特定技能

ファクトリーラボ株式会社の代表

山本 陽平

公開日

November 4, 2022

更新日

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特定技能外国人は転職できる?企業に必要な手続きと注意点

目次
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慢性的な人材不足により、外国人の雇い入れを検討している企業は多くなっています。

特定技能外国人の転職によって、即戦力を求めているという方も多いでしょう。

この記事では、日本で働く特定技能外国人が転職する場合に、外国人・企業それぞれがどのような手続きをしなければならないかを解説します。

人材紹介や求人への応募によって、優秀な特定技能外国人と出会うことができる可能性は常にあります。

チャンスを逃さないためにも、特定技能外国人の転職についての知識を持っておきましょう。

特定技能外国人でも転職はできる

まずは特定技能外国人が転職できるのかどうか確認していきましょう。

結論として、さまざまなハードルをクリアする必要がありますが、特定技能外国人の転職は可能です

ただし、特定技能の在留資格で在留している外国人が転職を行うためには、条件を満たして手続きや届出を行わなければなりません。

さまざまな書類が必要であり、転職後の受入企業が作成する書類もあるため、連携して一連の作業を行う必要があります。

特定技能外国人が転職するための条件

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まずは、特定技能外国人の転職で満たすべき条件にはどのようなものがあるのかを解説します。

特定技能外国人が転職するための大まかな条件は以下の通りです。

  1. 新たな受け入れ企業側が満たすべき要件
  2. 転職予定の外国人本人が満たすべき要件

それぞれ詳しく解説していきましょう。

新たな受け入れ企業側が満たすべき要件

特定技能外国人を新たに雇い入れる企業側が満たすべき要件をみてみましょう。

まず、大前提として、特定技能が適用される産業分野は現在12種類あり、企業はいずれかの産業に属している必要があります。

産業分野によっては、従事可能な業務区分が細かく指定されており、自社で従事していただく予定の業務が特定技能で認められているかはよく確認しておく必要があります

その他、雇用条件についても、日本人と同等水準以上の報酬・待遇でないと受け入れができません。もちろん、福利厚生などの諸手当についても、外国人のみ差別的な扱いはできませんので、注意しましょう。

転職予定の外国人本人が満たすべき要件

続いて、特定技能で転職する外国人側にとって必要な要件を解説していきます。

特定技能外国人が元々在籍していた企業の産業分野と、別の産業分野に属する企業へ転職する場合は、該当分野の特定技能評価試験に合格している必要があります。

例えば、介護業で働いていた特定技能外国人が外食業の企業へ転職する場合、外食業の特定技能評価試験に合格し、申請時に合格証書を提出できなければ、転職できません。

なお、一部の産業においては、同一産業内においてさらに業務区分が細分化されているケースがあります。(例えば、農業分野において「耕種」と「畜産」の2区分に別れています)この場合、同じ産業分野であったとしても、同一業務区分でないと転職できないという場合もありますので、ご注意ください。

一方で、元々在籍していた企業の産業分野と同一の産業分野の別企業へ転職する場合は、特段技能評価試験を新たに受験する必要はなく、無試験で転職が可能です。

また、特定技能の在留期間は最長5年であるため、転職前の期間も通算して、どれくらいの在留期間が残っているかを確認しましょう。残りの期間が数ヶ月と短い場合は、在留資格の更新や変更ができない可能性もあるため、注意が必要です。

特定技能外国人が転職する際の手続き

ここからは、特定技能外国人が転職する際の手続きについて見ていきましょう。

特定技能による転職の手続き【外国人本人】

具体的な手続きは、外国人本人が行わなければならないものが多くあります。

特定技能外国人本人による転職手続きは以下の2つになります。

  1. 入国管理局に所属(契約)機関に関する届出を行う
  2. 在留資格変更許可申請の手続きをする

それぞれ詳しく解説していきます。

1:入国管理局に所属(契約)機関に関する届出を行う

まず、特定技能外国人が転職する場合は、出入国在留管理局へ「契約機関に関する届出」の提出が必要です。

退職・入社どちらの場合も届け出る必要があるため、合計2回の届出を行うこととなり、雇用契約の終了・締結から14日以内に提出しなければなりません

2:在留資格変更許可申請の手続きをする

産業分野・業務区分にかかわらず、転職する場合は必ず在留資格の変更申請が必要です。

必要な書類は多数あり、本人が準備するものと転職後の受け入れ企業が準備するものがあります。

特定技能外国人の転職で必要な書類は以下の通りです。

外国人本人
 ・健康診断個人票
 ・住民税の課税証明書
 ・納税証明書
 ・転職前の源泉徴収票
 ・技能試験の合格票など
転職後の受け入れ企業
 ・雇用条件書
 ・特定技能外国人の支援計画書
 ・納税証明書健康保険
 ・厚生年金保険料の領収証
 ・役員の住民票など

