外国人支援

ファクトリーラボ株式会社の代表

山本 陽平

公開日

December 12, 2022

更新日

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外国人雇用で役立つ助成金|支援制度や補助金との違いについても解説

目次

外国人雇用は、日本人を雇用する場合に比べて難易度が高く、労働条件に関する行き違いが生まれると、トラブルに発展しやすい傾向にあります。

企業としては、外国人特有の事情に配慮しつつ就労環境の整備を行う必要があり、万一解雇となった場合のコストも想定して採用活動を行わなければなりません。

そこで役立てたいのが、各種助成金や外国人雇用支援制度です。

この記事では、

・外国人労働者を雇用する際に申請できる助成金の種類
・外国人雇用に関する各種支援制度
・助成金と補助金の違い

上記について解説します。

外国人労働者を雇用する際に申請できる助成金の種類

雇用保険に加入している事業所であれば、基本的に厚生労働省の各種助成金が利用できます。

以下、国籍を問わず申請できる助成金について、主なものをいくつかご紹介します。

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)は、外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行い、外国人労働者の職場定着に取り組む事業主に対して、その経費の一部を助成する性質の助成金です。

主な受給要件・受給額は以下の通りです。

主な受給要件①外国人労働者を雇用している事業主であること


②認定を受けた就労環境整備計画に基づき、外国人労働者に対する就労環境整備措置を新たに導入し、外国人労働者に対して実施すること
※(1および2の措置に加え、3~5のいずれかを選択)
 
 1.雇用労務責任者の選任
 2.就業規則等の社内規程の多言語化
 3.苦情・相談体制の整備
 4.一時帰国のための休暇制度の整備
 5.社内マニュアル・標識類等の多言語化

③就労環境整備計画期間終了後の、一定期間経過後における外国人労働者の離職率が10%以下であること
など
受給額<支給額および上限額>
・生産性要件を満たしていない場合:支給対象経費の1/2(上限額57万円)
・生産性要件を満たしている場合:支給対象経費の2/3(上限額72万円)

 詳細情報はこちら:人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)

なお、生産性要件の具体的な計算は、各法人等に応じた「生産性要件算定シート」により行います。

雇用調整助成金

雇用調整助成金制度は、

・景気の変動
・産業構造の変化
・その他の経済上の理由

上記の事情により事業活動の縮小を余儀なくされた場合、雇用する労働者を対象に「休業等」または「出向」を実施する事業主に対して、

・休業手当
・賃金または出向労働者に係る賃金負担額相当の一部

上記を助成することにより、労働者の失業予防・雇用安定を図ることを目的とした制度です。

なお、受給要件や受給額は、

・通常時
・新型コロナウイルス感染症の影響にともなう特例

それぞれのケースで違いがありますから注意しましょう。

<通常時の雇用調整助成金>

主な受給要件 ①雇用保険の適用事業主であること
 
②売上高または生産量などの事業活動を示す指標について、その最近3か月間の月平均値が前年同期に比べて10%以上減少していること
 
③雇用保険被保険者数、および受け入れている派遣労働者数による雇用量を示す指標について、その最近3か月間の月平均値が前年同期に比べて、
・中小企業の場合は10%を超えてかつ4人以上
・中小企業以外の場合は5%を超えてかつ6人以上
増加していないこと
 
④実施する雇用調整が、一定の基準を満たすものであること
〔1〕休業の場合
⇒労使間の協定により、所定労働日の全一日にわたって実施されるものであること
  ※(事業所の従業員(被保険者)全員について一斉に1時間以上実施されるものであっても可)
〔2〕教育訓練の場合
⇒〔1〕と同様の基準のほか、教育訓練の内容が、職業に関する知識・技能・技術の習得や向上を目的とするものであり、当該受講日において業務に就かないものであること※(ただし、本助成金の対象となる教育訓練を除く)
〔3〕出向の場合
⇒対象期間内に開始され、3か月以上1年以内に出向元事業所に復帰するものであること
 
