特定技能人材が働ける14分野のうち、特にニーズが高まっている業種の一つが、飲食料品製造業です。日本人だけでは十分な労働力を確保できないことから、海外人材を確保する目的で、特定技能人材に注目する企業は少なくありません。
少子高齢化に伴う労働人口の減少は、飲食料品製造業に限った話ではない課題ではあるものの、欠員の補充が十分でない状況が続くと、現在働いている社員の離職にもつながりかねません。
この記事では、飲食料品製造業の特定技能人材を確保するにあたり、受入条件・従事できる仕事・雇用の流れや注意点などを解説します。
飲食料品製造業の特定技能人材に注目が集まる理由
飲食料品製造業において、特定技能人材の確保が重要と考えられているのは、企業努力だけでは労働力確保や業務効率化に限界があることが主な理由です。
以下、詳細を解説します。
機械化による業務改善の限界
工業製品を製造するため、国内外の工場を遠隔監視して稼働状況をリアルタイムに可視化する「スマートファクトリー」の概念は、現場の自動化を実現する上で重要です。
しかし、飲食料品製造の現場では、イレギュラーケースが数多く存在します。
例えば、日本では以下のような季節ごとのイベントが多く、それに伴うキャンペーンや製品製造が求められます。
通年同じラインナップを用意するとは限らなかったり、味付けを季節限定のものにしたりと、製品にクリエイティブが求められることも多い傾向にあります。
そのような中、すべてのケースに対応できる機械の導入・運用を進めるよりは、人力に頼った方がフレキシブルに対応できるでしょう。
また、すべての飲食料品製造業者は、食中毒や異物混入などのリスク防止のため、国際的に認められた手法「HACCP(ハサップ)」に沿った衛生管理が義務化されています(2021年6月1日)。現場で衛生管理が可能な人材の育成・確保が求められているため、機械を新しいものに変えるだけでは、製造現場で求められる体制を構築するのは難しいのです。
人材に母国に帰らず働いてもらいたい
世界中に深刻な分断をもたらした新型コロナウイルスは、日本でも入出国が制限される事態に発展しました。日本で働く外国人材の中には、それぞれの入国ビザが切れても日本に帰れない状況となってしまい、別の在留資格に切り替えて日本に滞在しているケースも見られます。
特に、技能実習生は就労にあたり制限が多く、特定技能の在留資格を取得することで、日本で勤務を継続したいと考える人材も少なくありません。これは企業の側も同様で、研修中の技能実習生の在留資格を特定技能に切り替えて、引き続き働いて欲しいと考えている経営者の方も多いのではないでしょうか。
特定技能人材は、技能実習生に比べると、できる業務の範囲が広くなります。また、特定技能ビザは転職も認められるため、企業には「他社での実務経験がある人材」を雇用する選択肢も生まれます。
日本独特のルールに馴染めている外国人材を探すのは、どんな企業にとっても骨の折れる話ですから、これまで働いてくれた人材を手放したくないと考えるのは当然のことでしょう。技能・コミュニケーション能力を培った人材を手放せば、新入社員を一から教育することを考えなければならず、企業側としても優秀な人材を手放したくないと考えるのは自然な流れと言えます。
事業展開上の都合
企業が置かれている状況によっては、海外展開して地元の人材を集めた方が、経営上のメリットは大きい場合があります。しかし、飲食料品製造業では、新鮮な食材等を取り扱いつつ、食中毒や異物混入リスクを減らさなければなりません。
食材の最終加工場の場合、日本で商品の販売を行うのであれば、賞味期限の観点から日本に工場を置かなければならない製品もあります。鮮度によって味が変わることから、海外展開を検討しつつも断念した企業は決して少なくありません。
農業事業者の中には、農産物の生産だけでなく加工・販売を行う「6次産業化」を見据えて、様々な業務を任せられる飲食料品製造業の特定技能人材を探しているところもあります。原料受入、納品作業、事務管理業務など、比較的日本人労働者に近い仕事が可能となるため、技能実習生に仕事を任せるよりも事業展開を有利に進めることが期待できます。
飲食料品製造業の特定技能人材を受入れる前に
実際に飲食料品製造業の特定技能人材を受入れようと考えた場合、そもそもどんな事務所が受入可能なのか、特定技能人材にどのような仕事を任せるべきなのか検討する必要があります。
以下、飲食料品製造業の特定技能人材を受入れる前に、企業が知っておきたい知識をご紹介します。
企業の受入要件について
飲食料品製造業の分野につき、企業が特定技能人材を受入れるためには、農林水産省が出す次の条件を満たしていなければなりません。
現実的には、多国籍企業など海外人材のグローバルな活用を企図していない場合が多いため、中小企業が支援体制を整えるのは厳しい傾向にあります。
よって、多くの中小企業にとっては、予算を確保して支援委託を検討するのが無難な選択肢と言えるでしょう。
▶参考記事:登録支援機関に支払う費用|特定技能外国人を雇うなら押さえておこう!
