日本に中長期滞在する外国人は、パスポートの他に有効な査証(ビザ)が必要になりますから、多くの外国人は日本大使館や領事館などで申請を行います。
その際、在留資格認定証明書を提示した人は、現地でのビザ発行をスピーディーに進められます。
外国人を雇用する企業としては、在留資格認定証明書の取り扱い・スムーズな発行のための知識を知っておくと、採用前・採用後に問題が発生するのを防げます。
この記事では、外国人材の雇用における重要書類の一つ「在留資格認定証明書」について、概要や有効期限・不交付になった場合のリスクなどを解説します。
在留資格認定証明書とはどんな書類?
在留資格認定証明書とは、あえて一言でまとめると、日本大使館・領事館に対して見せる「推薦状」のようなものであり、ビザ発給を有利にしてくれる書類の一つです。
在留資格認定証明書が発行された外国人は、法務大臣が事前に入国できる基準に適していることを証明した形になるため、日本への上陸許可を受けやすくなります。
在留資格認定証明書の対象者
在留資格認定証明書を使用するのは、日本に中長期滞在する外国人です。
観光目的で滞在する場合・単に親族を訪問する場合などは、短期滞在ビザ扱いとなり、在留資格認定証明書の交付対象外となります。
申請提出者は、日本への入国を希望する外国人本人の他、外国人を受入れようとする機関の職員や、法務省令で定める代理人、地方出入国在留管理局長に届け出た弁護士・行政書士などが該当します。
申請にあたっては、日本での活動内容(在留資格)に応じた申請書・資料を用意しなければなりません。
交付申請は、外国人本人が来日して申請するのが原則とはいえ、日本から距離があると自力での申請は難しいものですよね。
そのため、一般的には企業側が国内で代理申請するケースが多いのです。
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在留資格認定証明書を発行する理由
一般的に、外国人が日本に入国するケースを想像する場合、空港などで行う入国審査をイメージするかもしれません。
しかし、こういったケースはあくまでも観光など短期滞在がほとんどで、3ヶ月以上の長期滞在を目的としている人は、その分審査にも時間がかかってしまいます。
そのため、先に日本側で入国を許可するかどうか審査を行い、問題がなければ入国時に正式な在留資格を与えるという意味合いで、在留資格認定証明書が発行されています。
このように聞くと、結局書面が外国人のもとに届くまで時間がかかるものと思われがちですが、令和5年3月17日からは、在留資格認定証明書を電子メールで受領できるようになっています。
ちなみに、在留資格認定証明書交付申請の標準処理期間は、1ヶ月~3ヶ月が目安です。
国外の外国人を雇用する際は、交付までに時間がかかることを想定して、余裕を持ったスケジュールを立てるのがよいでしょう。
在留資格認定証明書の使い方
受入機関(外国人材を採用予定の企業)を管轄する地方出入国在留管理局に対して、在留資格認定証明書交付申請を行い、問題なく外国人が受領したら、外国人本人が居住する国の日本大使館・領事館に在留資格認定証明書を提示します。
法務大臣が審査を終えていることを証明する書類のため、ビザ発給の審査はスピーディーに進み、その後の日本への上陸審査も比較的かんたんに進むはずです。
ただし、外国人の活動予定内容には問題がなかったとしても、外国人が他の上陸条件に適合しない場合は、在留資格認定証明書は交付されない点に注意が必要です。
企業側としては、思わぬ理由から外国人材の採用を見送ることもあり得るため、申請前に人材の身辺情報について調査するのが望ましいでしょう。
なお、日本人の配偶者等のような、身分系在留資格の申請に関しては、在日親族による申請となります。
在留資格認定証明書の有効期限
各種証明書は、有効期限が設けられているものが多く、在留資格認定証明書も例外ではありません。
基本的な在留資格認定証明書の有効期限は3ヶ月となっており、外国人は、証明書が発行されてから3ヶ月以内に来日(入国)する必要があります。