⑤過去に雇用調整助成金の支給を受けたことがある事業主が、新たに対象期間を設定する場合、直前の対象期間の「満了日の翌日から起算して1年を超えている」こと

など
受給額 ・休業等を実施した場合の休業手当または賃金相当額、出向を行った場合の出向元事業主の負担額に対する助成(率)は、
・大企業が1/2
・中小企業が2/3
※(対象労働者1人あたり 8,335円が上限)
・教育訓練を実施したときの加算(額)は、1日1人あたり1,200円

詳細情報はこちら:厚生労働省/雇用調整助成金

<新型コロナウイルス感染症の影響にともなう特例(2022年12月以降)>

主な受給要件(事業主) 以下の条件を満たす全ての業種の事業主が対象
 
①新型コロナウイルス感染症の影響により経営環境が悪化し、事業活動が縮小している
 
②最近1か月間の売上高または生産量などが前年同月比5%以上減少している
 ※(比較対象とする月についても、柔軟な取り扱いとする特例措置あり)
 ※(雇用調整助成金の支給申請を初めて行う判定基礎期間の初日(対象期間の初日)が令和4年10月1日~令和4年11月30日までの間にある場合は、生産指標が1か月10%減少している必要がある)
 
③労使間の協定に基づき休業などを実施し、休業手当を支払っている
受給額 <中小企業>
・原則:助成率2/3、1人1日当たりの上限は8,355円
・特に業況が厳しい事業主(判定基礎期間の初日が2022.12月~2023.1月):
助成率2/3(解雇等を行わない場合は9/10)、1人1日当たりの上限は9,000円
 
<大企業>
・原則:助成率1/2、1人1日当たりの上限は8,355円
・特に業況が厳しい事業主(判定基礎期間の初日が2022.12月~2023.1月):
助成率1/2(解雇等を行わない場合は2/3)、1人1日当たりの上限は9,000円
 
△原則に当てはまる事業主:
生産指標が、前年同期比で1か月10%以上減少している事業主
※(令和元年から4年までのいずれかの年の同期、または過去1年のうち任意月との比較でも可)
 
△特に業況が厳しい事業主:
生産指標が、直近3か月の月平均で前年、前々年または3年前同期比で30%以上減少している事業主

詳細情報はこちら:厚生労働省/雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)

なお、申請手続きは、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局またはハローワークで受け付けています。

また、郵送での申請も可能です。

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

トライアル雇用助成金は、職業経験、技能、知識等から安定的な就職が困難な求職者について、ハローワークや職業紹介事業者等の紹介により、一定期間試行雇用した場合に助成する性質の助成金です。

助成金の目的としては、以下のようなものがあげられます。

・求職者の適性や業務遂行可能性を見極めること
・求職者・求人者の相互理解を促進すること
・早期就職の実現・雇用機会の創出を図ること 

具体的な受給要件・受給額は以下の通りです。

主な受給要件 以下の要件のいずれも満たすことが必要
 
①対象労働者が、
・ハローワーク
・地方運輸局(船員となる場合)
・職業紹介事業者
上記から職業紹介を受けた日に、次のいずれにも該当しないこと
 
1.安定した職業に就いている
2.自ら事業を営んでいる、または役員に就いていて、1週間当たりの実働時間が 30 時間以上
3.学校に在籍している
※(在籍している学校を卒業する日の属する年度の1月1日を経過している者であって、卒業後の就職内定がないものは除く)
4.トライアル雇用期間中
 
②次のいずれかに該当する人
 
1.紹介日前2年以内に、2回以上離職または転職を繰り返している人
2.紹介日前において、離職している期間が1年を超えている人
3.妊娠、出産または育児を理由として離職していて、職業紹介日前に安定した職業に就いていない期間が1年を超えている人※(離職前の期間は含めない)
4.職業紹介日において、ニートやフリーター等で55歳未満の人
5.職業紹介日時点で、就職支援にあたり次のいずれかの条件に該当する人
a.生活保護受給者
b.母子家庭の母等
c.父子家庭の父
d.日雇労働者
e.季節労働者
f.中国残留邦人等永住帰国者
g.ホームレス
h.住居喪失不安定就労者
i.生活困窮者
 
