの)
<派遣先が用意する書類>
○登記事項証明書(履歴事項全部証明書もしくは現在事項証明書)
○申請人が勤務する事業所の写真、平面図

※参照元:行政書士が解説!外国人派遣社員の就労ビザを申請する時のポイント

なお、派遣元企業が以下の制度の認定を受けていると、就労ビザの申請においてカテゴリー1に分類されます。

カテゴリー1の場合、カテゴリー3・4に比べて、申請時に必要な書類が少なくなるメリットがあります。

○ユースエール認定制度(若年層の適正な雇用管理をしている企業)
○くるみん認定制度(女性従業員に対してのサポートがある企業)
○えるぼし認定制度(子育て支援をしている企業)
○厚生労働省の「安全衛生優良企業」認定
○厚生労働省の「職業紹介優良事業者」認定
○厚生労働省の「製造請負優良適正事業者」認定
○厚生労働省の「優良派遣事業者」認定
○経済産業省の「健康経営優良法人」認定
○経済産業省の「地域未来牽引企業」認定
○国土交通省の「空港管理規則上の第1類・第2類構内営業者
○消費者庁の「内部通報制度登録事業者」登録

※参照元:行政書士が解説!外国人派遣社員の就労ビザを申請する時のポイント

ビザ申請時の注意点

派遣での雇用については、ビザ申請時にいくつか注意すべきポイントがあります。

以下、具体的な注意点をご紹介します。

・契約期間

日本国内の法律では、外国人材と派遣契約を結ぶにあたり、契約期間について具体的な縛りがあるわけではありません。

しかし、雇用の安定性・継続性という観点から考慮した場合、できるだけ契約期間は長い方がよく、具体的には1年以上の契約期間がベターとされます。

・給与

派遣社員は、その雇用形態の都合上、給与が時給制となるケースがほとんどです。

時給制で給与を計算する場合、最低賃金以上で時給を計算しなければならないルールがあるので、給与を支払う際は毎年10月1日の最低賃金改定に注意する必要があります。

・勤務時間

職場でシフト制を採用している場合、シフト制を採用する妥当な理由があるかどうかが焦点となります。

具体的には、現場作業に従事する予定がないことを説明しなければなりませんし、それに加えて全社員のシフト表を提出する必要が生じるなど、説明の機会は多くなる傾向にあります。

・その他

自社で技能実習生が働いている場合、その実習生とはまったく異なる業務に従事することを説明しなければなりません。

その分だけ審査が厳しくなる傾向にあるので、具体的に仕事内容を説明するのはもちろん、根拠・証拠の提出も必要です。

申請する出入国在留管理局によっては、職場に電話がかかってくることもあります。

いきなり電話がかかってくると誰でも混乱するものですから、電話でのやり取りを想定して、質問に対応できる準備をしておくとよいでしょう。

電話対応のポイントとしては、印象を良くすることを意識するのではなく、とにかく「ウソ」をつかないことが重要です

万一、現時点で答えられない質問がある場合は、その理由を正直に説明してから入管からの回答を待つようにしましょう。

人材派遣という形で外国人を雇用するメリット・デメリット

人材派遣という形で外国人を雇用することには、確かにメリットは存在していますが、同時にデメリットにも注目しなければなりません。

メリット・デメリットの両方を天秤にかけ、その上でメリットが勝ることが分かってから、人材派遣での採用を検討してみましょう。

メリット

正社員を雇うのに比べて、人材派遣という雇用形態は自由度が高く、派遣先企業の都合に合わせて労働期間を調整できるのが魅力です。

外国人材を雇用する場合は、それ以外にも派遣で雇用するメリットがあるので、有効に活用したいところです。

1.ハイレベルな人材を雇用できる

日本人を雇用する場合と比較し多彩、自社で外国人労働者を雇う場合のリスクとしては、以下のようなものが考えられます。

  • 日本語能力のレベルが低い
  • 日本の文化・習慣に対する理解度が低い
  • 採用した人材が想定よりも能力を備えていない
  • やる気がない

これらの点について、派遣労働者となる外国人材は、基本的な教養・能力があることを前提に人材派遣会社の方で登録を行います。

入念なヒアリングをもとに派遣する人材を決めることも多く、企業が想定しているレベルとのギャップが生じるケースは、全体的に少なくなる傾向にあります。

また、新興国から日本にやって来た外国人材の多くは、母国の家族に仕送りを行うなど、日本人と比べて強いモチベーションを持って仕事に励んでいるため、日本人に比べてやる気があるケースも多く見られます。