過去には、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響から、日本への入国時期が遅れている人々に配慮して、有効期間を延長する措置がとられていました。
この措置では、作成日によって6ヶ月以上の延長が認められていましたが、2023年7月現在では原則の3ヶ月に戻っています。
交付後に内定取消・辞退になった場合
仮に、在留資格認定証明書が交付された後、何らかの事情で内定取消・辞退といった状況に至った場合、外国人材の入国は認められません。
この場合は、在留資格認定証明書を管轄の地方出入国在留管理局に返納しなければならず、返納時は返納の理由が記載された理由書と併せて提出する必要があります。
在留資格認定証明書の有効期限が経過してしまった場合
紛失などを理由に、在留資格認定証明書の有効期限が経過してしまった場合、再発行の手続きは認められません。
つまり、スタートの段階から手続きはやり直しとなりますから、有効期限には十分注意しましょう。
このルールにおける注意点は、海外の外国人本人に書面で送付するケースです。
日本で在留資格認定証明書が交付された後、外国人本人に届くまでの流れの中で紛失するようなことがあると、時間の大幅なロスになってしまうのです。
企業担当者が送付を忘れたまま有効期限が切れたり、その他の書類と混同して紛失してしまったりするおそれもありますから、外国人材を採用する企業では書類管理を徹底したいところです。
郵便物がきちんと外国人本人のところまで届いているかどうか、追跡できるサービスを利用するのも一手です。
在留資格認定証明書が不交付になった場合
外国人に対する入管側の審査は慎重に行われるため、外国人側の事情等によっては、適正な手続きをしているのに不交付となってしまうこともあります。
申請内容が虚偽のものだったり、当該外国人の上陸が拒否されていたりする場合、基本的に申請は不許可になるものと考えてよいでしょう。
一度不交付になったら手立てはない?
一度不交付と判断された場合、在留資格認定証明書の再申請はできないのでしょうか。
結論から言うと、解決できる原因の場合は、再申請することも可能です。
不交付の場合、その理由は「在留資格認定証明書不交付通知書」に簡潔に記載されています。
しかし、書かれている内容から具体的な問題を把握するのは難しいため、出入国在留管理庁まで理由を聞きに行くのが確実な方法です。
ただし、不交付理由を聞ける回数は原則として1回だけなので、チャンスが限られてしまいます。
事案が事案なだけに、話の中身が非常に専門的になることが予想され、何の対策もしなければ重要なポイントを聞き逃す可能性もあります。
再申請にあたっては、専門家に同席をお願いするなどして、理由をしっかり理解することが大切です。
不交付になる主な理由
在留資格認定証明書が不交付になってしまう理由は、在留資格によっても変わってきますが、就労面では以下のような理由が多く見られます。
以下、外国人側・企業側それぞれの理由についてご紹介します。
外国人側に理由がある場合
外国人側に理由があって、在留資格認定証明書が不交付になる主なケースとしては、その在留資格で必要な学歴・職歴の要件を満たしていないことがあげられます。
例えば、特定技能と技術・人文知識・国際業務では、卒業している大学等の学部や、母国で経験している実務経験がまったく異なります。
よって、特定技能の在留資格を申請しているのに、実際には別の在留資格でなければ認められない仕事も担当することが想定される場合、入管側でNGが出る可能性は十分あります。
申請書を提出する際は、審査時に誤解されないよう、記載内容に気を配りましょう。
また、在留資格認定証明書の交付申請には、申請書以外にも数多くの書類が必要です。
こちらも、在留資格や企業規模などの諸条件によって提出書類が変わってくるため、不備があれば不交付となってしまうでしょう。
在留状況が良くなかったり、何らかの事情で日本への上陸が禁止されていたりすると、当然ながら不交付は避けられません。
その他、考えられるケースとしては、家族滞在時の扶養者の扶養能力などが不安視されると、NGになる可能性が生じてきます。
企業側に理由がある場合