③ハローワーク・紹介事業者等に提出された求人に対して、その紹介により雇い入れること
 
④原則3ヶ月のトライアル雇用をすること
 
⑤1週間の所定労働時間が、原則として通常の労働者と同程度であること
※(30時間が基本だが、日雇労働者・ホームレス・住所喪失不安定就労者の場合は20時間を下回らないこと)
など
受給額 <支給対象期間>
・支給対象者のトライアル雇用に係る雇入れの日から1か月単位で、最長3ヶ月間を対象として助成が行われる
・支給対象期間である3ヶ月分の、各月の月額の合計額がまとめて1回で支給される
 
<支給額>
支給対象者1人につき月額4万円
ただし、対象者が母子家庭の母等または父子家庭の父の場合、1人につき月額5万円
※その他、イレギュラーケースあり

なお、新型コロナウイルスの影響で休業した場合は、以下の条件を満たしている場合、特例的にトライアル雇用期間を変更できるようになりました。

・令和2年4月1日~令和4年6月30日の間にトライアル雇用期間が含まれていること
・上記期間中に新型コロナウイルスの影響で対象者を休業させたこと
・休業により、対象者の適性の見極めが難しくなったこと
・トライアル雇用期間の変更について労働者との合意があること

具体的には、期間中に新型コロナウイルスの影響で休業した場合に、休業中の勤務予定日を除いて、終了日の翌日以降に追加できる形となります。

その他の助成金

その他、外国人雇用で役立てられる助成金の種類について、大まかに概要をご紹介します。

助成金の種類詳細
人材開発支援助成金 <概要>
外国人労働者に対する職業訓練等を計画に沿って実施したり、教育訓練休暇制度を適用したりした事業主等に対しての助成金

<条件等>
全部で8コースあり、それぞれで支給額・受給要件が異なる

<助成額(特定訓練コース・OJT実施助成の場合)>
・1人1コースあたり20万円
※(中小企業以外の場合は11万円)
・生産性要件を満たす場合は、1人1コースあたり25万円
※(中小企業の場合は14万円)
キャリアアップ助成金
※(正社員化支援・処遇改善支援)
<概要>
・有期雇用労働者
・短時間労働者
・派遣労働者
上記のような「非正規雇用の労働者」につき、企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化・処遇改善の取り組みを実施した事業主に対しての助成金

<条件等(各コースにより異なる)>
・正社員化支援:
有期雇用労働者等を、正規雇用労働者に転換または直接雇用       など
・処遇改善支援:
有期雇用労働者等の、基本給の賃金規定等を改定し3%以上増額       など

<助成額(正社員化コースの一例)>
①有期→正規:
・1人あたり57万円(生産性向上が認められた場合は72万円)
・大企業は1人あたり42万7,500円(生産性向上が認められた場合は54万円)
②無期→正規:
・1人あたり28万5,000円(生産性向上が認められた場合は36万円)
・大企業は1人あたり21万3,750円(生産性向上が認められた場合は27万円)
※(①、②を合わせて、1年度1事業所当たりの支給申請上限人数は20人まで)
業務改善助成金 <概要>
生産性向上のため、機械設備・コンサルティング導入・人材育成・教育訓練などの設備投資等を行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成

<条件等>
・事業所内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以上
・事業所規模100人以下
上記2つの条件を満たす事業場

<助成上限額>
・コース区分によって細かく分けられている
※(例えば、30円コース・引き上げ労働者数1名の場合は30万円)