よって、能力・適性が十分でない人材が自社にやって来るリスクは、総じて低いものと推察されます。

2.外国人材ならではの思考・感性が活かされる可能性がある

労働意欲の高い外国人材は、他の社員にもポジティブな影響を与えてくれる可能性があります。

日本で生活しているとなかなか思いつかないような、外国人材だからこそ生まれる発想・アイデアは、日本での仕事に活用できる点も多く、異文化の視点を取り入れてサービス改善を進めている企業も少なくありません。

日本人は、ともすればサービスの統一性を重視しがちですが、より柔軟にサービスの質を考えることで、様々な国の人に日本を楽しんでもらえる機会が増えるでしょう。

外国人材の個性が、チーム活性化につながることも十分考えられます。

3.ミスマッチのリスク軽減につながる

派遣雇用の場合、1年程度の期間を見込む形にはなるものの、総じて雇用期間は正社員に比べて短い傾向にあります。

よって、万一ミスマッチが発生した場合のリスク軽減にもつながります。

逆に、働いてくれている労働者の能力・適性が自社にマッチしているようなら、その後は正社員として働いてもらうことも検討できるでしょう。

日本でのキャリア構築のため、派遣という形態を選ぶ外国人材は多いので、優秀な人材に出会えるチャンスも多くなります。

デメリット

派遣社員として働く外国人材は、それぞれの事情から派遣という選択をしているので、その選択が必ずしも企業との思惑にマッチするとは限りません。

また、派遣元企業の都合によって、自社がダメージを受けてしまうおそれもある点に注意しましょう。

1.人材が自社にとどまりにくい

外国人材が派遣社員として働いた経験は、日本での就労経験にカウントされます。

日本企業は、就労経験のない外国人を雇用したがらない傾向にあることから、派遣形態からキャリアをスタートさせようと考える外国人材は少なくありません。

つまり、より待遇のよい職場に転職することを目的に、自社で働いている人材もいるわけです。

せっかく素晴らしい人材に出会えたとしても、いつまでも自社にとどまってくれない可能性があるため、企業が派遣社員に労働力を依存するのは、ややリスキーと言えるかもしれません。

2.派遣元企業の都合で自社にダメージが及ぶリスクがある

入管法や在留資格制度は複雑なため、派遣元企業について詳しく調べずに外国人材を雇用することで、派遣先企業がダメージを受けるリスクがあります。

例えば、外国人が不法就労状態だと知らずに自社で働かせていたとしても、不法就労助長罪に問われる可能性があります

自社で外国人材を雇用する際は、在留資格が自社で有効なものかを確認するだけでなく、ハローワークに対して外国人雇用状況の届け出を行っているかどうか、派遣終了後に退職証明書が発行されているかどうかなど、チェックすべき項目がどうしても多くなります。

外国人材を派遣で雇用する際は、専門家に相談しつつ、自社に火の粉がふりかからないよう配慮することが大切です。

3.そもそも派遣NGの業種がある

その他の注意点として、以下の業務につき雇用形態として派遣が認められていないことも、頭の片隅に入れておきましょう。

○港湾運送業務
○建設業務
○警備業務
○病院等における医療関係業務

技術・人文知識・国際業務人材の雇用という観点から考えると、上記の業種につき、外国人材を派遣という形で就労させるミスは起こりにくいものと推察されます。

しかし、複数の事業を展開している場合は、万一のことを考え周知を徹底したいところです。

まとめ

外国人材の採用リスクを最小限に抑える上で、派遣という形で外国人を雇用するのは有効です。

Factory labは、海外に製造現場や取引拠点がある企業への派遣実績が豊富です。

初めて外国人材を雇用しようと考えている企業様も、安心してサービスの利用をご検討ください。

ファクトリーラボ株式会社の代表

代表取締役社長

山本 陽平

1990年東京生まれ。2013年上智大学総合人間科学部卒業後、東証1部上場の資産運用会社に入社しコーポレート部門に配属。2017年、外国人採用支援及び技能実習生の推進をしているスタートアップに参画。事業部長として特定技能、技能実習、技術・人文知識・国際業務の人材紹介や派遣事業の展開及び支援を取り仕切る。人的な課題、採用や定着に大きなペインを抱えた製造業に着目し、一貫したソリューションを提供することを目的として2022年にファクトリーラボを設立し代表に就任。