企業側に原因があって、在留資格認定証明書が不交付になるケースとしては、雇用条件に問題があったり、実際の業務量が少なすぎたりする状況が考えられます。
例えば、アルバイト雇用が認められる在留資格としては、留学や特定活動などが該当しますが、特定技能は正社員での勤務が条件となります。
また、債務超過に陥っているなど、雇用する企業側の財務状況が良くない場合も、不交付の一因となり得るでしょう。
過去に技能実習生を雇用していた際、失踪者を出すなどのトラブルを起こしているなど、信用の面で不安を感じる企業の審査もシビアになりがちです。
企業内転勤の場合は、海外での勤務実態もチェックの対象となります。
その他、税金の支払い状況や、入管法・労働法違反が過去になかったかどうかも審査されます。
不許可理由を確認する際の注意点
先述した通り、不許可理由について確認できるチャンスは1回しかありません。
無駄な質問を省き、重要なポイントだけを聞き漏らさないようにする必要があるため、専門家と相談しながら事前準備を進めていきたいところです。
検討する順番ですが、まずは「不許可理由と対応する申請書類の箇所」を洗い出すことから始めましょう。
どの点に問題があったのか確認した上で話を聞いた方が、改善点を把握しやすいためです。
次に、改善点をどのように改善した方がよいのか、具体的な書き方・方法を検討します。
詳細な理由は質問時に確認できますが、その前にいくつか気になる点をまとめておくと、ポイントを絞りやすいでしょう。
意外に思うかもしれませんが、再申請時に担当者からアドバイスを受けることもできます。
不交付の原因となった箇所のうち、自社および外国人材側で把握できていない問題点が聞ける可能性もあるため、当日気になった点も遠慮せず聞くことをおすすめします。
関連記事:技人国人材の就労ビザが不許可になる理由|事例や対処法・企業の注意点も解説
在留資格認定証明書の交付および入国の流れ
在留資格によって、準備する書類や記載事項こそ異なるものの、交付申請から外国人材入国までの流れはほぼ共通と考えてよいでしょう。
以下、在留資格認定証明書の交付申請から、無事入国に至るまでの流れについて、主に企業担当者が行うケースを想定してご紹介します。
在留資格認定証明書交付まで
まずは、管轄の地方出入国在留管理局へ赴き、在留資格認定証明書の交付申請を行います。
窓口での申請が多い傾向にありますが、申請人である外国人材から依頼を受けている企業は、所属機関としてオンライン申請を行うことも可能です。
※(「申請者取次者の承認要件」を満たしていることが条件となります)
また、特定技能人材を雇用する場合は、交付申請前に事前ガイダンスを済ませていなければなりません。
申請を終えて、無事在留資格認定証明書が交付されたら、書面またはメールで外国人本人に送りましょう。
ビザ発給まで
外国人本人のもとに、在留資格認定証明書が届いたら、外国人の国の日本大使館・領事館などで証明書を提示します。
その後、特段問題がなければビザ発給となり、在留資格認定証明書の交付日から3ヶ月以内に日本へ入国できるよう、諸々の準備を進めていきます。
日本入国まで
外国人は、日本の空港に到着後、日本大使館・領事館などで発給されたビザを提示する必要があります。
その際、在留資格認定証明書を提出して、パスポートに上陸許可の認印をもらい、在留カードを交付してもらいます。
注意点として、在留カードは即日交付になるとは限らず、空港によっては後日「外国人の居住地」に郵送される場合もあります。
送付先は、入国後に市区町村に届け出た住所が対象となり、企業宛に届くわけではない点に気を付けましょう。
まとめ
在留資格認定証明書の交付申請は、外国人材を自社に招き入れる上で重要な手続きのため、失敗のないよう準備を進めましょう。
諸々の手続きの中で、せっかく交付された証明書の有効期限が切れてしまうと、再度取り直しとなってしまいます。
外国人や企業側の事情によっては、申請が受理されず不交付となってしまうおそれもあり、再交付には入念な準備が必要になるはずです。
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