上記に限らず、自社で活用できそうな助成金に関しては、積極的に活用したいところです。

外国人雇用に関する各種支援制度

先にご紹介した助成金以外にも、外国人活用に役立てられる支援制度が存在します。

以下、外国人雇用に関する各種支援制度をいくつかご紹介します。

外国人管理アドバイザー制度

外国人管理アドバイザー制度とは、厚生労働省が策定した「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」に基づく、事業主への指導・援助を積極的かつ効果的に行うための制度です。

外国人管理アドバイザーは、外国人労働者の増加とともに、適切な雇用管理・適正な労働条件の確保を推進するために設置されています。

相談の申し込みはハローワークで行えますし、アドバイザーへの相談料は無料となっています。

事業主が相談可能な具体的内容としては、以下のようなものがあげられます。

・ 外国人を雇用するにあたり考慮すべき点は何か
・ 現在の外国人雇用体制に問題はないかどうか
・ 日本語の不慣れな外国人に対して、どういった職場教育をすべきか
・ 労働契約や職務配置、福利厚生、退職・解雇時の注意点は何か  など

 国際人材協力機構(JITCO)

国際人材協力機構は、内閣府所管の公益財団法人です。

1991年に財団法人「国際研修協力機構」として設立され、2012年4月に公益財団法人として移行しました。

監理団体・実習実施者・送出機関等の制度関係者に対して、技能実習制度の総合支援機関という立場で、技能実習制度全般にわたり以下のような支援サービスを行っています。

・セミナーの開催
・個別の相談対応
・教材等の開発・提供 など

特定技能外国人に関しても、技能実習同様に、制度関係者向けセミナーの開催・申請支援サービス等を行っています。

都道府県での取り組みについて

国や法人のほか、各都道府県でも、外国人材の活躍・雇用を促進する事業を行っている場合があります。

ただし、すでに応募を締め切っていたり、事業が終了していたりするケースもあるので、応募のタイミングには注意しましょう。

助成金と補助金の違いとは

助成金と似た制度として、補助金の存在があります。

おそらく、多くの事業者はそれぞれの違いについてあまり意識しないかもしれませんが、基本的に助成金と補助金は管轄や目的などが異なりますから、申請時は違いを踏まえた上で準備を進めるとよいでしょう。

管轄の違い

助成金は主に厚生労働省、補助金は主に経済産業省・地方自治体の管轄です。

助成金は「雇用・労働環境を整える」ことに重点が置かれ、補助金は「事業を通じて公益を達成する」ことに重点が置かれているという違いがあります。

目的の違い

助成金の主な目的は、雇用増や人材育成にあります。

これに対して補助金は、事業を通した公益の創出が目的です。

受給条件の厳しさ

助成金は、雇用を増やしたり有益な人材を育成したりするのが目的ですから、基本的に給付条件が満たされれば問題なく支給されるものです。

ところが、補助金の場合は他社とのコンペ形式という形になるため、助成金に比べて受給のハードルは高い傾向にあります。

補助金は、例えば申請を30社出したとして、採択予定件数が10社なら、20社は選考にもれる計算になります。

そのため、補助金専門のコンサルタントの力を借りるなどして、受給にこぎつける事業者も少なくありません。

まとめ

以上、外国人雇用に活用できる助成金について、主なものをご紹介してきました。

外国人雇用を積極的に行うにあたり、助成金の申請は重要なものです。

申請の経験がなく不安を抱えている経営者の方・企業担当者の方は、外国人材の雇用に関するノウハウが豊富なFactory labをご活用ください。

ファクトリーラボ株式会社の代表

代表取締役社長

山本 陽平

1990年東京生まれ。2013年上智大学総合人間科学部卒業後、東証1部上場の資産運用会社に入社しコーポレート部門に配属。2017年、外国人採用支援及び技能実習生の推進をしているスタートアップに参画。事業部長として特定技能、技能実習、技術・人文知識・国際業務の人材紹介や派遣事業の展開及び支援を取り仕切る。人的な課題、採用や定着に大きなペインを抱えた製造業に着目し、一貫したソリューションを提供することを目的として2022年にファクトリーラボを設立し代表に就任。