飲食料品製造業の特定技能人材が従事できる業務
農林水産省が公開している資料「飲食料品製造業分野における特定技能外国人受入れの制度について」によると、飲食料品製造業分野の対象範囲は、以下の通り定められています。
まとめると、酒類を除いた食料品・飲料を製造・加工し、卸売を行う事業所が対象となります。
リアル店舗を介さず、通信販売等で直接消費者に販売するケースも含まれます。
また、対象範囲のうち「食料品製造業」に関しては、含まれる業種が多いのも特徴です。
具体例に関しては、以下の通りとなっています。
飲食料品製造業の対象となる具体的な職場
先に紹介した製造業の種類につき、企業が人材に具体的な職場を用意する際は、どこまでが飲食料品製造業の対象となるのかを把握した上で配置を検討しなければなりません。
農林水産省の資料「飲食料品製造業分野における特定技能外国人受入れの制度について」の中では、次のようなケースが紹介されています。
外国人材側が満たさなければならない要件
飲食料品製造業の特定技能資格を取得するにあたり、外国人材に求められる要件としては、大きく以下2種類の試験に合格することがあげられます。
飲食料品製造業技能測定試験に合格する(特定技能1号)
飲食料品製造業技能測定試験とは、飲食料品製造業で働ける人材かどうか、その技能水準を測定するための試験です。
食品安全・品質管理、製造工程管理、労働安全衛生に関する知識など、求められる知識は幅広いものです。
先述したHACCPによる衛生管理についても、試験範囲に含まれています。
ただ、学習用のテキストも公開されており、外国人材が対策を講じることは十分可能です。
また、技能測定試験には実技試験もあります。
具体的には、図やイラストを見て正しい行動を判断する「判断試験」と、計算式を使って作業計画を作る「計画立案」の2種目です。
日本語能力をはかる試験で合格点を取る
特定技能人材になるためには、日本での就業が問題ないレベルの日本語能力があることを証明するため、次の2種類のうちどれか1つに合格していなければなりません。
具体的なレベル感としては、基本的な語彙・漢字を使った文章につき、日常生活において身近な話題のものを読んで理解できるレベルが求められます。
ヒアリングに関しては、日常的な場面で「ゆっくり」話される会話につき、内容がほぼ理解できるレベルが求められます。
技能実習生の場合はどうなる?
現在自社で働いている技能実習生に、特定技能人材として働いてもらうためには、2号(または3号)技能実習を良好に修了してもらう必要があります。
下記の10職種の場合は特定技能の食品製造業へ移行できます。
なお、技能実習生から特定技能へと移行した場合、技能試験・日本語試験については免除されます。
飲食料品製造業の特定技能人材を雇用する際の注意点
これから飲食料品製造業の特定技能人材を雇用しようと考えている場合、以下の注意点を把握した上で動きをかけていく必要があります。
受入れの基本的な流れを理解する
多くの企業にとっては、特定技能人材を雇用するにあたり、登録支援機関を利用するのが一般的です。
その前提で考えると、雇用までの基本的な流れは以下の通りです。
空港への出迎えや生活支援など、登録支援機関と連携しながらサポートを行うため、雇用後も自社で対応すべきことを逐一確認することが大切です。
企業の「採用力」を高める
飲食料品製造業で働きたいと考える外国人材は多いため、自社の条件が魅力的でない場合、他の企業に優秀な人材を奪われてしまう可能性があります。直接雇用、かつ日本人と同等のレベルの報酬を支払うのは当然として、それだけでは差別化が難しいでしょう。
▶参考記事:【特集】Q&A:特定技能外国人は求人票で給与以外に重視しているものとは?
差別化のための方法の一つとしては、特に難易度が高い「住居」の確保を企業側がサポートする選択肢があります。日本で衣食住が確保できると外国人材も安心できますし、家賃が安くなれば使えるお金も増えるため、生活を最大限フォローできる体制を整えておきたいところです。
▶参考記事:1号特定技能外国人の住居確保は企業の責任!支援の種類や注意点を解説
まとめ
飲食料品製造業における人材不足は深刻化しているため、外国人材を雇用する選択肢について、企業は積極的に判断・行動していかなければ生き残れません。
特定技能人材を採用したいものの、まったくノウハウがなくお悩みの企業担当者様には、Factory labがスムーズな外国人材の採用をお約束します。