特定技能による転職の手続き【転職前の企業側】

特定技能外国人の転職時には、転職前の企業と転職後の受入企業の両方が対応する必要があります。

まずは外国人が転職によって退職する、転職前の企業側の手続きについて見てみましょう。

転職手続きの大まかな流れは以下の通りです。

  1. 出入国在留管理局に届出を提出する
  2. ハローワークに雇用保険被保険者資格喪失の届出を行う
  3. 日本人と同様の退職手続きを実施する

まずは、受け入れていた特定技能外国人が退職する旨を出入国在留管理庁に対して報告しましょう。必要となる書類は以下の2点になります。

・特定技能所属機関による受入れ困難に係る届出

・特定技能所属機関による特定技能雇用契約に係る届出

また、外国人特有の手続きとして、最寄りのハローワークに「外国人雇用状況の届出」を実施しましょう。詳しくは、こちらの厚生労働省のHPをご覧ください。

その他、日本人が退職する際に必要な手続きと同様の流れとなります。社会保険の脱退や源泉徴収票の発行など、一般的な手続きは全て済ませるようにしましょう。また、退職証明書なども求められた際には発行するようにしましょう。

特定技能による転職の手続き【転職後の受入企業側】

特定技能外国人の転職先である受入れ企業は、本人と連携してスムーズに手続きが進むよう書類を準備する必要があります。

転職手続きの流れは、ざっくりと以下の通りです。

  1. 雇用契約を締結する
  2. 出入国在留管理局に届出を提出する
  3. ハローワークに外国人雇用状況の届出を提出する

特定技能外国人の転職後の受入れ企業は、まず雇用契約の締結が必要となります。先に解説した通り、日本人従業員と報酬額に差がある場合は、出入国在留管理庁から指摘が入ってきますので、ご注意ください。

また、納税関係書類や役員の住民票、謄本など、在留資格変更許可申請を実施する際に必要な書類を受け入れ企業側で準備する必要があります。申請に必要な書類については、こちらの出入国在留管理庁のHPをご覧ください。

無事に在留資格の許可がおり、入社できたら「外国人雇用状況の届出」を管轄のハローワークにて実施しましょう。こちらの手続きは、退職時のみならず、入社時にも必要ですので、新たな受け入れ企業側でも実施が必須です。

最後に、四半期ごとの定期報告や、雇用条件等の変更があるたびに随時届出を入管に対して実施する必要があります。こちらの対応は、先の在留資格変更許可申請も含めて「登録支援機関」に委託することも可能ですので、もし自社で対応するためのリソースがないという企業様は、登録支援機関の活用もご検討ください。

特定技能で転職する際の注意点

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特定技能外国人の転職にはさまざまな手続きが必要です。

主な注意点は以下の通りです。

  1. 在留資格変更許可申請中は仕事ができない
  2. 特定技能の在留資格申請には時間がかかる
  3. 他地域からの特定技能外国人の引き抜きは自粛が必要
  4. 在留資格変更申請が不許可の場合もある

一つひとつの処理を適切に行うことに加えて、手続きを行う際に知っておくべき注意点を確認しておきましょう。

1:在留資格変更許可申請中は仕事ができない

転職先が内定し、元々在籍していた企業を退職しても、在留資格の変更許可申請中はアルバイトなども含めて働くことができません

退職日と入社日との間が空いてしまうと、無収入の期間が発生することとなります。

そのため、転職する際は退職日と入社日を調整し、できる限り期間が空かないようにするのが望ましいでしょう。

2:特定技能の在留資格申請には時間がかかる

在留資格変更の申請準備から実際に許可が下りるまでは、一般的に2~3か月程度かかります

そのため、日本人のように、内定からすぐに働き始めることができるわけではない点は、認識しておいた方が良いでしょう。

3:他地域からの特定技能外国人の引き抜きは自粛が必要

一部の産業分野では、特定技能外国人を引き抜くことを自粛するよう呼びかける、引き抜き自粛の要請がなされています。

労働者の引き抜きが横行すれば、業界内の雇用秩序を乱すこととなりかねません。また、大都市など特定の地域へ外国人労働者が過度に集中する可能性もあります。

こうした事態を防ぐために、過度な特定技能外国人の引き抜きは自粛するよう求められている点は理解しておきましょう。

4:在留資格変更許可申請が不許可になる場合もある

在留資格の変更は、申請をすれば必ず許可が下りるわけではなく、厳しい審査を通過しなければなりません。

不許可になると帰国しなければならない場合もあるため、事前の準備を抜かりなく行う必要があります。

必要書類の記載事項や特定技能の在留要件は非常に細かいものです。記載ミスや見落とし、理解不足などがないように、事前にしっかりと準備をして臨みましょう。

まとめ

特定技能外国人の転職は、さまざまな手続きや届出を行えば可能です。

しかし、要件が細かく在留資格の変更については不許可となることもあるため、簡単なことではありません。

その場合は、人材紹介会社や登録支援機関を利用するのも一つの方法です。

弊社は特定技能の在留資格を持つ人材を紹介しています。登録支援機関として、受入れのための手続きや届出、受入れ後の支援も行っています。

特定技能外国人の人材を受け入れたいとお考えの場合は、ぜひお問い合わせください。

ファクトリーラボ株式会社の代表

代表取締役社長

山本 陽平

1990年東京生まれ。2013年上智大学総合人間科学部卒業後、東証1部上場の資産運用会社に入社しコーポレート部門に配属。2017年、外国人採用支援及び技能実習生の推進をしているスタートアップに参画。事業部長として特定技能、技能実習、技術・人文知識・国際業務の人材紹介や派遣事業の展開及び支援を取り仕切る。人的な課題、採用や定着に大きなペインを抱えた製造業に着目し、一貫したソリューションを提供することを目的として2022年にファクトリーラボを設立し代表に就任。